距離空間における一様連続の概念を一般化するのが一様空間です。一様空間では距離なしに「一様な近さ」を定義できます。
連続と一様連続の違い
まず距離空間で連続と一様連続の違いを確認します。
関数 が点 で連続であるとは、任意の に対して が存在し、 ならば となることです。ここで は点 と に依存します。
が一様連続であるとは、任意の に対して が存在し、任意の で ならば となることです。 が点の選び方に依存しない点が本質的な違いです。
一様連続の例
は 上で一様連続です。 ならば なので、 と取れば任意の で成り立ちます。
も 上で一様連続です。平均値の定理から が成り立つので、 で十分です。
閉区間 上の連続関数は一様連続です(Heineの定理)。コンパクト集合上では連続と一様連続が一致します。
一様連続でない例
は 上で連続ですが一様連続ではありません。
を固定します。任意の に対して、, と取ると ですが
となり、一様連続の条件を満たしません。 が大きいところでは傾きが急になるため、一様な が取れないのです。
は 上で連続ですが一様連続ではありません。 で傾きが無限大に発散するためです。
一様空間の動機
一様連続の定義は距離を用いていますが、「任意の2点が十分近ければ像も近い」という構造は距離なしでも定式化できます。
距離空間では という の部分集合が「-近い点の対」を表します。一様空間ではこのような集合を抽象化して近縁(entourage)と呼びます。
一様空間の定義
集合 上の一様構造(uniform structure)は、対角集合 を含む の部分集合族 (近縁系)で、次の条件を満たすものです。
4番目の条件で は関係の合成です。
距離空間の一様構造
距離空間 には自然な一様構造が定まります。
を基本近縁とし、これらを含む集合全体を近縁系とします。
条件の確認をすると、1と2は明らかです。3は から従います。4は (三角不等式)から従います。
一様構造の例:離散一様構造
任意の集合 に離散一様構造を入れられます。対角集合 を含むすべての集合を近縁とします。
自身が近縁なので、 すなわち のときのみ「近い」とみなす最も細かい一様構造です。
一様構造の例:有界距離
距離空間 に対して も距離となります。 と は同じ位相を定めますが、一様構造は異なる場合があります。
ただし、 が有界のとき(または を用いるとき)は一様構造も一致します。
一様空間から位相空間へ
一様空間 には自然に位相が定まります。近縁 と点 に対して
を の -近傍と呼びます。 を の近傍基として位相を定義します。
距離空間の場合、(開球)となり、通常の距離位相が得られます。
一様連続写像の一般化
一様空間 から への写像 が一様連続であるとは、任意の に対して
が成り立つことをいいます。
距離空間の場合に戻って確認すると、これは「任意の に対してある が存在し、 ならば 」と同値です。
コンパクト空間上の一様連続性
コンパクト空間から一様空間への連続写像は一様連続です。
これは Heine の定理(コンパクト集合上の連続関数は一様連続)の一般化であり、一様空間の枠組みで自然に証明できます。
一様空間の完備化
距離空間の完備化と同様に、一様空間にも完備化の概念があります。
Cauchy フィルター(任意の近縁を元として含むフィルター)を用いて定式化します。すべての Cauchy フィルターが収束する一様空間を完備といい、任意の一様空間は完備な一様空間に稠密に埋め込めます。
一様空間が有用な場面
一様空間は次のような状況で距離空間より柔軟です。
特に位相群論では、左一様構造と右一様構造という2つの自然な一様構造があり、これらが一致するかどうかが理論上重要になります。