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テイラー展開の計算問題〜既知の展開に代入して組み立てる

のマクローリン展開は、 の展開に をいれれば書けます。

6 回微分しても係数は同じ。内側の関数が で になるなら、この代入はいつでも通ります[1]。 はその条件を満たしている。

出発点になる展開

のまわりの展開では、次の 5 つが土台になる。かっこの中は収束する範囲です。

指数関数(すべての )
正弦(すべての )
余弦(すべての )
対数()
二項()

二項展開の で の符号を変えると になります。等比級数の和そのもので、ここから対数と の展開もたどれる。

例 1: を まで

両方を まで書き出し、かけて次数ごとに集めます。

の係数は で消えます。 は になる。

かけて 以上になる組み合わせは、 までの係数に関わらない。用意するのは両方とも までで十分です。

例 2: を まで

と置き、 の係数を比べます。奇関数だから偶数次の係数は 。

から 、 から で 。

では となり、 と決まります。

次の項は で、一般の係数にはベルヌーイ数が入る。収束するのは の範囲です[2]。

例 3: を のまわりで

と置くと になり、上に並べた形へ落ちる。

定義から確かめると、 階導関数は で、 では 。これを で割ると、上の係数 に一致します。

収束する範囲は で、右端の では交代級数として に収束する。

例 4: を のまわりで

として、 での導関数の値を順に並べます。、、、。

なら で、4 つの項は 、、、 と小さくなる。

打ち切った次の項は で ほど。中心に近い点ほど、低い次数で精度が上がる。

例 5:

分子を展開すると と が消えて、最低次は になります。

で割るとかっこの中が残り、 で に近づく。展開した式の定数項が、そのまま極限の値になります[1]。

ロピタルの定理なら 2 回微分することになります。分母の次数が上がるほど、微分の回数も増えていく。

例 6:

例 2 の結果から で、 で割れば が残ります。

分子は まで用意すれば足ります。 以上の項は、割ったあとも が残るため へ近づく。

例 7: を小数第 5 位まで

二項展開に 、 をいれます。

3 次までの和は 。この値を 2 乗すると になり、 をわずかに超える。

4 次の項は 、つまり です。交代級数だから、打ち切った先の 1 項が誤差の目安になります。引いた を 2 乗すると で、今度は を下回る。

例 8: を 3 次で切ったときの誤差

ラグランジュの剰余は、 と のあいだのどこかにある を使って次の形になります[1]。

の 4 次の係数は だから、3 次で切った式は 4 次で切った式と同じものです。 ととれて、5 階導関数の は絶対値が 以下になる[1]。

実際のずれは、打ち切った先の項を足せば見えます。 では が で、上の評価とほぼ同じ値。

例 9: を項別積分で

の原始関数は初等関数で書けない。冒頭の展開を項ごとに積分します。

部分和は 、、、、、、 と上下から挟んでいく。

次の項が だから、真の値は と のあいだ。小数第 4 位までは と決まります。

この積分は誤差関数を使って と書け、いま並べた級数は誤差関数の展開そのもの[3]。

例 10: から へ

等比級数の を に替えます。

はこの原始関数で、。項ごとに積分すると奇数次だけが残り、奇関数の形になる[1]。

では になる。ただし第 項までのずれが 程度までしか下がらず、円周率の計算には向きません。

のマクローリン展開で、 の係数はどれですか。

__RESULT__

、。 は と から集まり、 になります。

剰余の 2 つの書き方

での様子だけが必要なときは、ペアノの剰余で書く。

は、 で割ると へ近づく部分を指します。次の係数まで分かっているなら とも書け、 のほうは の定数倍で押さえられることまで言う。

極限の値を知りたいだけならペアノで足りる。区間全体で誤差を見積もるときは、例 8 のようにラグランジュの剰余へ切りかえます[1]。

どこまで展開すれば足りるか

極限を求める分母と同じ次数まで
数値で近似する剰余が目標の精度を下回るまで

極限では、分母より高い次数の項は割ったあとに へ近づくため、答えに関わらない[1]。数値のほうは剰余項から逆算します。交代級数なら、打ち切った先の 1 項の大きさで足りることが多い。

級数がもとの関数に戻らない例

()、 と決めます。原点での導関数は、階数をいくつにしても になる。 で がどんな多項式より速く へ近づくからです。

したがってマクローリン級数は恒等的に 。ところが では で、級数と関数が一致しません。

無限回微分できることと、テイラー級数がもとの関数に収束することは別の条件。後者を満たす関数を解析的といい、実数の上には、どの 1 点でも解析的にならない無限回微分可能な関数まであります[4]。

代入・積・商・項別積分のどれをあてるかは、関数の形で決まる。定義どおりの微分へ戻るのは、 のように、どの手も通らない関数を調べるときです。

出典

Développements limités - Exo7, cours de mathématiques
NIST Digital Library of Mathematical Functions, §4.19 Maclaurin Series and Laurent Series
NIST Digital Library of Mathematical Functions, §7.6 Series Expansions
Analytic function - Encyclopedia of Mathematics
$e^{-x^2}$ を 6 回微分しなくても、$e^u$ の展開に $u = -x^2$ をいれれば係数は書けます。指数・正弦・余弦・対数・二項の 5 つを出発点にして、積で $e^x\sin x$、係数を比べる割り算で $\tan x$、中心をずらして $\log x$ と $\cos x$ を組み立てる。展開をどこで打ち切るかは用途しだいで、極限なら分母と同じ次数まで、$\sqrt{1.1}$ や $\int_0^1 e^{-x^2}dx$ の数値なら剰余が目標の精度を下回るまで。無限回微分できることと、級数がもとの関数に収束することは別で、$e^{-1/x^2}$ がその例になります。