断面曲率とGauss曲率

断面曲率は接空間の2次元部分空間に対して定まる曲率であり、Gauss曲率の一般化である。曲率の最も基本的な概念といえる。

断面曲率の定義

と2次元部分空間 を考える。 を張る線型独立なベクトル に対して、断面曲率(sectional curvature)を

で定義する。 である。

基底によらないこと

分母 の面積の2乗に比例する。

の基底を取り替えても の値は変わらない。 は2次元部分空間の関数として well-defined である。

Gauss曲率との関係

が2次元のとき、各点で2次元部分空間は 自身しかない。このとき断面曲率は Gauss 曲率 と一致する。

断面曲率は Gauss 曲率を高次元に拡張した概念である。

曲面の場合

3次元空間内の曲面 の Gauss 曲率は、主曲率 の積

で与えられる。これは内在的な量であり、埋め込みによらない(驚異の定理)。

定曲率空間

断面曲率が定数 である空間を定曲率空間という。

(正曲率)

球面 およびその商空間。(半径 )では

(平坦)

ユークリッド空間 およびトーラス。平行移動が経路に依存しない。

(負曲率)

双曲空間 。上半空間モデル、Poincaré 円板モデルなどで実現される。

断面曲率と曲率テンソル

のとき、すべての2次元部分空間での断面曲率がわかれば、リーマン曲率テンソルが完全に決まる。

曲率テンソルの対称性から、 の値から代数的に復元できる。

Schur の定理

で、断面曲率が各点で(方向によらず)一定ならば、断面曲率は多様体全体で定数である。

2次元ではこれは成り立たない。Gauss 曲率は点によって異なりうる。

曲率の符号と幾何

断面曲率の符号は大域的な幾何に強く影響する。

:コンパクト、有限な基本群(Bonnet-Myers, Synge)
:普遍被覆は と微分同相(Cartan-Hadamard)
:基本群は双曲的、指数的成長

ピンチング

断面曲率が を満たすとき、-ピンチされているという。

のとき、 は球面に同相である(球面定理、Brendle-Schoen による微分同相版あり)。

リッチ曲率との関係

単位ベクトル に対して、 を含む2次元部分空間での断面曲率の平均が

となる( は正規直交基底)。リッチ曲率は断面曲率の「平均」である。