縮小写像の原理(Banachの不動点定理)

縮小写像の原理は、完備距離空間上の縮小写像が一意の不動点を持つことを主張します。微分方程式の解の存在と一意性の証明など、解析学で広く応用されます。

縮小写像の定義

距離空間 上の写像 が縮小写像(contraction mapping)であるとは、ある定数 が存在して、任意の に対して

が成り立つことをいいます。定数 を縮小率といいます。

縮小写像はリプシッツ連続であり、特に一様連続です。

定理の主張

を空でない完備距離空間、 を縮小写像とする。このとき、 を満たす点 (不動点)が一意に存在する。

さらに、任意の初期点 に対して、反復列 に収束する。

証明

一意性は縮小性から直ちに従います。 かつ ならば、 より、 なので です。

存在については、任意の から始めて とおきます。

なので はCauchy列です。 の完備性から極限 が存在し、 の連続性から となります。

収束の速さ

反復列の収束速度について、次の評価が成り立ちます。

が小さいほど収束は速く、 に近いと収束は遅くなります。

応用例

縮小写像の原理は多くの場面で応用されます。

常微分方程式の初期値問題(Picard-Lindelöfの定理)
積分方程式の解の存在と一意性
陰関数定理・逆関数定理の証明
数値解析における反復法の収束保証

特にPicard-Lindelöfの定理では、積分作用素が適切な関数空間上で縮小写像となることを示し、解の存在と一意性を得ます。