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曲率形式とカルタンの構造方程式、動標構で計算を短くする

座標基底のかわりに正規直交枠を使うと、曲率の計算が驚くほど短くなります。

クリストッフェル記号を 個ならべる必要がありません。1 形式を数本書き、外微分をとるだけで答えが出ます。

枠と余枠

多様体の開集合の上で、各点の接空間の正規直交基底 をなめらかに選びます。これを動標構と呼びます。

その双対基底 を余枠といいます。 をみたす 1 形式の組です。

計量は余枠の 2 乗和で書けます。

座標基底と違い、枠は正規直交にとれます。かわりに になるとは限らず、座標場としては書けません。

平面の極座標で例を作ります。 に対して ととれば、これが正規直交な余枠です。

接続 1 形式

接続を枠で表します。 を枠で展開した係数が、接続 1 形式 です。

正規直交枠を使うと、計量との両立から反対称性が出ます[1]

対角成分が消えるので、 なら独立な成分は ただ 1 本。ここが計算量の削減に直結します。

座標基底ではこうなりません。 は 2 次元でも 6 個あり、反対称性という近道が使えない。

2 本の針が枠です。点が動くと枠も回ります。その回り方を記録したものが接続 1 形式。

第一構造方程式

捩れがないという条件を、枠の言葉で書き直します。

は余枠が閉じていない度合いです。この量を が打ち消す、という形になっています。

この式の使い方が肝心です。 は計量から書けるので、 は計算できる。あとは反対称性を課して を逆算します。

は 1 通りに決まる

逆算がうまくいく理由が、次の補題です。 の値と反対称性 から、 がただ 1 つに決まります[2]

証明は連立方程式を解くだけです。 と置き、2 本の構造方程式に入れると が一意に定まります[2]

ここから驚異の定理が読み取れます。 が計量だけで決まり、 だけで決まる。だから曲率も計量だけで決まります[2]

外の空間はどこにも登場しません。埋め込みを使わずに曲率が出てくる、という筋道です。

第二構造方程式

曲率 2 形式を、接続 1 形式から作ります[1][3]

行列で書けば です[3]。曲率テンソルの成分の式とまったく同じ形で、微分の差と積の差が並んでいます。

符号や添字の位置は文献によって違います。使う本の流儀を 1 つに決め、最後まで通します。

曲率テンソルとの関係も書けます。余枠で展開すると次のようになります。

2 次元では独立な成分が 1 つなので、 と書けます。 がガウス曲率[2]

回転面で試す

一般の回転面で計算します。計量を とし、余枠を ととります。

まず です。第一構造方程式に入れて を探します。

と置くと、 になります。確かめると次のとおり。

もう 1 本も で合います。

第二構造方程式へ進みます。 では の項がすべて消えるので、外微分だけで済みます。

したがってガウス曲率は です。回転面の曲率が、母線の形だけで書けました。

なら で球面、 なら で平面、 なら で双曲平面です。

3 つの模型が、母線を選び分けるだけで出てきます。座標法で を 6 個計算する必要はありません。

球面で最短の計算

回転面の公式が出たので、球面はその特別な場合です。ただし直接やっても短いので、書いておきます。

単位球面の計量を とし、余枠を ととります。

外微分は です。

第一構造方程式から が出ます。もう一度外微分すると次のようになります。

したがって です。式を 4 本書いただけで終わりました。

枠が回っても曲率とは限らない

注意すべき点が 1 つあります。 でないことと、曲率があることは別です。

平面の極座標で確かめます。 に対して、さきほどの計算で とすれば です。

ではありません。原点を囲む輪に沿って積分すると になります。それでも で、曲率は消えます。

青い針が極座標の枠で、輪を一周する間に 回ります。橙の針は平行移動した向きで、こちらは動きません。

が測っているのは枠の回り方です。そこには枠の選び方に由来する部分が混じっている。 を作る段階で、その部分が落ちます。

座標法と比べる

同じ球面を 2 通りで計算すると、手数の差がはっきりします。

座標法では、まず を出します。2 次元でも 6 成分あり、そのうち でないものを選別する必要がある。そのあと 4 添字の の式に代入します。

枠の方法では、 を書き、 を 1 本求め、外微分を 1 回とるだけ。中間に現れる量が 1 つしかありません。

高い次元でも同じ傾向です。反対称性から の独立成分が 本に収まるので、 個より少なくなります。

かわりに失うものもあります。枠は座標場ではないので、 になりません。座標での直感が使いにくくなる場面があります。

ビアンキ恒等式も短くなる

恒等式の形も簡潔になります。第二構造方程式の外微分をとると、次が出ます。

これが第二ビアンキ恒等式です。座標で書くと共変微分の巡回和になる主張が、外微分 1 回で書けます。

第一ビアンキ恒等式も同様で、第一構造方程式の外微分から出ます。捩れがない場合には という形になります。

一般の束でも同じ形

この定式化は接束に限りません。ベクトル束の局所枠でも、まったく同じ式が成り立ちます[3]

行列 を接続 1 形式の行列とすると、曲率は です[3]。枠を取り替えると に変わり、曲率は に変わります[3]

接束の場合には、余枠 という追加の道具があります。第一構造方程式が書けるのは、この があるからです。

一般の束には対応するものがありません。だから構造方程式は第二のほうだけになります。カルタンの方法が接束でとくに強力なのは、 を使って を一意に決められる点にあります[2]

参考文献

Treude J-H. *Riemannsche Geometrie*. Vorlesungsskript, Universität Konstanz, Wintersemester 2018/19.
Treibergs A. *Notes on Cartan's Method of Moving Frames*. University of Utah, 1996.
Pansu P. *Chapitre 7: Connexions, théorie de Chern-Weil*. Université Paris-Saclay, 2005.
正規直交な動標構をとると、接続が 1 形式に、曲率が 2 形式になります。カルタンの 2 本の構造方程式で、回転面の曲率が母線 f だけから K = -f''/f と出るところまで。反対称性で成分が減る理由、枠が回っても曲率がゼロでありうること、座標とクリストッフェル記号で押し通す方法との手数の差も比べます。