1の分割は多様体上で局所的な構成を大域化するための基本的な道具である。積分、接続、計量などの大域的構成に不可欠である。
1の分割の定義
多様体 の開被覆 に従属する1の分割(partition of unity)とは、滑らかな関数の族 で次を満たすものである。
1の分割の存在
任意の多様体 と任意の開被覆 に対して、それに従属する1の分割が存在する。
これは多様体がパラコンパクト(任意の開被覆が局所有限な細分を持つ)であることから従う。
バンプ関数
1の分割の構成にはバンプ関数(bump function)を用いる。
上の関数 で、原点の近傍で 、コンパクトな台を持つ滑らかなものが存在する。
例えば
を適当に正規化すればよい。
リーマン計量の構成
1の分割を用いて、任意の多様体にリーマン計量を構成できる。
各座標近傍 で標準的な計量 を引き戻し、
とすれば、 は大域的なリーマン計量となる。計量の正定値性は と から保たれる。
微分形式の積分
コンパクト台を持つ -形式 の積分を定義する。 を座標近傍、 を1の分割とすると
右辺は での通常の積分である。この定義は座標や1の分割の取り方によらない。
ベクトル束の接続
ベクトル束 上の接続も1の分割で構成できる。
各自明化近傍 で標準的な接続 を取り、
とすれば大域的な接続が得られる。接続のアフィン性(凸結合で閉じる性質)を用いる。
拡張定理
閉集合 上で定義された滑らかな関数は、 全体に滑らかに拡張できる。
1の分割を用いて、 の近傍での関数を徐々に に落とすことで構成する。
埋め込みへの応用
コンパクト多様体 の への埋め込みは1の分割で構成できる。
座標近傍 と1の分割 を用いて、写像
を考えると、十分大きな で が埋め込みとなる。
局所から大域へ
1の分割の本質は「局所的に定義されたものを大域的に貼り合わせる」ことにある。
可換でない場合の注意
1の分割による貼り合わせは「凸結合」に相当する構成で有効である。
複素構造や概複素構造など、凸結合で閉じない対象には直接適用できない。これらは障害理論や層のコホモロジーの出番となる。