局所コンパクト空間|ハール測度とリースの表現定理
はコンパクトではありません。リー群も、 進数体も、解析が実際に相手にする空間はたいていコンパクトでない。コンパクト性はきれいな性質ですが、要求が強すぎます。
それでも の各点のまわりには閉区間という塊があります。全体としては大きすぎても、局所的にはコンパクト。この程度の条件があれば測度が作れて、積分ができて、フーリエ解析まで動きます。
位相空間 が局所コンパクトであるとは、任意の点 に対して のコンパクトな近傍が存在することをいいます。
各点の足もとにコンパクトな足場がある、ということです。空間全体を一度に押さえる必要はありません。
以下ではまず定義に潜む罠を片づけ、例を大量に見てから、この条件が解析で何を可能にするかを追います。
近傍という語の注意
定義に出てくる近傍という語には気をつける必要があります。ここでいう の近傍とは、 を含む開集合を含む集合のことです。近傍そのものが開である必要はありません。
誤解を避けるには、次のように書き下すのが確実です。任意の に対して、開集合 とコンパクト集合 で となるものが存在する。
「コンパクトな開近傍が存在する」と書いてしまうと別の条件になります。 を含むコンパクトな開集合を要求することになり、はるかに強くなるのです。
実際 はその意味では局所コンパクトになりません。 は連結なので開かつ閉な部分集合は と しかなく、 は有界でないからです。
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<svg viewBox="0 0 470 190" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="局所コンパクトの定義とハウスドルフでの挟み込み">
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<text x="112" y="36" fill="#1b4fb8">どこか 1 つ</text>
<text x="112" y="105">x</text>
<text x="66" y="109" font-size="11" fill="#1b4fb8">V</text>
<text x="112" y="163" font-size="11" fill="#1b4fb8">K はコンパクト</text>
<text x="352" y="36" fill="#c93c41">どんな U の中にも</text>
<text x="352" y="105">x</text>
<text x="352" y="163" font-size="11" fill="#c93c41">V ⊆ K ⊆ U</text>
<text x="424" y="66" font-size="11" fill="#5b616b">U</text>
</g>
</svg>
</div>.lc-def { margin: 0; text-align: center; }
.lc-def svg { width: 100%; max-width: 470px; height: auto; }左が定義そのもの、右が次の節で見るハウスドルフ空間での言いかえです。要求の強さが違います。
ハウスドルフでの言いかえ
がハウスドルフのとき、定義は次の条件と同値になります。
任意の と の任意の近傍 に対して、開集合 とコンパクト集合 で となるものが取れる。
同じことを かつ がコンパクト、と書くこともできます。こちらの形で書く本のほうが多いでしょう。
2 つの形が同値であることは短く示せます。 はコンパクトかつハウスドルフ空間の部分集合なので閉集合です。したがって となり、 はコンパクト集合の閉部分集合としてコンパクトになります。
定義との違いは要求の強さです。「どこか 1 つの近傍がコンパクト」から「どんな近傍の中にもコンパクトな塊が取れる」に上がっています。
この挟み込みが、記事の後半に出てくる解析の道具をすべて支えます。押さえておく価値のある形です。
定義は 1 通りではない
ここまで採用してきたのは、実は最も弱い定義です。教科書によって別の条件を局所コンパクトの定義に選びます。
各点がコンパクト近傍を 1 つもつ。Munkres と Kelley がこの形です。最も広く使われています。
各点がコンパクト近傍からなる近傍基をもつ。Willard と nLab がこの形です。
このほかにも、閉じたコンパクト近傍を要求する形や、ハウスドルフ性を定義に組み込む形があり、全部で 5 通りほど流通しています。
ハウスドルフ空間ではこれらは全部一致します。分岐が起きるのは非ハウスドルフの世界だけです。
コンパクトなら局所コンパクトか
流儀の違いが表に出る典型が、この一文です。
本記事の定義では自明に真です。空間全体がどの点のコンパクト近傍にもなります。
