点のまわりだけを見る道具、近傍と近傍系と近傍基
が点 の近傍であるとは、 と のあいだに開集合を 1 枚はさめることをいいます[1]。
自身は開でなくてよい。開いているのは中に置いた のほうだけです。
開近傍と近傍
を含む開集合は、それ自身が の役をするのでいつでも の近傍です。これを開近傍と呼びます[3]。
近傍のほうが広い言葉づかいになります。開近傍を含んでさえいれば、外側の形は問いません。
流儀によっては、近傍という語を開近傍の意味だけで使うこともあります[3]。読むときは、その本がどちらの意味で使っているかを先に確かめておく必要がある。

例:端に乗ると近傍でなくなる
で をとります。この集合は の近傍です。 が を含み、 に収まるからです。
ところが の近傍ではありません。 を含む開区間はどれも負の数を含み、 からはみ出します。
同じ集合でも、どの点を見るかで近傍になったりならなかったりする。近傍は集合と点の組に対して決まる言葉です。

近傍系と 4 つの公理
の近傍全体を と書き、 の近傍系と呼びます。この族は次の 4 つを満たします[3]。
4 番目が要になります。 として の内部の開集合をとれば成り立つ条件で、「近傍であることが少しまわりへ広がる」と読めます[3]。
近傍から位相を作る
逆に、各点に 4 条件を満たす族 が与えられたとします。 を「どの についても 」となる集合と定めると、 の全体が位相になる[3]。
つまり開集合を先に置くか、近傍系を先に置くかは書き方の違いです。行き着く先は同じ位相空間になります。
位相空間をこの形で最初に公理化したのは 1914 年のハウスドルフでした[2]。近傍のほうを土台に選んだので、4 条件はハウスドルフの近傍公理と呼ばれます[3]。
族 に 3 条件。現在の教科書の書き方
各点の族 に 4 条件。ハウスドルフの原型
近傍系はフィルター
上の 2 番目と 3 番目は、 が 上のフィルターだと言っています。上へ閉じていて、有限交叉で閉じている族です。
が入らないことも 1 番目から出ます。だから は真のフィルターになる。
収束の一般論をフィルターで組み立てるとき、この見方が出発点になります。点の代わりにフィルターを動かすと、点列では届かない範囲まで扱えるようになる。
近傍基
が近傍基であるとは、どの にも となる があることをいいます[1]。
近傍系は上へ閉じているので、ふつう巨大です。小さい側だけを押さえておけば、残りは自動で決まります。
距離空間なら が可算な近傍基になります[1]。どんな近傍にも、 を大きくとればこの球が収まる。
各点が可算な近傍基を持つ空間を第一可算空間と呼びます[1]。距離空間はすべてこの条件を満たします。
近傍で書き直せるもの
閉包は近傍の言葉で書けます。 となるのは、 のどの近傍も と交わるときです[1]。
収束も同じ形。 とは、 のどの近傍についても、ある番号から先の項がすべてその中に入ることをいいます。
連続性も書けます。 が で連続とは、 のどの近傍 にも、 となる の近傍 があること[1]。
近傍系を決める
閉包と収束と連続性が書ける
位相の議論がひととおり回る
と の議論を、半径を測らない形へ翻訳したものだと見てもよい。数の代わりに集合の入れ子を使っています。
例:近傍基の大きさが変わる
離散位相では が近傍基になります。1 個で足りるので、いちばん小さい近傍基です。
密着位相では 自身しか近傍がありません。近傍基も の 1 個だけ。
余可算位相を非可算集合に入れると事情が変わります。可算な近傍基を持てないので第一可算になりません[1]。点列だけでは位相を追いきれない空間の例になります。
近傍基は近傍系の下側だけを押さえた族です。
上へ広げるぶんは自動で決まるので、小さい側の並びだけを見ればよい。
開近傍だけで考えてもよい
近傍基を選ぶとき、開集合だけからとることもできます。 を含む開集合全体は の近傍基になるからです[3]。
だから第一可算性の判定でも、開近傍だけを見て済ませられる。実際に使う場面では、開近傍からなる基をとるほうが扱いやすくなります。
いっぽう近傍系そのものを開集合だけに制限すると、上へ閉じるという性質が壊れます。フィルターとして扱いたいときは、開でない集合まで含めておく必要がある。
で、集合 が点 の近傍かどうかを判定してください。
- 近傍である
- が 2 つの区間の境目なので近傍ではない
- 集合が閉なので近傍ではない
点のまわりという言葉を、集合の入れ子だけで言い表す。近傍系を土台に選ぶと、距離のない空間でも同じ議論がそのまま通ります。












この集合は [−1,1] と同じ集合です。(−0.5, 0.5) が 0 を含み、[−1,1] に収まるので近傍になります。書き方が 2 つに分かれていても、集合として何であるかだけが効きます。閉集合が近傍になることもある。