覚えるのは 5 つだけ、あとは代入と積|テイラー展開の計算問題
を 回微分して係数を出す手はあります。ただし の展開に を代入すれば、同じ答えが 行で出る。
テイラー展開の計算では、定義どおりに微分する場面はほとんどありません。既知の展開を つ覚え、代入・積・商・積分で組み合わせる。これが実際の手順です[1]。
以下は 問です。代入と積から始め、剰余項による誤差の評価、級数による定積分の近似、テイラー級数がもとの関数に一致しない例まで並べました。
覚えておく 5 つ
どれも のまわりの展開で、右端が収束域です[1]。
| 指数関数 | (すべての ) |
| 正弦 | (すべての ) |
| 余弦 | (すべての ) |
| 対数 | () |
| 二項 | () |
幾何級数 は、二項の の場合です。この つから対数も逆正接も出ます。
問題 1:代入で済ませる
のマクローリン展開を の項まで求めよ。
解答 1
の展開に を入れます。
回微分する必要はありません。 が の多項式で なら、この代入がいつでも使えます。
問題 2:積を計算する
を の項まで求めよ。
解答 2
必要な次数まで両方を書き出し、掛けて次数ごとに集めます。
の係数は で消えます。 は です。
まで欲しいなら、両方を まで用意すれば足ります。それより高い項は掛けても 以上にしかならない。
問題 3:商を計算する
を の項まで求めよ。
解答 3
を、係数を未知数に置いて割り算します。 と置く。
奇関数なので偶数次は出ません。 の形で係数を比べます。
から 、 から で です。 から が出る。
で試すと、部分和が 、真の値が です。
問題 4:中心が 0 でない展開
の のまわりの展開を求めよ。
解答 4
と置くと になり、覚えた展開に落ちます。
階微分は で、 では です。 で割ると係数の になります。
収束するのは です。 では交代級数として収束し、和は になる。
問題 5:三角関数を別の点で展開する
の のまわりの展開を 次まで求め、 で試せ。
解答 5
での値を順に出します。、、、 です。
では で、真の値 と小数第 位まで合います。 が ほどしかないので、 次で十分な精度が出る。
問題 6:合成関数
を の項まで求めよ。
解答 6
に を入れるだけです。
次数が 倍に伸びるので、 までなら を まで用意すれば足ります。
問題 7:極限に使う
を求めよ。
解答 7
分子を展開すると、 と が消えて が最低次になります。
で割ると括弧の中が残り、極限は です。
ロピタルの定理なら 回微分することになります。分母の次数が上がるほど、展開のほうが手数で有利です。
問題 8:高い次数の極限
を求めよ。
解答 8
問題 の結果を使います。 です。
で割れば が残ります。ロピタルなら 回微分が要り、 の高階導関数を扱うことになる。
問題 9:近似値を出す
を 次の項まで使って求め、真の値と比べよ。
解答 9
二項展開で 、 とします。
代入すると です。真の値は で、小数第 位まで合っています。
交代級数なので、次の項の大きさが誤差の目安になります。 次の項は 台で、実際の誤差もその程度です。
問題 10:剰余項で誤差を押さえる
を 次で打ち切ったとき、 での誤差を評価せよ。
解答 10
ラグランジュの剰余を使います。 次で打ち切ったとき、 と のあいだのどこかに があって次が成り立つ[1]。
の 次の項は なので、 ととれます。 階導関数は で、絶対値は 以下です。
での実際の誤差は でした。評価がほぼそのまま出ています。
問題 11:定積分を級数で近似する
を、級数を項別に積分して小数第 位まで求めよ。
解答 11
の原始関数は初等関数で書けません。展開してから項ごとに積分します。
部分和を並べると 、、、、、、 と挟み込んでいきます。
真の値は です。 項で小数第 位まで合いました。
交代級数なので、部分和は真の値を上下からはさみます。次の項の大きさが誤差の上からの押さえになる。
問題 12:偶関数と奇関数を見分ける
を展開し、そこから の展開を出せ。
解答 12
幾何級数に を入れます。
はこの原始関数で、 です。項別に積分します。
奇関数なので奇数次だけが残りました。 を入れるとライプニッツの級数になり、 に収束します。
問題 13:ペアノの剰余と記号の使い分け
の での挙動を、剰余の記号で書け。
解答 13
の展開から、残るのは 次以上です。
ペアノの剰余は「 で に行く関数を掛けた形」で、局所的な情報だけを言います[1]。ラグランジュの剰余は具体的な を出すので、区間全体での誤差を押さえるときに使う。
極限を出すだけならペアノで足ります。数値の保証が要るときはラグランジュに切りかえます。
問題 14:級数がもとの関数に戻らない例
()、 のマクローリン級数を求めよ。
解答 14
原点での導関数を順に計算すると、すべて になります。 が でどんな多項式より速く へ行くからです。
したがってマクローリン級数は恒等的に です。ところが では で、級数と関数が一致しません[1]。
無限回微分できることと、テイラー級数が関数に収束することは別の条件です。後者を満たす関数を解析的といいます。

打ち切る次数の決め方
必要な次数は、何に使うかで決まります。
極限を出す
分母の次数まで
数値を出す
剰余が目標精度を下回るまで
極限では、分母と同じ次数まで分子を展開すれば足ります。それより先は割ったあとに へ行く。
数値では剰余項から逆算します。交代級数なら次の項の大きさで足りることが多い。
よくある誤り
覚えるのは つ、あとは代入と積と積分。この形に持ち込めれば、たいていの展開は数行で終わります。
のマクローリン展開で、 の係数はどれですか。
参考文献
[1] がテイラーの定理・ラグランジュとペアノの剰余・主要な展開と収束域・解析的でない例、[2] がドイツ語での定式化、[3] が正接の展開とベルヌーイ数との関係、[4] が二項級数、[5] が誤差関数と の積分です。











sinx=x−6x3、1−x1=1+x+x2+⋯ です。x3 は x⋅x2 と (−6x3)⋅1 から出て、1−61=65 になります。