強い定義では偽になります。反例は の一点コンパクト化 です。
とし、開集合を の開集合と、 のコンパクト閉集合 に対する で定めます。この空間はコンパクトです。
ところが のまわりでは、小さい近傍の中にコンパクト近傍が取れません。あとで見るように のコンパクト部分集合は内点をもたないからです。
つまり「コンパクトならば局所コンパクト」の真偽が、開いている本によって変わります。定義を明示しないまま使ってよい命題ではありません。
以下の約束
以下ではハウスドルフ性を仮定します。仮定した時点で 5 通りの定義は一致し、いま見た種類の問題は消えます。
局所コンパクトかつハウスドルフな空間を、局所コンパクトハウスドルフ空間と呼びます。この記事の後半はすべてこの空間についての話になります。
解析に登場する空間はほぼ全部ここに入ります。、多様体、リー群、 進数体、コンパクト空間、離散空間。非ハウスドルフの例は病理として扱われることがほとんどです。
完全正則だが正規とは限らない
局所コンパクトハウスドルフ空間は完全正則です。点と、それを含まない閉集合とを、連続関数で分離できます。
ところが正規とは限りません。互いに素な 2 つの閉集合を開集合で分離できない例が存在します。
これは実害のある事実です。ウリゾーンの補題は正規性の言いかえなので、そのままの形では使えません。局所コンパクト性が別の道で代役を務めることになります。
削除されたチコノフ板
正規でない具体例を挙げておきます。 から角の 1 点 だけを除いた空間です。
と はどちらもコンパクトハウスドルフなので、積もコンパクトハウスドルフになります。そこから 1 点を除けば開部分空間で、局所コンパクトハウスドルフです。
しかし正規ではありません。除いた角に向かっていく 2 つの辺が、開集合では分離できないのです。
局所コンパクトハウスドルフから正規性は出ない。この 1 例を覚えておけば十分です。
例:
各点 に対して閉球 がコンパクトな近傍になります。ハイネ・ボレルの定理により、有界閉集合はコンパクトだからです。
開球 が定義の の役、閉球が の役を果たします。半径は でなくても、いくらでも小さくてもかまいません。
自体はコンパクトではありません。局所コンパクト性がコンパクト性より真に弱いことを示す、最も基本的な例です。
例: コンパクト空間
コンパクト空間は局所コンパクトです。空間全体が、どの点についてもコンパクトな近傍になります。
、球面 、ヒルベルト立方体、コンパクト群。これらはすべて局所コンパクトです。
本記事の定義では 1 行で済む主張ですが、強い定義では成り立たないことを先に見ました。この記事の中では真です。
例: 離散空間
離散空間ではどの 1 点集合 も開かつコンパクトです。したがってコンパクトな開近傍が取れます。
濃度は関係ありません。非可算離散空間も局所コンパクトです。
一方コンパクトになるのは有限集合のときだけです。非可算離散空間は局所コンパクトでありながら -コンパクトですらありません。コンパクト部分集合が有限集合しかないので、可算個の和も可算にしかならないからです。
例: 位相多様体
多様体は各点が の開球と同相な近傍をもちます。その中でひとまわり小さい閉球を取れば、コンパクトな近傍になります。
局所ユークリッドという条件だけで局所コンパクト性が出るところが要点です。ハウスドルフ性のほうは別途課される公理で、これがないと病的な例が入ってきます。
多様体論が局所的な議論を貼り合わせていけるのは、この性質が土台にあるからです。
例: 開集合と閉集合
局所コンパクト空間の開部分集合は局所コンパクトです。閉部分集合もそうです。
の開集合として 、閉集合として球面。どちらも局所コンパクトになります。上半平面や単位開円板も同様です。
この 2 つを合わせると、もっと鋭い判定条件が出てきます。あとの節で局所閉という条件として述べます。
例: カントール集合
カントール集合はコンパクトです。 の閉部分集合で有界だからで、したがって局所コンパクトになります。
面白いのは構造の側です。空でなくコンパクト・距離化可能・完全・完全不連結という 4 条件を満たす空間は、必ずカントール集合と同相になります。ブラウワーの特徴づけです。
この定理が次の 2 つの例で効いてきます。まったく別の場所から来た空間が、位相としてはカントール集合そのものだった、ということが起こります。
例: 進整数環
は 進距離を入れた環で、有限環 の逆極限として書けます。
コンパクトです。 の閉部分空間であり、各因子は有限離散なので、チコノフの定理から全体がコンパクトになるからです。
しかもカントール集合と同相になります。コンパクト・距離化可能・完全・完全不連結をすべて満たすので、ブラウワーの特徴づけがそのまま使えるのです。 が何であっても同じ空間が出ます。
例: 進数体
はコンパクトではありませんが局所コンパクトです。
