測地線とその性質

測地線はリーマン多様体における「まっすぐな曲線」であり、2点間の最短経路を局所的に与える。物理学では自由粒子の運動を記述する。

測地線の定義

曲線 が測地線(geodesic)であるとは、速度ベクトルが平行移動で不変であること、すなわち

を満たすことをいう。「加速度がゼロ」という条件である。

測地線方程式

座標 と書くと、測地線方程式は

となる。これは 個の2階常微分方程式からなる系である。

存在と一意性

初期条件 , を与えると、測地線は局所的に一意に存在する。

常微分方程式の解の存在と一意性定理から従う。

測地線の例

(ユークリッド空間)では なので、測地線は直線 である。

(球面)では測地線は大円である。北極と南極を結ぶ子午線、赤道などがこれにあたる。

パラメータの取り替え

が測地線ならば、(アフィン変換)も測地線である。

一般のパラメータ変換では測地線にならない。測地線のパラメータをアフィンパラメータという。

速さ一定

測地線上では速さ は一定である。

から従う。

指数写像

に対して、 を初期条件 , の測地線とする。

指数写像

で定義する。 は原点の十分小さい近傍である。

指数写像の性質

が小さいとき)
は恒等写像

3番目の性質から、 は原点の近傍で微分同相となる。

法座標

の近傍で を用いた座標を法座標(normal coordinates)という。

法座標では となる。 を通る測地線は法座標で直線 と表される。

測地線と距離

2点 を結ぶ曲線のうち、長さを最小にするものは測地線である(局所的に)。

より正確には、十分近い2点を結ぶ最短曲線は測地線であり、長さはリーマン距離 に等しい。

変分原理

長さ汎関数

の停留条件が測地線方程式を与える。エネルギー汎関数

の停留条件も同じ方程式を与える。

測地的完備性

任意の測地線が で定義できるとき、 を測地的に完備という。

コンパクト多様体は測地的に完備である。 から1点を除いた空間は完備でない。