パラコンパクト空間は任意の開被覆が局所有限な開細分を持つ空間です。ここではパラコンパクト空間の具体例と非例を詳しく見ていきます。
コンパクト空間
コンパクト空間はパラコンパクトです。任意の開被覆が有限部分被覆を持つので、有限個の開集合からなる被覆は自動的に局所有限です。
、( 次元球面)、有限集合などがこれに該当します。
距離空間
すべての距離空間はパラコンパクトです(A.H. Stoneの定理、1948年)。
証明の概略を述べます。距離空間 の開被覆 が与えられたとき、各点 で となる を選び、 となる を取ります。 として と分解し、各 上で離散的な細分を構成して貼り合わせます。
この定理から、、ヒルベルト空間、任意のバナッハ空間などがパラコンパクトであることが従います。
多様体
すべての多様体(第二可算かつハウスドルフ)はパラコンパクトです。
多様体は局所的に と同相であり、第二可算性からリンデレフ性が従います。リンデレフかつ正則な空間はパラコンパクトです。
トーラス 、射影空間 、、リー群、リーマン面などがすべてパラコンパクトとなります。1の分割が存在することが微分幾何学の基礎となっています。
CW複体
すべてのCW複体はパラコンパクトです。
CW複体は胞体を順次貼り付けて構成される空間で、代数的位相幾何学の基本的な対象です。有限CW複体はコンパクトなのでパラコンパクト、無限CW複体も弱位相の性質からパラコンパクトとなります。
局所コンパクトハウスドルフかつ第二可算な空間
局所コンパクトハウスドルフ空間で第二可算なものはパラコンパクトです。
第二可算ならばリンデレフであり、局所コンパクトと合わせて σ-コンパクトとなります。σ-コンパクトハウスドルフ空間はパラコンパクトです。
順序数空間
最初の非可算順序数 に対して、 に順序位相を入れた空間はパラコンパクトです。
この空間は局所コンパクトで正規ですが、コンパクトではありません( への収束列が存在しない)。リンデレフでもありません(可算部分被覆が取れない開被覆が存在)。それでもパラコンパクトです。
パラコンパクトでない例:長い直線
長い直線(long line) はパラコンパクトではありません。
は に辞書式順序位相を入れた空間です。局所的には と同相ですが、大域的には非常に長い空間です。
は正規で局所コンパクトですが、リンデレフでなく、パラコンパクトでもありません。 の開被覆で局所有限な細分を持たないものが構成できます。
パラコンパクトでない例:Sorgenfreyの平面
Sorgenfreyの直線 (下限位相を持つ )はパラコンパクトです。 は より細かい位相を持ち、リンデレフかつ正則なのでパラコンパクトとなります。
しかし、その積 (Sorgenfreyの平面)はパラコンパクトではありません。 は正規ですらなく、反対角線 とその補集合を分離する開集合が存在しません。
パラコンパクト性は有限積で保たれますが、無限積や一般の積では保たれません。Sorgenfreyの平面は2つの積でも崩れる例です。
パラコンパクトでない例:非可算離散空間の箱位相積
(非可算個の の積)に箱位相を入れた空間はパラコンパクトではありません。
箱位相は積位相より細かく、開集合がすべての成分で制限を持てます。この空間は正規ですらありません。
パラコンパクト性の遺伝性
パラコンパクト性は閉部分空間に遺伝します。 がパラコンパクトで が閉集合ならば、 もパラコンパクトです。
しかし、開部分空間には一般に遺伝しません。ただし、 がパラコンパクトかつハウスドルフならば、任意の 集合(可算個の閉集合の和)はパラコンパクトです。
パラコンパクトと正規性
パラコンパクトハウスドルフ空間は正規です。
逆は成り立たず、正規だがパラコンパクトでない空間が存在します(長い直線の変種など)。
任意の開被覆が局所有限な細分を持つ。距離空間、多様体、CW複体など広いクラスを含む。1の分割の存在と同値(ハウスドルフの場合)。
互いに素な閉集合を開集合で分離できる。パラコンパクトより弱い条件。積で保たれないことがある。