鍵は が の開かつコンパクトな部分群であることです。 進絶対値の値域が という離散集合なので、閉球 が同時に開集合にもなります。
したがって が のコンパクトな近傍です。一方 は真に増加する開被覆で、有限部分被覆をもちません。
位相としては、 はカントール集合から 1 点を除いたものと同相になります。
例: 行列群
は が多項式なので の開集合です。開集合として局所コンパクトになります。
は で、こちらは閉集合です。閉集合として局所コンパクトになります。どちらもコンパクトではありません。
はコンパクトです。 から各列が単位ベクトルになるので、フロベニウスノルムが にぴったり固定されます。有界かつ閉集合なのでハイネ・ボレルが使えます。
一般にリー群は有限次元多様体ですから、すべて局所コンパクトです。
例: 順序数空間
最小の非可算順序数より小さい順序数を全部集め、順序位相を入れた空間です。
局所コンパクトです。 に対して がコンパクトな開近傍になります。後続順序数までの閉区間はコンパクトだからです。
コンパクトではありません。開被覆 に有限部分被覆がないからです。-コンパクトでもリンデレーフでもありません。可算個の可算順序数の上限が可算順序数にとどまってしまうためです。
それでいて点列コンパクトではあります。順序数の世界では、コンパクト性のいろいろな変種がばらばらに分解します。
例: 長い直線
に を掛け、辞書式順序を入れたものが長い半直線です。 を非可算個つないだような空間になります。
局所コンパクトです。これは 1 次元多様体で、各点のまわりが の開区間と同相だからです。
それでいてパラコンパクトではありません。距離化もできません。局所コンパクトハウスドルフな多様体でありながらここまで病的でありうる、という標本です。
値の連続関数はどれも最終的に定数になってしまいます。そのため一点コンパクト化とストーン・チェックコンパクト化が一致します。
例: 局所有限 CW 複体
CW 複体が局所コンパクトであることと、局所有限であること、つまり各点が有限個の胞体しか含まない近傍をもつことは同値です。
証明の要になるのは、CW 複体のコンパクト部分集合が必ず有限部分複体に含まれる、という事実です。
有限次元であることとは無関係だという点に注意してください。すべての について を取り直和した空間は無限次元ですが局所有限で、したがって局所コンパクトです。局所有限は局所的に有限次元という意味であって、全体の次元とは別の話です。
例: アデール環
のアデール環 は、 とすべての の制限直積です。制限とは「ほとんどすべての について成分が に入る」という条件を課すことをいいます。
制限をかけないただの直積は局所コンパクトになりません。コンパクトでない因子が無限個あるからです。判定条件はあとの節で述べます。
制限をかけると局所コンパクトになります。 がコンパクトかつ開であることが、ここで二重に効いています。コンパクトだからチコノフの定理が使え、開だから局所コンパクト性が全体に持ち上がります。
この定義は局所コンパクト性を確保するために設計されたものです。おかげでハール測度が乗り、アデール上で調和解析ができます。テイトの学位論文はこの舞台の上で 関数の解析接続と関数等式を扱いました。
局所コンパクトでない例:
は局所コンパクトではありません。理由は一言で言えます。 のコンパクト部分集合は内点をもたないのです。
がコンパクトで、しかも の近傍だったとしましょう。すると となる が取れます。
はコンパクトなので の中で閉集合です。したがって の における閉包、つまり を丸ごと含みます。
ところが には無理数が入っています。 に矛盾しました。
穴だらけの空間では、どんなに小さく取った塊もコンパクトになれない。これがこの例の教えるところです。
局所コンパクトでない例: 無理数全体
も局所コンパクトではありません。理由は と鏡写しになっています。
無理数のコンパクト近傍があれば の閉集合になり、有理数を含んでしまうからです。
面白いのは、この空間が完備距離化可能でベール空間だということです。あとで局所コンパクトハウスドルフならベールになると述べますが、逆は成り立ちません。無理数全体がその証拠です。
局所コンパクトでない例: 無限次元ノルム空間
無限次元ノルム空間は局所コンパクトではありません。リースの定理です。
むしろ逆向きの言い方のほうが強力でしょう。ハウスドルフな位相線型空間が局所コンパクトであることと、有限次元であることは同値になります。完備性も局所凸性も要りません。
道具はリースの補題です。真の閉部分空間から 以上離れた単位ベクトルが必ず取れるので、有限次元部分空間を少しずつ大きくしながら単位ベクトルを選んでいけば、互いに 以上離れた無限列が作れます。
局所コンパクト性が有限次元性そのものを特徴づけている、と読める結果です。無限次元の解析でコンパクト性が貴重品になる理由がここにあります。
局所コンパクトでない例: の弱位相
