共変微分は「曲がった空間でベクトルを微分する方法」である。平坦な空間では当たり前にできることが、曲がった空間では一工夫必要になる。
平坦な空間での微分
ユークリッド空間 では、ベクトル場の微分は簡単である。点 でのベクトル と、少し離れた点 でのベクトル を直接比較して、差を取ればよい。
ではすべての点の接空間が「同じ」とみなせる。だから異なる点のベクトルを引き算できる。
曲がった空間での問題
球面上を考えよう。北極での接ベクトルと、赤道上の点での接ベクトルは、異なる平面に住んでいる。北極の接平面は水平だが、赤道の接平面は垂直に立っている。
異なる接空間のベクトルをどうやって比較するのか。直接引き算することはできない。
平行移動という解決策
そこで「平行移動」を使う。 から へ曲線に沿ってベクトルを「まっすぐ運ぶ」操作である。
球面上で北極から南に向かってベクトルを運ぶとき、ベクトルは常に進行方向に対して同じ角度を保つように動かす。曲面に沿って「できるだけ回転させずに」運ぶのである。
共変微分の考え方
共変微分 は、 方向に進みながら がどれだけ変化するかを測る。
手順はこうだ。 から 方向に少し動いた点 を考える。 を平行移動で に持ってきて、 と比較する。この差が共変微分である。
平行移動で「座標系のずれ」を補正してから比較するのがポイントである。
なぜ「共変」なのか
「共変」とは座標の取り方によらないという意味である。
普通の偏微分 は座標系に依存する。座標を変えると、基底ベクトル自体が変わるので、見かけ上の変化が生じてしまう。
共変微分は、この見かけの変化を Christoffel 記号 で補正する。補正後の量は座標の取り方によらない、真の変化率となる。
直線と測地線
「まっすぐ進む」とはどういうことか。ユークリッド空間では直線上を進むことである。
曲がった空間では、速度ベクトルが「変化しない」曲線を考える。共変微分で書くと である。これが測地線の方程式であり、曲がった空間での「直線」に相当する。
球面では測地線は大円になる。飛行機が地球上を最短距離で飛ぶルートが大円である。
Christoffel記号の意味
Christoffel 記号 は「座標系の曲がり具合」を表す。
極座標 を考えよう。 方向に進むと、 方向の基底ベクトルの長さが変わる(円周が大きくなる)。この変化を記述するのが Christoffel 記号である。
平坦な空間でも曲がった座標系を使えば となる。逆に、真に曲がった空間では、どんな座標系を使っても曲率が残る。
まとめ
共変微分は「曲がった空間で、異なる点のベクトルを比較する仕組み」である。平行移動によって接空間のずれを補正し、座標に依存しない真の変化率を取り出す。
測地線、曲率、平行移動といったリーマン幾何学の基本概念は、すべて共変微分から導かれる。