Hopf-Rinowの定理はリーマン多様体における完備性の同値な特徴づけを与える。距離構造と測地線の大域的な振る舞いを結びつける基本定理である。
リーマン距離
リーマン多様体 の2点 に対して、リーマン距離を
で定義する。 は曲線の長さである。
は距離関数の公理を満たし、 は距離空間となる。
完備性の定義
距離空間として が完備であるとは、任意の Cauchy 列が収束することをいう。
測地的に完備であるとは、任意の測地線が まで延長可能であることをいう。
Hopf-Rinowの定理
連結リーマン多様体 に対して、次の条件は同値である。
これらが成り立つとき、 を完備という。
最短測地線の存在
さらに、 が完備ならば、任意の2点 を結ぶ最短測地線が存在する。
すなわち となる測地線 が取れる。
証明の概略(完備 測地的完備)
測地線 が で定義されているとする。()は Cauchy 列となり、完備性から極限 が存在する。
の近傍で測地線を延長でき、 は を超えて延長可能となる。
証明の概略(測地的完備 最短測地線の存在)
から への最短曲線の存在を示す。 となる で を満たすものを取る。
これは が 全体で定義されていることと、距離球の議論を組み合わせて示される。
コンパクト多様体
コンパクト多様体は常に完備である。
有界閉集合がコンパクトであることから従う。球面 、トーラス 、射影空間 は完備である。
完備でない例
は完備でない。原点に向かう測地線(直線)は原点で止まり、延長できない。
開球 も完備でない。境界に近づく Cauchy 列が収束しない。
完備化
完備でないリーマン多様体の距離完備化は、一般にリーマン多様体とならない。
特異点や境界が生じることがある。
応用:基本群の有限性
Bonnet-Myers の定理と組み合わせると、リッチ曲率に正の下界を持つ完備多様体はコンパクトであり、基本群が有限となることがわかる。
応用:測地線の大域的存在
完備多様体では、任意の と に対して、測地線 が 全体で定義される。
これは力学系としての測地流が完備であることを意味する。