に弱位相を入れると局所コンパクトになりません。ここは一見おかしなことになるので、丁寧に見ます。
弱位相における の基本近傍は という形です。これは を含み、この共通核は余次元が 以下なので、無限次元では になりません。
つまり のどんな弱近傍も直線を丸ごと含みます。当然ノルムでは非有界です。
一方、弱コンパクトな集合はノルムで有界になります。したがって弱コンパクト集合が弱近傍を含むことはありえません。
閉単位球が弱コンパクトであることと矛盾しないのか、という疑問が出るところです。矛盾しません。閉単位球は弱近傍ではないからです。弱位相では内部が空になります。ここを取り違えた記述をときどき見かけるので、注意しておきます。
局所コンパクトでない例:
を可算個直積し、直積位相を入れた空間です。局所コンパクトになりません。
直積位相の基本開集合は という形で、有限個より先の成分が 全体になっています。
これを含むコンパクト集合 があったとしましょう。第 成分への射影は連続なので はコンパクトですが、 ではこれが 全体を含みます。 はコンパクトでないので矛盾です。
無限個の成分が野放しになっている、というのが失敗の原因です。
局所コンパクトでない例: ベール空間
自然数の可算直積に直積位相を入れた空間です。 は離散なので局所コンパクトですが、コンパクトではありません。
前の例と同じ理由で局所コンパクトになりません。基本近傍は有限個の成分を固定した筒で、それより先の成分への射影は離散な 全体に落ちてしまいます。
対比が鮮やかです。 はカントール集合と同相でコンパクトでした。因子を有限集合から無限離散集合に替えただけで、コンパクトから局所コンパクトですらない空間まで一気に落ちます。
局所コンパクトでない例: ゾルゲンフライ直線
に の形の区間を基本開集合とする位相を入れたものです。下限位相とも呼ばれます。
この空間のコンパクト部分集合は高々可算になります。 をコンパクト、 として、 と たちで を覆い有限部分被覆を取ると、 と でしか交わらない区間 が得られます。これらは相異なる について互いに素なので、各区間から有理数を選べば から への単射ができます。
可算な集合が内点をもつことはありません。内点があれば を含んでしまい、非可算になるからです。
結論は と同じですが、理由が違います。 は穴だらけだからで、こちらは位相を細かくしすぎたからです。同じ台集合 に入れた位相を細かくしただけで、局所コンパクト性が失われました。
局所コンパクトでない例: 1 点だけで壊れる
を考えます。右半平面に原点を 1 つ付け足した集合です。
原点以外の点では局所コンパクトです。 が の開集合だからです。
原点で壊れます。原点のコンパクト近傍 があれば の閉集合になるので、 を満たす を極限として含んでしまいます。ところがそれらは に属していません。
たった 1 点で条件が破れるだけで、空間全体が失格になります。原点を取り除いてしまえば、残りは の開集合として何の問題もありません。
局所コンパクトでない例: 無限のバラ
可算個の円周を 1 点で束ねた CW 複体 を考えます。 胞体が 1 個、 胞体が可算個です。
束ね目 の任意の開近傍 は、すべての円周と交わります。各特性写像 が両端点を に送るので、 が端点の近くの区間を必ず含んでしまうからです。
コンパクト近傍があれば有限個の胞体にしか触れないので、矛盾します。 以外の点では局所コンパクトです。
対比すべきはハワイアン・イヤリングです。同じ「1 点で束ねた可算個の円周」でも、 の部分空間として半径を に縮めて置けば、有界閉集合になるのでコンパクトになります。点も円周も同じで、位相だけが違うのです。CW 位相のほうが真に細かく、その細かさがコンパクト性を壊しています。
2 つの壊れ方
これまでの非例を並べると、失敗の型が 2 種類しかないことが見えてきます。
、無理数全体、ゾルゲンフライ直線。コンパクト部分集合が内点をもてないので、どんなに小さい近傍を取ってもコンパクトになりません。
無限次元ノルム空間、、ベール空間、無限のバラ。近傍のなかに無限個の方向が生き残り、有限個では押さえきれません。
前者は空間が穴だらけであるか、位相が細かすぎるかで起こります。後者は次元や因子や胞体が無限個あることから起こります。
の弱位相はどちらとも読めます。近傍が直線を含んでしまうというのは後者の型ですが、閉単位球の内部が空だという言い方をすれば前者の型にもなります。
部分空間は局所閉であることと同値
局所コンパクトハウスドルフ空間の部分空間については、判定が完全に決着しています。
を局所コンパクトハウスドルフ空間、 とすると、 が局所コンパクトであることと が局所閉であることは同値です。局所閉とは、開集合と閉集合の共通部分として書けることをいいます。同値な言いかえとして、 が閉包 の中で開である、とも書けます。
開部分集合と閉部分集合が局所コンパクトになるのは、この定理の特別な場合です。どちらも局所閉だからです。
