点はどこまで見分けられるか?T0 空間と T1 空間
2 点 をとって、片方だけを含む開集合を探す。1 つでも見つかれば 、 側と 側の両方で見つかれば です[3]。
差は「片方向か双方向か」だけ。それだけで、一点集合が閉集合になるかどうかが決まります。
位相は点をどこまで見分けるか
密着位相では、開集合が と しかありません。どの 2 点も同じ開集合にしか属さないので、位相の目から見て区別がつかない。
分離公理は、この見分けの強さを段階に分けたものです[2]。いちばん弱いところに と が並びます。
の定義
が 空間であるとは、異なる 2 点 に対して、一方だけを含む開集合が存在することをいいます[2]。
を含んで を含まない開集合があるか、 を含んで を含まない開集合があるか。どちらか一方でよい。
コルモゴロフの公理とも呼ばれます。異なる点は位相の言葉で区別できる、という最小限の要請です。
の定義
が 空間であるとは、異なる 2 点 に対して、 を含み を含まない開集合と、 を含み を含まない開集合が両方存在することをいいます[3]。
なら 。逆は成り立ちません。
片方向でよい。順序の向きが残る
双方向。点どうしが対等になる
一点集合が閉になる
が であることと、すべての一点集合 が閉集合であることは同値です[1]。
をとると、 から かつ となる開集合 があります。これを全部集めると次の等式になる。
右辺は開集合なので は閉集合。逆向きも、 の補集合が の近傍になることから出ます[3]。
有限集合が閉になることまで従います。有限個の閉集合の和は閉だからです[1]。
例:シェルピンスキー空間
に を入れます。
が だけを含む開集合なので 。ところが だけを含む開集合はありません。 を含む開集合は だけです。
だから ではない。実際 は開ですが閉ではなく、一点集合が閉になっていません。
だが でない空間の、いちばん小さい例です。
例:余有限位相
無限集合 で、補集合が有限な集合と を開集合とします[1]。
一点集合の補集合は無限集合ですが、 自身が有限なので は閉。よって です。
ハウスドルフではありません。空でない開集合は補集合が有限なので、2 つとれば必ず交わる[1]。
ここで点列の収束が壊れます。 を余有限位相の で見ると、どの点にも収束してしまう[1]。

どの点 をとっても、 の近傍は有限個を除いた残りです。点列の項でその外に落ちるものは有限個しかないので、 への収束が成り立ってしまう[1]。
は一点集合が閉を保証しますが、極限の一意性までは保証しません。
極限が 1 つに決まるのはハウスドルフ空間から。 と のあいだにこの差がある。
階段の並び
ならば 、 ならば 。逆向きはどれも成り立ちません[2]。
| 公理 | 条件 | 代表例 |
|---|---|---|
| 片方だけ分離 | シェルピンスキー空間 | |
| 双方向に分離 | 余有限位相 | |
| 交わらない近傍 | 距離空間 |
ハウスドルフ空間では有限集合が閉になりますが、その証明にハウスドルフ性の全部は要りません[1]。実際、点が閉でもハウスドルフでない空間があります。余有限位相がその例です[1]。
例:離散位相と密着位相
離散位相ではすべての部分集合が開なので、一点集合も開かつ閉。 を満たし、ハウスドルフでもあります。
密着位相は 2 点以上あれば すら満たしません。開集合が と しかないので、片方だけを含む開集合が作れない。
分離の強さは、開集合の多さと直結しています。位相を細かくするほど公理が満たされやすくなる。
特殊化順序で見る
でない空間では、区別できない点の組が残ります。 と が同じ開集合にしか属さない状態です。
を「 を含む開集合はすべて を含む」と定めると、前順序が入ります。特殊化順序と呼ばれる順序です[3]。
はこの前順序が半順序になること、 は等号だけになることに対応します[3]。
一般の空間では前順序が入る
で反対称律が加わり半順序になる
で順序がつぶれて等号だけになる
有限空間ではこの対応が完全になります。有限な 空間と有限な半順序集合が 1 対 1 に対応する。有限位相空間論の出発点です。
部分空間と積へ遺伝する
と はどちらも部分空間へ遺伝します。開集合を切りとるだけなので、分離に使った開集合もそのまま切りとれる[2]。
積についても保たれます。 と が なら も 。射影で引き戻した開集合を使えばよい。
商には遺伝しません。 空間を割った商空間が とは限らず、点をつぶす同値関係しだいで分離が壊れます。
でない空間を にする
区別できない点どうしを同一視すると、 空間ができます。コルモゴロフ商と呼ばれる操作です。
密着位相の空間なら、全部の点が 1 つに潰れて 1 点空間になります。位相が持っている情報だけを残した形。
代数幾何では だが でない空間が普通に出てきます。閉でない点がそれ自身で意味を持ち、つぶさずに扱う場面がある。
無限集合に余有限位相を入れた空間について正しいのはどれですか。
- だが ではない
- だがハウスドルフではない
- ハウスドルフである
片方向か双方向か。この 1 か所の違いが、一点集合の閉じ方と点の順序の残り方に直結します。分離公理の階段は、その最初の 2 段です。












一点集合は有限なので閉集合になり、T1 を満たします。いっぽう空でない開集合はどれも補集合が有限なので、2 つとると必ず交わります。だから交わらない近傍がとれず、ハウスドルフではありません。