リーマン曲率テンソルをクリストッフェル記号から計算する
曲率テンソルは、クリストッフェル記号から機械的に計算できます。手順は決まっていて、迷うところがありません。
面倒なのは量です。添字が 4 つあるので、素朴に数えれば 個の成分がある。対称性と具体例を使って、その面倒をどう減らすかが実務になります。
定義から成分へ
座標基底で と書きます。定義に を入れて整理すると、成分の式が出ます[1][2]。
前半が の微分の差、後半が どうしの積の差。 が計量とその 1 階微分から作られるので、 は計量の 2 階微分までで決まります[3]。
計算の順序も決まります。計量を書き、 を出し、上の式へ入れる。この 3 段だけです。
手順を分解する
計算の全体像を、もう少し細かく並べておきます。
3 段目でどれだけ を見つけられるかが分かれ目です。計量が対角で、成分が座標の一部にしかよらないとき、 の大半が消えます。
球面の場合、 だけが に依存していました。だから での微分を含む項しか残りません。
計量の 2 階微分まで
が計量の何階微分に依存するかを確かめておきます。
は とその 1 階微分から作られます。 の式には の 1 階微分が入るので、 の 2 階微分までが現れます[3]。
3 階以上は出てきません。曲率は 2 階微分の情報だけを見ている、ということ。
テイラー展開でいえば、計量の 2 次の項が曲率を担います。1 次の項は座標の取り替えで消せるので、消せない最初の情報が 2 次にある。
2 次元での近道
2 次元では、成分をすべて計算せずに済みます。独立成分が 1 個なので、 だけ出せば終わりです。
さらに、直交する座標なら公式が使えます。 の形なら、ガウス曲率が計量の微分だけで書けます。
球面の計算で を 1 つ出しただけだったのは、この事情によります。残りの成分は反対称性から自動で決まる。
3 次元でも 6 個、4 次元で 20 個です。次元が上がると急に増えるので、対称性を使わない計算はすぐ手に負えなくなります。
球面で最後までやってみる
単位球面 を球面座標 でとります。計量は次のとおり。
逆行列は 、 です。公式に入れると、 でない は 2 種類だけになります。
添字を 、 と番号で書き、成分 を計算します[1]。
項ごとに埋めます。第 1 項は 。
第 2 項は なので消えます。第 3 項も がすべて なので消える。
第 4 項だけ残ります。 で、これを引くので 。
添字を下ろすと です[1]。
最後にガウス曲率へ直します。2 次元では なので、次のようになります[1]。
が消えました。計算の途中では が何度も現れたのに、最後に残るのは定数です。
3 本の曲線が計算の部品です。 も も とともに動きますが、計量の行列式で割ると に落ち着きます。
双曲平面でも同じ手順
上半平面に を入れます。同じ手順を踏むと が出ます[1]。
なので、割り算して [1]。ここでも位置によらない定数になります。
計量の見た目は に強く依存しています。それでも曲率が一定になるのは、双曲平面がどの点でも同じに見える空間だからです。
正規座標で楽をする
計算量を減らす手がいくつかあります。1 つが座標の選び方です。
点 で となる座標をとれます。その座標では、 における曲率の式から積の項が落ちます[1]。
そのものは消えても、その微分は消えません。曲率が拾っているのは の 1 階微分だけだ、という事実がここに現れます。
青い曲線が の値のイメージです。 で になるように座標を選んでも、橙の接線が示す傾きは残ります。
歪んだ積を使う
もう 1 つの近道が、計量の形から一気に答えを出す公式です。区間と多様体の歪んだ積 に を入れた場合、断面曲率が次で書けます[1]。
をいちいち出さずに済みます。 を 1 つ選べば曲率が決まる。
測地極座標で書いた模型空間が、そのまま当てはまります。 なら 、 なら 、 なら [1]。
を計算するだけで 、、 が出ます。3 つの模型が の選び方だけで書き分けられます[1]。
青い曲線が です。上へ反れば正の曲率、下へ反れば負の曲率。 という比が符号を決めます。
対称性を検算に使う
手で計算すると符号や添字を間違えます。対称性が検算の道具になります[1]。
出した成分がこれらをみたさなければ、どこかで間違えています。特に反対称性は目視で確認できるので、最初に見るべき点です。
対称性のおかげで、計算すべき成分の数も減ります。 次元での独立成分は 個[1]。
2 次元なら 1 個で済みます。球面の計算で だけを出したのは、それ以外が反対称性から決まるためです。
別のやり方もある
座標と による計算は、原理が透明なかわりに手数がかかります。
正規直交な枠を選び、接続を 1 形式として扱う方法もあります。外微分と楔積で書けるので、成分の数が減って計算が短くなる。
どちらを使うかは場合によります。原理を確かめたいなら座標、実際に手を動かすなら枠を選ぶことが多い。
いずれの方法でも、出てくる は同じものです。座標によらない量なので、道具の選び方で答えが変わることはありません。