開でも閉でもない局所閉な集合が作れます。 がその例です。
閉包は で、そのなかで は開集合になっています。 も同じ理由で局所閉です。
逆に は局所閉ではありません。閉包が になり、そのなかで は開集合でないからです。 が局所コンパクトでないことが、この判定条件からも読み取れます。
直積
有限個の局所コンパクト空間の直積は局所コンパクトです。各因子でコンパクト近傍を取って掛け合わせればよいだけです。
無限個になると条件が付きます。直積が局所コンパクトであることと、すべての因子が局所コンパクトかつ有限個を除いてすべてコンパクトであることが同値になります。
必要性はこう見ます。射影は連続な開全射なので、各因子は局所コンパクトです。また基本開集合は有限個を除いて因子全体に一致するので、それを含むコンパクト集合の射影を考えると、ほとんどの因子がコンパクトでなければならないことがわかります。
が失格になるのはこの条件のためです。アデール環がわざわざ制限直積として定義されるのも、この条件を通すためでした。
商空間では保たれない
局所コンパクト空間の商は局所コンパクトとは限りません。
の整数全体 を 1 点 に潰した商空間を見てみましょう。 は局所コンパクトハウスドルフで、この商もハウスドルフになります。
の近傍の形が問題です。 が開であるとは が を全部含む開集合であることで、そのような集合は の形に取れます。半径 が に近づいてよいところが肝心です。
にコンパクト近傍 があったとしましょう。 を取ると、 は に含まれる無限集合で、しかも閉かつ離散になります。コンパクト集合が無限の閉離散部分集合をもつことはないので、矛盾です。
はコンパクト近傍を 1 つももちません。局所コンパクト性は商で壊れる、と覚えておきます。
連続像でも保たれない
局所コンパクト性は連続写像でも保たれません。しかも極端な形で保たれません。
任意の位相空間 に対し、同じ集合に離散位相を入れた は局所コンパクトです。そして恒等写像 は連続な全単射になります。
に を取れば、局所コンパクトな空間から局所コンパクトでない空間への連続全単射ができあがります。
コンパクト性が連続像で保たれるのと対照的です。局所という語を付けた途端、この種の保存則が失われます。
保つ写像
では何なら保つのか。答えは 2 つあります。
開写像の場合の議論は短いものです。コンパクト近傍の像はコンパクトで、開写像であることから像も近傍になります。位相群の商 が局所コンパクトになるのは、商写像が開写像だからです。
完全写像のほうは、ファイバーのコンパクト性が余分な広がりを断ち切ってくれる、と読めばよいでしょう。連続像で保たれなかった原因は像の側に制御がなかったことにあり、閉写像でファイバーがコンパクトという条件がそれを埋めます。
一点コンパクト化
に点 を 1 つ足して とし、開集合を「 の開集合」と「 のコンパクト閉集合 に対する 」で定めます。アレクサンドロフの一点コンパクト化です。
はどんな に対してもコンパクトになります。ここには何の条件も要りません。
条件が要るのはハウスドルフ性のほうです。 がハウスドルフであることと、 が局所コンパクトハウスドルフであることは同値になります。
局所コンパクト性は、この構成のための便利な仮定ではありません。構成がうまく働くための必要十分条件です。
<div class="onept-fig">
<svg viewBox="0 0 460 250" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="実数直線の一点コンパクト化が円周になる図">
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<text x="230" y="24">∞</text>
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</div>.onept-fig { margin: 0; text-align: center; }
.onept-fig svg { width: 100%; max-width: 460px; height: auto; }の場合の絵です。直線の各点を円周の点に対応させ、残った 1 点が になります。 は円周と同相です。同じことを 1 次元上げれば が球面になります。
開部分空間としての特徴づけ
前の節を裏返すと、次の特徴づけが得られます。
が局所コンパクトハウスドルフであることと、 がコンパクトハウスドルフ空間の開部分空間と同相であることは同値です。
は円周から 1 点を除いたもの、 は球面から 1 点を除いたもの。 はカントール集合から 1 点を除いたものでした。
局所コンパクトハウスドルフ空間とは、コンパクトなものから閉じた部分を削り取っただけの空間である。そう言い切ってしまってよい定理です。
