Jacobi場は測地線の変分によって生じるベクトル場であり、測地線の安定性や共役点を調べる道具である。比較定理の基礎となる。
測地線の変分
を測地線とする。 の変分とは、滑らかな写像 で を満たすものである。
各 に対して は曲線であり、 である。
変分ベクトル場
変分 に対して
を変分ベクトル場という。 は に沿ったベクトル場であり、変分の「方向」を表す。
Jacobi方程式
がすべて測地線となる変分を測地変分という。測地変分の変分ベクトル場 は Jacobi 方程式
を満たす。ここで は に沿った共変微分である。
Jacobi場
Jacobi 方程式を満たすベクトル場を Jacobi 場という。これは2階線型常微分方程式なので、解空間は 次元である。
初期条件 を与えれば Jacobi 場は一意に定まる。
Jacobi場の例:平坦空間
では なので、Jacobi 方程式は となる。
解は ( は定ベクトル)である。Jacobi 場は線型に増大する。
Jacobi場の例:球面
(曲率 )上の測地線 (大円)を考える。 に垂直な Jacobi 場は
の形になる( は平行ベクトル場)。 で となる。
共役点
に対して が共役点(conjugate point)であるとは、, となる非自明な Jacobi 場が存在することをいう。
共役点は「測地線が最短でなくなり始める」点に関係する。
共役点と最短性
が から まで最短曲線であり、かつ が共役点でないならば、 を少し延長しても最短性を保つ。
が の共役点ならば、 は で最短ではなくなる。
重複度
共役点の重複度(multiplicity)は、 を満たす Jacobi 場の空間の次元である。最大で となる。
球面では、対蹠点は重複度 の共役点である。
Jacobi場と指数写像
の微分と Jacobi 場は関係する。 と に対して
は、 に沿った Jacobi 場 で , を満たすものの での値である。
共役点と指数写像の特異点
が の共役点であることと、 が退化する(特異点を持つ)ことは同値である。
共役点は指数写像のランク落ちとして特徴づけられる。
Morse指数定理
測地線のエネルギー汎関数の Hessian(第二変分)の負固有値の個数(Morse 指数)は、端点を除く共役点の重複度の総和に等しい。