Bonnet-Myersの定理はリッチ曲率の正の下界から直径の有界性とコンパクト性を導く。リーマン幾何学における曲率と大域構造の関係を示す典型例である。
定理の主張
を 次元完備連結リーマン多様体とする。リッチ曲率が
を満たすならば、 の直径は
を満たす。特に はコンパクトである。
直径の意味
直径は である。
のとき直径は 以下となる。これは半径 の球面 の直径と一致する。
証明の方針
2点 を結ぶ最短測地線 を考える。 に沿った Jacobi 場の解析から、 ならば 上に共役点が現れ、最短性に矛盾することを示す。
Jacobi場の評価
に直交する Jacobi 場 で を満たすものを考える。リッチ曲率の下界から
が導かれる(正確には指数比較により評価する)。
共役点の出現
上の不等式から、 は より速く減少しないことがわかる。
で比較関数 はゼロになるため、Jacobi 場もゼロとなり共役点が現れる。
コンパクト性
直径が有界なので、 は有界である。完備性と合わせると、Hopf-Rinow の定理から はコンパクトとなる。
基本群の有限性
Bonnet-Myers の定理からさらに、 の基本群 は有限群である。
普遍被覆 も同じ曲率条件を満たしコンパクトなので、被覆変換群 は有限となる。
等号の達成
となるのは、 が球面 に等長的なときに限る(Cheng の定理)。
より一般に、直径が最大に近いとき は球面に近い構造を持つ。
断面曲率との関係
断面曲率 ならば なので、Bonnet-Myers の定理が適用できる。
Bonnet の定理(1855)は断面曲率の場合に直径評価を与えた。Myers(1941)がリッチ曲率に拡張した。
Syngeの定理
が偶数次元で向き付け可能、(断面曲率が正)ならば、 は単連結である。
奇数次元では、向き付け可能で ならば は向き付け可能である。
反例
リッチ曲率が非負()だけでは直径の上界は得られない。 はリッチ平坦だが非コンパクトである。
曲率条件を弱めると大域構造への制約も弱まる。
一般化
重み付きリーマン多様体や Finsler 多様体にも Bonnet-Myers 型の定理が拡張されている。
Bakry-Émery リッチ曲率を用いた一般化は、解析学や確率論との関連で研究されている。