ストーン・チェックとの違い
コンパクト化はほかにもあります。代表がストーン・チェックコンパクト化 です。
最小のコンパクト化。 が局所コンパクト非コンパクトなら、任意のコンパクト化から への連続写像がただ 1 つ定まります。
最大のコンパクト化。 から任意のコンパクトハウスドルフ空間への連続写像が を経由します。
性格も対照的です。 は点を 1 つ足すだけで幾何的に見えますが、ハウスドルフにするには局所コンパクト性が要ります。 はチコノフ空間なら常に作れる代わりに、点が超フィルターになり途方もなく大きくなります。
で比べれば、 は円周で、 は距離化すらできない巨大な空間です。
ウリゾーンの補題の局所コンパクト版
ここから、局所コンパクト性が解析で何を可能にするかを追います。出発点はウリゾーンの補題です。
局所コンパクトハウスドルフ空間は正規とは限らないので、正規性を使う通常のウリゾーンの補題は使えません。代わりに局所コンパクト性が別の道を用意します。
がコンパクト、 が開で のとき、コンパクトな閉包をもつ開集合 で となるものが取れます。挟み込みの特徴づけをコンパクト集合まで持ち上げただけのものです。
はコンパクトハウスドルフなので正規です。そこで通常のウリゾーンの補題を の中で適用し、外側へは で延長します。
結論はこうなります。 コンパクト、 開、 のとき、連続関数 で 、 の上で 、 の台がコンパクトで に含まれるものが存在する。
台がコンパクトになるところが要点です。それを供給しているのが前段の挟み込み、つまり局所コンパクト性そのものです。
と
を、台がコンパクトな連続関数全体とします。 は無限遠で消える連続関数全体、つまり任意の に対して がコンパクトになるものの全体です。
は上限ノルムについて完備ではありません。その完備化がちょうど になります。
一般のハウスドルフ空間では が しか含まないこともありえます。局所コンパクト性があってはじめて、前節のウリゾーンの補題で豊富な関数が作れるのです。
一点コンパクト化と結びつけると見通しがよくなります。 は のうち で になるもの全体と同一視でき、 のほうは に定数を足したものになります。
リースの表現定理
が手に入ったところで、測度論と位相をつなぐ定理が現れます。
を局所コンパクトハウスドルフ空間、 を 上の正線型汎関数とします。このとき、すべての について を満たすラドン測度 がただ 1 つ存在します。
コンパクト集合の上で有限、すべてのボレル集合で外部正則、開集合で内部正則なボレル測度のことです。内部正則性を要求するのが開集合の上だけである点に注意が要ります。
積分のほうを先に決めれば測度が後から決まる、というのがこの定理の内容です。汎関数から測度が出てきます。
局所コンパクトハウスドルフという仮定はここで本質的に効いています。 が十分大きいこと自体が、局所コンパクト性の帰結だったからです。
正則性を落とすと一意性が壊れる
「ボレル測度がただ 1 つ存在する」と述べてしまうと偽になります。正則性の条件が要ります。
反例は順序数空間です。 を最小の非可算順序数までの順序空間とし、汎関数 を考えます。
における点測度がこれを表現します。ところがもう 1 つあるのです。閉非有界な部分集合を含むボレル集合に を、そうでないものに を与える測度も、同じ汎関数を与えます。
2 つは別の測度です。後者では の測度が になってしまいます。そして後者は正則ではありません。ラドン測度に限ってはじめて一意性が言えます。
が第二可算なら、コンパクト集合の上で有限なボレル測度は自動的に正則になります。教科書がこの仮定を置くことが多いのは、いま見た面倒を避けるためです。
ハール測度
局所コンパクト性の最大の見返りが、群の上の不変測度です。
局所コンパクトハウスドルフ位相群 には、左移動で不変な自明でないラドン測度が存在します。しかも正のスカラー倍を除いて一意です。
すべての とボレル集合 について が成り立つ、ということです。
ではルベーグ測度、離散群では数え上げ測度、円周群では角度測度がハール測度になります。 にもあり、 の測度を と正規化するのが習慣です。
これがあるおかげで 上の 空間が作れ、畳み込みが定義でき、フーリエ解析が動きます。局所コンパクト群が表現論の標準的な舞台になっているのは、この 1 点によります。
局所コンパクトハウスドルフ
ウリゾーンの補題と
リースの表現定理とラドン測度
ハール測度と調和解析
ハール測度の帰属
「ハールが局所コンパクト群における存在と一意性を示した」と書かれているのをよく見ますが、二重に不正確です。
ハールが 1933 年に示したのは存在だけで、しかも距離化可能かつ可分、つまりほぼ第二可算な局所コンパクト群に限られていました。
一意性はフォン・ノイマンによります。コンパクト群については 1935 年、局所コンパクト群については 1936 年の別の論文です。コンパクト群で使える平均化の手法が局所コンパクトには延びないので、論文が分かれました。
