Cartan-Hadamardの定理

Cartan-Hadamardの定理は断面曲率が非正の完備多様体の大域構造を決定する。普遍被覆がユークリッド空間と微分同相になるという強い結論を与える。

定理の主張

を完備連結リーマン多様体とする。断面曲率が

を満たすならば、任意の点 で指数写像 は被覆写像である。

特に、普遍被覆 と微分同相である。

共役点がないこと

のとき、Jacobi 場 を満たすものは となる。

Jacobi 方程式 において、 が凸関数(下に凸)となることを意味する。, ならば は増加し続ける。

指数写像の局所微分同相

共役点がないことは のすべての点で正則であることと同値である。

したがって は局所微分同相となる。

被覆写像であること

が完備なので 全体で定義される。局所微分同相性と完備性を組み合わせると、 が被覆写像であることが示される。

普遍被覆

が被覆写像なので、 の被覆空間である。

は単連結なので、これは普遍被覆となる。

単連結な場合

が単連結ならば、 は微分同相となる。すなわち と微分同相である。

かつ単連結な完備多様体を Cartan-Hadamard 多様体という。

基本群

の基本群 は被覆変換群として に自由かつ固有不連続に作用する。

と表される。

例:双曲空間

双曲空間 であり、単連結完備なので Cartan-Hadamard 多様体である。

は上半空間モデルや Poincaré 円板モデルで実現される。

例:平坦トーラス

平坦トーラス であり、普遍被覆は である。

基本群 が格子として作用する。

例:双曲曲面

の種数を持つ閉曲面 の双曲計量を持つ。

であり、 は Fuchsia 群である。

位相的結論

の完備多様体では、

普遍被覆は可縮( と同相)
ホモトピー群は を除いてすべて自明
は Eilenberg-MacLane 空間 である

Hadamard 多様体の性質

単連結で の完備多様体(Hadamard 多様体)では、任意の2点を結ぶ測地線が一意に存在する。

また、測地凸集合の理論が展開でき、最適化や不動点定理に応用される。

Preissman の定理

コンパクトで (真に負)ならば、 のすべての可換部分群は巡回群である。

負曲率多様体の基本群は「双曲的」な性質を持つ。