可算個で足りるかどうか - σ コンパクト空間とリンデレフ空間
開被覆を有限まで減らせるのがコンパクト。可算までで手を打つのがリンデレフです[3]。
もう 1 つ、可算個のコンパクト集合で全体を覆えるという条件があります。こちらが コンパクト。どちらも「可算個で足りる」と言っていますが、足りる場所が違います。
リンデレフ空間の定義
がリンデレフであるとは、 の任意の開被覆が可算部分被覆を持つことをいいます[3]。
コンパクトならリンデレフ。有限は可算だからです。逆は成り立ちません[3]。
この性質は 1929 年にアレクサンドロフとウリゾーンが導入しました。名前はリンデレフの定理にちなんでいます[1]。
コンパクト空間の定義
が コンパクトであるとは、コンパクト集合の列 で と書けることをいいます。
は コンパクトです。半径 の閉球で覆えます。
各閉球はハイネ・ボレルの定理からコンパクトです[2]。どの点も番号を大きくとればどこかの球に入るので、可算個で覆いきれます。
コンパクトならリンデレフ
とし、開被覆 をとります。
各 はコンパクトなので、 の有限個で覆えます。それを について集めると、可算個の和になる[3]。
可算個のコンパクト集合で覆う
各コンパクト集合を有限個で覆う
全体を可算個で覆える
逆は成り立ちません。リンデレフでも コンパクトとは限らない[1]。
ただし局所コンパクトな空間に限れば、2 つは一致します[1]。局所コンパクト性が、可算個の被覆から可算個のコンパクト集合を切り出す道具になります。
開被覆の側の条件。可算部分被覆がとれる
空間の側の条件。可算個のコンパクト集合で覆える
第二可算なら必ずリンデレフ
可算な基底を持つ空間は、リンデレフでも可分でもあります[1]。
開被覆 をとり、基底の元で細分します。使われた基底の元は可算個しかないので、それぞれに の元を 1 つずつ割り当てれば可算部分被覆ができる[3]。
は有理数を端点とする開区間を基底に持つので第二可算。だからリンデレフです。コンパクトではありません。
例:ゾルゲンフライ直線
に半開区間 を基底とする位相を入れます[1]。
この空間はリンデレフです。しかも可分。ところが第二可算ではありません[1]。

コンパクトでもありません。ゾルゲンフライ直線ではコンパクト集合が可算集合に限られ、可算個集めても を覆いきれないためです。
リンデレフだが コンパクトでない例として、いちばんよく挙がる空間になっています[1]。
距離空間では 4 つが一致する
距離化可能な空間では、次がすべて同値になります[1]。
だから距離空間の話をしているあいだは、この 4 つを区別する必要がありません。区別が要るのは距離が入らない空間に出たときです。
ゾルゲンフライ直線はこの一致が崩れる例。可分でリンデレフなのに第二可算でないので、距離化できないことが分かります[1]。
分解して見る
コンパクト性は、リンデレフ性と可算コンパクト性の 2 つにちょうど分かれます[1]。
どんな被覆も可算に減らせるのが前半、可算な被覆を有限に減らせるのが後半。両方そろって初めてコンパクトです。
は前半だけを持ちます。最初の非可算順序数 は後半だけを持ち、リンデレフではない[1]。
「可算個で足りる」という条件は、被覆を減らす側と空間を覆う側の 2 通りに現れます。
前者がリンデレフ、後者が コンパクト。同じ言葉づかいでも役割が違う。
遺伝と積のふるまい
閉部分空間はリンデレフのまま。可算個の和も、連続像もリンデレフです[1]。
いっぽう積では壊れます。リンデレフ空間 2 つの積がリンデレフとは限らない[1]。
ゾルゲンフライ直線の平方がその例で、リンデレフでないうえに正規でもありません[1]。コンパクト性がチホノフの定理で積を渡れるのとは対照的です。
ただしリンデレフ空間とコンパクト空間の積は、いつでもリンデレフになります[3]。
| 性質 | 閉部分空間 | 連続像 | 2 つの積 |
|---|---|---|---|
| コンパクト | 保つ | 保つ | 保つ |
| リンデレフ | 保つ | 保つ | 保たない |
| コンパクト | 保つ | 保つ | 保つ |
パラコンパクト性へ
正則なリンデレフ空間はパラコンパクトになります[3]。パラコンパクトなら正規なので、正則リンデレフ空間は正規です[1]。
分離公理の階段を 2 段ぶん上がる形で、被覆の条件が分離の条件へ変わっています。1 の分割が使えるようになるのもここから。
コンパクトで局所コンパクトな空間では、可算個の開集合で閉包がコンパクトになるものが列に並びます[1]。多様体論で使う枯渇列がこの形です。
例:測度論での使いどころ
局所コンパクトハウスドルフで コンパクトな空間では、ラドン測度の扱いが素直になります。
可算個のコンパクト集合で覆えるので、測度が 有限になる。単調収束定理やフビニの定理を当てる下ごしらえがここで済みます。
がこの条件を満たすので、ルベーグ測度の理論が破綻なく回る。抽象的な被覆の条件が、積分論の土台になっています。
ゾルゲンフライ直線について正しいのはどれですか。
- コンパクトである
- リンデレフだが コンパクトではない
- 第二可算である
可算という同じ言葉が、被覆を減らす側と空間を覆う側の 2 か所に現れます。どちらの話をしているかが分かれば、 とゾルゲンフライ直線の差もはっきり見えてきます。












任意の開被覆から可算部分被覆がとれるのでリンデレフです。コンパクト集合が可算集合に限られるため、可算個集めても全体を覆えず σ コンパクトではありません。可分ではありますが可算な基底を持たないので、第二可算でもない。距離化できない空間の代表例です。