可算性の仮定を外して一般の場合を扱ったのはヴェイユで 1940 年。同じ年にカルタンが、選択公理を使わずに存在と一意性を同時に出す証明を与えています。
細かい話に見えますが、どの仮定でどこまで言えるかは定理の中身そのものです。区別しておく価値があります。
無限次元では作れない
局所コンパクト性がなぜ要るのかは、失敗例を見るとはっきりします。
無限次元の可分バナッハ空間には、自明でない平行移動不変で局所有限なボレル測度が存在しません。
理由はまたリースの補題です。無限次元では、どの球の中にも半径 の互いに素な球が無限個入ります。平行移動不変ならそれらは同じ測度をもたねばならず、有限性と両立するには しかありえません。
「無限次元の空間は大きすぎるから測度がない」という言い方をよく見ます。正確には「局所コンパクトでないから」です。そして局所コンパクトでない理由は、単位球がコンパクトでないことと同じ、リースの補題に行き着きます。
モジュラー関数
左不変な測度が右移動でも不変とは限りません。そのずれを測るのがモジュラー関数です。
もまた左ハール測度になるので、一意性から を満たす正数 がただ 1 つ決まります。 は から正の実数の乗法群への連続準同型です。
となる群をユニモジュラーといいます。アーベル群、離散群、コンパクト群はすべてユニモジュラーです。コンパクト群の場合は が正の実数の乗法群のコンパクト部分群になるので しかありえない、という短い議論で済みます。
ユニモジュラーでない標準例が 群です。左ハール測度が 、右ハール測度が になります。
可解群だからユニモジュラーだ、という推論は成り立ちません。 群は可解です。閉部分群に遺伝するわけでもなく、 はユニモジュラーですが上三角部分群はそうではありません。
ポントリャーギン双対
を局所コンパクトアーベル群とし、 から円周群への連続準同型全体にコンパクト開位相を入れたものを双対群 とします。
もまた局所コンパクトアーベル群になります。そして自然な写像 は位相群としての同型です。
例が美しく並びます。 は自己双対、 と円周群が互いの双対、有限アーベル群は自己双対、 も自己双対です。 がコンパクトであることと が離散であることも同値になります。
プランシュレルの定理により、フーリエ変換は から へのユニタリ同型に延びます。フーリエ解析の骨格が、局所コンパクトアーベル群という枠組みでそのまま成立するわけです。
双対性に局所コンパクト性は必要か
「ポントリャーギン双対性が成り立つのは局所コンパクト群にかぎる」と書かれることがありますが、これは誤りです。
バナッハ空間は位相群として双対性を満たします。1952 年のスミスの結果です。局所コンパクトアーベル群の任意個の直積や可算逆極限も満たしますし、フレシェ空間も満たします。
正しい形には条件が 1 つ足りていません。マルティン・ペイナドールが 1995 年に示したところによれば、双対性を満たすハウスドルフアーベル位相群で、評価写像 が同時連続であるものは局所コンパクトになります。
局所コンパクト性がちょうど効いているのは、反射性そのものではありません。圏 LCA が双対で自分自身に移るという性質と、ハール測度とプランシュレルの機構のほうです。
ゲルファント・ナイマルク
局所コンパクトハウスドルフ空間について、いちばん深い言明はここにあります。
可換な 環はすべて、ある局所コンパクトハウスドルフ空間 上の と等長 同型になります。単位元をもつ場合、相手はコンパクトハウスドルフ空間 で、環のほうは です。
つまり局所コンパクトハウスドルフ空間と可換 環は、同じものを 2 通りに書いたものです。空間から環へは 、環から空間へは指標空間を取る操作で行き来します。
射の対応には注意が要ります。 は任意の連続写像に対して関手的ではありません。固有写像に非退化 準同型が対応する、というのが正しい形です。一点コンパクト化の言葉で言えば、任意の 準同型に対応するのは点付きコンパクト空間の点付き写像になります。
非可換な 環を「非可換な局所コンパクト空間」と呼ぶ習慣は、この定理を根拠にしています。
局所コンパクト体の分類
局所コンパクト性は、体の分類まで決めてしまいます。
離散でない局所コンパクトな可換体は、、、 の有限次拡大、有限体上の形式ローラン級数体 だけです。これで全部です。
離散でない、という条件は落とせません。どんな体にも離散位相を入れれば局所コンパクトになってしまい、主張が空になるからです。
証明の道具がまたハール測度です。 に対し、 が加法的ハール測度を何倍にするかを と書きます。この関数の連続性と乗法性から が非コンパクトであることが出ます。
そして がコンパクトで の基本近傍系をなし、最後に が離散かどうかで、連結な場合と全不連結な場合に分かれます。測度から出発して体の構造が決まる、という筋道です。
