ティーツェの拡張定理 - 閉集合の上の関数を空間全体へ延ばす
閉集合 の上でしか決まっていない連続関数を、空間全体へ連続なまま延ばす。正規空間ならそれができます[1]。
しかも延ばした先で値の範囲を広げなくてよい。もとの関数が に収まっていれば、延長も に収まります[2]。
定理の主張
を正規空間、 を閉集合とします。連続関数 に対し、連続関数 で となるものが存在する[1]。
は、 のどの点でも 2 つの関数の値が一致することを指します。
有界でない でも延長できます。値の上限と下限が保たれるという形で述べられることもある[2]。
閉であることが効く
が閉でないと定理は崩れます。、、 をとってみる。
は の上で連続ですが、 で発散します。 での値をどう決めても連続にはなりません。

が閉集合なら、 の外は開集合。延長したい先が開いた領域になり、そこで値を作る余地が生まれます。
証明の骨組み
値域を に正規化して考えます。 が連続だとする[1]。
と をとります。どちらも の閉集合で、 が閉なので でも閉。互いに素です。
ウリゾーンの補題から、 で 、 で をとる連続関数 が作れます[3]。
このとき の上で 。値域が 倍に縮みました。
誤差が 3 分の 2 ずつ縮む
同じ操作を に当てます。 回繰り返すと誤差は になる[1]。
各段の は 以下の大きさです。だから級数 は比較判定で一様収束する。
和が にちょうど収まるので、 の値域は を出ません[2]。連続関数の一様極限は連続なので、 も連続です。
の上では となり、 が出ます。
有界でない場合
と開区間 は同相です。 をこの同相で へ移し、有界版を当てる[2]。
問題が 1 つ残ります。得られた延長 が、 の外で をとるかもしれない。そのままでは へ戻せません。
そこで をとります。これは と交わらない閉集合なので、ウリゾーンの補題で の上で 、 の上で をとる関数 が作れる[3]。
に置きかえると値が に収まり、 の上では変わりません。同相で戻せば非有界版の完成です。
を開区間へ移す
有界版の拡張定理を当てる
端の値をウリゾーン関数で押し込む
同相で へ戻す
正規性の言いかえになる
拡張ができることは、正規性と同じ強さです[2]。
空間 で、どの閉集合 とどの連続関数 に対しても延長がとれるなら、 は正規になります。
互いに素な閉集合 をとり、 の上で に 、 に を割り当てる関数を考える。 が閉で、この関数は連続。延長すればウリゾーン関数が手に入ります。
閉集合 2 つを と に分ける関数を作る
閉集合の上の任意の連続関数を延ばす。補題を無限回使う
補題は特別な形の関数を 1 つ作るだけ、拡張定理は与えられた関数をそのまま延ばす。強さの差はそこにあります。
例:区間の上の関数を延ばす
、、 をとります。 は距離空間なので正規です。
延長のいちばん簡単な形は、外側を定数で埋めること。 で 、 で と決めれば連続につながります。
延長は一意ではありません。 の外での作り方に自由度があるので、いくらでも別の延長が作れる。定理が主張するのは存在だけです。
例:延ばせない状況
正規でない空間では失敗します。拡張ができることが正規性と同値なので、正規でなければ延ばせない組が必ず存在する[2]。
正規性を落とすと、閉集合を分ける関数さえ作れません。ウリゾーンの補題が使えないと、証明の第一歩が踏み出せない。
応用のいきさき
多様体の上で 1 の分割を作るとき、局所的に定めた関数を大域へ運ぶ道具として使われます。
微分幾何ではホイットニーの拡張定理という強い版があり、微分可能性まで込めて延長します。位相のほうの拡張定理は、その原型にあたる[1]。
歴史のうえでは、ブラウワーとルベーグがユークリッド空間で示し、ティーツェが距離空間へ、ウリゾーンが一般の位相空間へ広げました[2]。
、 とし、 を と定めます。 を 全体へ連続に延ばせますか。
- 延ばせる
- が非有界なので延ばせない
- が離散なので延ばせない
閉集合の上で決まっていれば、外側は正規性が引き受けてくれる。局所的な情報を大域へ持ち上げる型の議論が、この定理から始まります。












Z は R の閉集合で、R は距離空間なので正規です。Z の上のどんな関数も連続なので、拡張定理がそのまま使えます。非有界でも定理は成り立ちます。整数点のあいだを折れ線でつなぐだけでも、実際に 1 つ延長が作れます。