関数の集まりを空間にする(コンパクト開位相と写像空間)
から への連続写像を全部集めた に、位相を入れたい。どんな位相を入れるべきかは、決めごとではなく答えのある問いです[1]。
要求はひとつ。 が連続であることと、 をカリー化した が連続であることが同値になってほしい。この要求を満たす位相を書き下すと、コンパクト開位相が出てきます。
カリー化から始める
集合のレベルでは、 の写像と の写像がぴったり対応します[1]。
が連続なら、各 について も連続。だから の行き先を にとれます。
問題は 自身の連続性です。それを問うには に位相が要る。
の連続写像
の連続写像
2 方向の条件に分ける
位相 が下側許容であるとは、連続な から の連続性が出ることをいいます[1]。
上側許容であるとは、逆に が連続なら も連続になることをいう。両方を満たすものを許容位相と呼びます。
粗い位相ほど下側許容になりやすく、細かい位相ほど上側許容になりやすい。密着位相はいつでも下側許容、離散位相はいつでも上側許容です[1]。
粗いほど成り立ちやすい。密着位相は無条件で満たす
細かいほど成り立ちやすい。離散位相は無条件で満たす
両側から挟むので、許容位相があるとすれば 1 つに決まります[1]。上側許容な位相はどれも下側許容な位相より細かい、という比較が効いてくる。
評価写像が鍵になる
評価写像とは、写像と点を受けとって値を返す関数のことです[1]。
位相 が上側許容であることと、 が連続であることは同値です[1]。証明は が恒等写像になることを使うだけ。
上側許容という抽象的な条件が、1 本の写像の連続性に置きかわります。
局所コンパクト性が要る
許容位相はいつでもあるわけではありません。 が完全正則で に許容位相があるなら、 は局所コンパクトになります[1]。
は完全正則ですが局所コンパクトではない。だから には許容位相が存在しません[1]。
関数空間に「良い位相」が入るかどうかが、もとの空間の局所コンパクト性で決まる。定義を選ぶ前に、選べるかどうかが問われています。
コンパクト開位相の定義
がコンパクト、 が開集合のとき、次の集合を考えます[1]。
これらを準基底として生成される位相がコンパクト開位相です[3]。基底は有限個の の共通部分になります。
「あるコンパクト集合の上で、値が指定の開集合に収まっている」。これが基本的な条件になります。

常に半分は満たす
コンパクト開位相は、どんな と に対しても下側許容です[1]。連続な からは、いつでも の連続性が出ます。
上側許容になるかどうかが残りの半分。 が局所コンパクトハウスドルフなら、こちらも成り立って許容位相になります[3]。
しかも、そういう に対しては最小の位相になる。評価写像を連続にする位相の中でいちばん粗いものです[3]。
コンパクト開位相は、評価写像を連続にする最小の位相という形で特徴づけられます。
条件を満たすぎりぎりまで粗くとった位相だと読める。
指数法則
が局所コンパクトハウスドルフなら、次の同相が成り立ちます[2]。
集合としての対応が、位相まで込めて成り立つという主張です。圏論の言葉でいえば、 と が随伴になる[2]。
局所コンパクトな空間が指数対象を持つ、と言いかえられます。逆に局所コンパクトでない では、この法則が破れることがある[1]。
コンパクト一様収束と一致する
が距離空間 のとき、コンパクト開位相はコンパクト集合上の一様収束の位相と一致します[2]。
つまり となるのは、どのコンパクト集合 についても次が成り立つときです。
自身がコンパクトなら、条件はただの一様収束になります。 に上限ノルムで入る位相が、この場合にあたる。
一様収束は各点収束より強い条件です。コンパクト開位相を選ぶことで、極限が連続関数のまま残ります。
分離公理の遺伝
がハウスドルフなら、コンパクト開位相を入れた もハウスドルフです[3]。
が完全正則なら、 も完全正則になります[3]。行き先の性質がそのまま関数空間へ移る形。
いっぽう距離化可能性はそのままでは移りません。 が距離空間でも、 の側でコンパクト集合が可算個で足りるかどうかが効いてきます。
例:ループ空間と道の空間
をループ空間と呼びます。 はコンパクトハウスドルフなので、指数法則がそのまま使える[2]。
が道の空間。ホモトピーを と見るか、 と見るかを行き来できます。
ホモトピー論でこの位相が標準になっているのは、行き来が位相を保ったまま成り立つためです。
| 関数空間 | の側 | 性質 |
|---|---|---|
| コンパクト | 一様収束、完備 | |
| コンパクト | コンパクト一様収束 | |
| 局所コンパクトでない | 許容位相がない |
例:多項式の列が収束する場所
を の中で見ます。
各コンパクト区間 の上では へ一様収束します。だからコンパクト開位相では 。
いっぽう 全体での一様収束は成り立ちません。 を大きくとると差が広がるためです。コンパクト集合ごとに測る位相のほうが、実際の収束を素直に拾えます。
に許容位相が存在しないのはなぜですか。
- が可算だから
- が局所コンパクトでないから
- が完備でないから
どの位相を選ぶかではなく、要求を満たす位相があるかどうか。そこから逆算すると、コンパクト開位相と局所コンパクト性がひとそろいで現れます。











完全正則な X に対して Map(X,R) に許容位相があれば、X は局所コンパクトになります。Q は完全正則ですが、どの点のどんな近傍もコンパクトになりません。可算性は関係なく、R は完備です。