写像の正則値と逆像定理

正則値定理は、滑らかな写像の逆像が部分多様体となるための条件を与える。多くの重要な多様体がこの方法で構成される。

臨界点と正則点

滑らかな写像 に対して、点 が臨界点(critical point)であるとは、微分 が全射でないことをいう。

が全射のとき、 を正則点(regular point)という。

臨界値と正則値

が臨界値(critical value)であるとは、 に臨界点が含まれることをいう。

のすべての点が正則点のとき、 を正則値(regular value)という。 の場合も正則値とみなす。

正則値定理

を滑らかな写像とする。 が正則値ならば、 次元部分多様体である(空でなければ)。

これを正則値定理(regular value theorem)または逆像定理という。

証明の概略

を取る。 が全射なので、 の次元は である。

陰関数定理により、 の近傍で 個の変数で滑らかにパラメトライズできる。

球面の構成

, を考える。

であり、 である。したがって は正則値であり、

次元部分多様体である。

行列群の構成

, を考える。

の正則値であることを示せば、 が部分多様体となる。

であり、 は反対称行列全体への全射となる。

特殊線型群の構成

において、 は正則値である。

であり、 ならこれは でない。

したがって は部分多様体である。

Sard の定理

滑らかな写像 の臨界値の集合は において測度零である。

したがって、ほとんどすべての は正則値である。これは正則値定理と組み合わせて強力な道具となる。

横断性

と部分多様体 が横断的(transversal)であるとは、任意の

が成り立つことをいう。 と書く。

横断性定理

が横断的ならば、 の部分多様体であり、

となる。(1点)のとき、正則値定理に帰着する。

接空間の計算

が部分多様体のとき、各点 での接空間は

である。これは の核として具体的に計算できる。