局所コンパクト性がなければ測度がなく、この議論は 1 行目から動きません。なお は絶対値そのものではありません。 となり、三角不等式を満たさないからです。
ヒルベルトの第 5 問題
局所ユークリッドな位相群はリー群になる、というのがヒルベルトの第 5 問題です。1952 年にグリーソンとモンゴメリー・ジッピンによって解決されました。
より一般の形がグリーソン・ヤマベの定理です。局所コンパクト群 には開部分群 があり、 の単位元の任意の近傍のなかにコンパクト正規部分群 が取れて、 がリー群になります。
開部分群に移るという手順は省けません。 を含むような群では、単位元の小さな近傍が非自明な正規部分群を含まないことがあるからです。
ここでも証明はハール測度に乗っています。局所コンパクト性を外すと崩れ、円周の微分同相群のような無限次元の群が反例になります。
ベールのカテゴリー定理
最後に、位相そのものに戻る帰結を挙げます。
局所コンパクトハウスドルフ空間はベール空間です。可算個の稠密開集合の共通部分が、また稠密になります。
証明は入れ子のコンパクト集合を作る形で進みます。コンパクト閉包をもつ開集合を と縮めていけば、入れ子のコンパクト集合の共通部分が空でないことから結論が出ます。
完備距離空間版のベールの定理とは独立です。どちらか一方だけを満たす空間があります。無理数全体は完備距離化可能でベール空間ですが、局所コンパクトではありませんでした。
理解の確認
次のうち、局所コンパクトな空間はどれか。
- 有理数全体 (通常の位相)
- を可算個直積した (直積位相)
- 進数体
参考文献
定義の流儀の違いは Wikipedia の Locally compact space が 5 条件を並べて整理しています。非ハウスドルフでの反例もここにあります。
流儀を最初に問題にしたのは Raghu Gompa の What is “locally compact”?(Pi Mu Epsilon Journal 9 巻 6 号、1992 年、390–392 頁)でしょう。4 つの条件に名前を付け、含意関係と反例を整理しています。
基本的な性質と証明は Munkres『Topology』の第 29 節が標準です。East Tennessee State University の講義ノートが定理 29.1 から系 29.4 までを再現しています。
部分空間が局所閉であることと同値だという定理は、Dugundji『Topology』(1966 年)の定理 XI.6.5 です。特別な名前は付いていないようで、番号で引くのが確実でしょう。
保存性質については Engelking『General Topology』(Heldermann、1989 年)が網羅的です。開写像による像は定理 3.3.15、完全写像は定理 3.7.21 と 3.7.24、 の閉離散部分集合を潰す反例は 3.3.16 にあります。
ウリゾーンの補題の局所コンパクト版から 、 までの流れは、Kansas State University の Gabriel Nagy による講義ノートがきれいにまとまっています。一点コンパクト化の最小性も同じノートにあります。
リースの表現定理と正則性の細部は Folland『Real Analysis』の第 7 章です。Stony Brook 大学の講義ノートがラドン測度の定義から系 7.18 まで追えます。
Terence Tao の 245B Notes 12 も、局所コンパクトハウスドルフ空間上の連続関数を正面から扱った回です。
ハール測度とポントリャーギン双対は Folland『A Course in Abstract Harmonic Analysis』(CRC、1995 年)が定番です。存在と一意性が定理 2.10 と 2.20、モジュラー関数が 2.24 から 2.31、双対定理が 4.31 にあります。
ハール測度の帰属の経緯は、Hirai による調査論文が原論文に当たって整理しています。誰がどの仮定で何を示したかが年代順に追えます。
局所コンパクト体の分類は Weil『Basic Number Theory』の第 1 章にあります。 から出発して分類まで進む議論が読めます。
ヒルベルトの第 5 問題については Terence Tao の Hilbert’s Fifth Problem and Related Topics(GSM 153)をどうぞ。グリーソン・ヤマベの定理が定理 1.6.1 として述べられています。










Q のコンパクト部分集合は内点をもちません。コンパクトなら R で閉集合になり、無理数を含んでしまうからです。RN の基本開集合は有限個より先の成分が R 全体なので、それを含むコンパクト集合の射影が R を覆ってしまい矛盾します。Qp は Zp が開かつコンパクトな部分群なので、x+Zp がコンパクト近傍になります。コンパクトではありませんが局所コンパクトです。