曲線を y = f(x) に直さずに微分する(陰関数定理の計算問題)
を について解こうとすると、 次方程式の解の公式が出てきます。それでも接線の傾きは、両辺を微分するだけで 行で出る。
解いてから微分するのではなく、解けることだけを保証してもらって微分する。これが陰関数定理の使い方です[1]。
以下は 問です。円の 階と 階から始め、接線、多変数、連立、定理が使えない点まで並べました。
陰関数定理が保証すること
が 級で、点 で かつ とします[1]。
このとき のある近傍でただ つの 級関数 が定まり、 と を満たします。
微分は連鎖律から出ます。 の両辺を で微分して整理する。
という仮定が、この割り算をしてよい根拠です。仮定が崩れる点では公式も止まります。
問題 1:円の 1 階微分
で定まる について、 を求めよ。点 での値も出せ。
解答 1
両辺を で微分します。 は の関数なので、 には連鎖律が掛かる。
点 では です。半径と接線が直交することが、この式に出ています。
原点から点へ向かうベクトルの傾きが で、接線の傾きがその負の逆数になっている。
問題 2:円の 2 階微分
同じ円について を求めよ。
解答 2
をもう一度微分します。商の微分で、分子の にまた が出る。
もとの式から なので、 とまとまります。点 では です。
の側では 階微分が負で、上に凸。円の上半分の形と合っています。
問題 3:デカルトの葉線の接線
の点 における接線を求めよ。
解答 3
まず点が曲線上にあることを確かめます。 で、 に一致する。
両辺を微分します。右辺には積の微分が要ります。
を集めて割ると次の形です。
を入れると になります。接線は です。
問題 4:水平な接線
の上で、接線が水平になる点を求めよ。
解答 4
微分すると で、傾きは次のとおりです。
水平は分子が 、つまり です。もとの式に入れると になる。
から、点は と です。この楕円上では で が最大になり、 で最小になります。
問題 5:垂直な接線
同じ楕円で、接線が垂直になる点を求めよ。
解答 5
垂直は分母が 、つまり です。 から 。
点は と です。ここでは なので、陰関数定理は を の関数として保証しません。
そのかわり なので、役割を入れかえて を の関数として解けます。
垂直な接線は と書けば表せます。 が書けない点は、逆数のほうで扱う。

問題 6:3 変数の場合
で が の関数として定まるとき、 と を求めよ。
解答 6
公式の分母が に替わるだけです。他の変数は定数として扱います。
点 では と です。 の点、つまり楕円体の赤道では になり、この形では書けません。
問題 7:対数を含む式
で定まる について、点 での傾きを求めよ。
解答 7
点の確認から。 なら で です。
両辺を微分します。第 項は商の微分になる。
、 を入れると です。
について解いた式が書けなくても、 点での傾きは出ます。陰関数の扱いが効くのはこういう場面です。
問題 8:指数が変数の式
の点 における を求めよ。
解答 8
そのままでは微分しにくいので、両辺の対数をとります。
微分すると次の形です。
を集めます。
は で曲線上です。値は になります。
問題 9:陰関数の 1 次近似
の の近くで、 に対応する を 次近似で見積もれ。真の値と比べよ。
解答 9
傾きは でした。接線に乗せて見積もります。
真の値は です。誤差は ほどで、 階微分が負であるぶん接線が上に外れています。
問題 10:連立の陰関数
と が定める曲線上の点 で、 と を求めよ。
解答 10
まず点を確かめます。、 で両方とも満たす。
と について解けるかを、ヤコビ行列式で見ます[1]。
でないので解けます。 本を で微分して連立にする。
下の式から 。上に入れると となり、、 です。
未知の導関数が 個なので、式も 本要ります。連立の陰関数では、ヤコビ行列式が でないことが解ける条件です。
問題 11:定理が使えない交点
について、原点の近くで と解けるか判定せよ。
解答 11
で、原点では です。仮定が満たされないので、定理からは何も言えません。
実際に解いてみると と の 本になります。原点の近くでは つの に つの が対応するので、関数になりません。
定理は必要十分ではない点に注意が要ります。 でも解ける場合はある。 が例で、原点で ですが と解けます。
ただし は原点で微分できません。 級という結論のほうが崩れています。

問題 12:円の端点
の点 で、 を の関数として解けるか判定せよ。
解答 12
なので、定理は使えません。実際、 が を少しでも超えると点がなくなります。
役割を入れかえると解けます。 なので、 が定まる。
では です。曲線としては何も特別なことは起きておらず、 を主役にしたことだけが問題でした。
交点の場合と違い、こちらは座標の選び方の問題です。 つを区別して扱います。
問題 13:陰関数定理から逆関数定理を出す
が 級で のとき、逆関数が局所的に存在することを陰関数定理から導け。
解答 13
と置きます。変数の順を入れかえて、 を従属変数と見る。
は 級で、 です。 についての偏微分は で、 で ではありません。
陰関数定理より、 の近くでただ つの 級関数 が定まり、 を満たします。これが逆関数です。
微分も公式から出ます。
逆関数定理と陰関数定理はたがいに導き合えます。どちらを先に置くかは教科書によって違う。
問題 14:2 階微分を一般の形で
で定まる について、 を の偏微分で表せ。
解答 14
をもう一度微分します。 と はどちらも と の関数なので、連鎖律が両方に掛かる。
商の微分に入れて を代入し、分母を払うと次の形にまとまります。
円で確かめます。、 なので、分子は です。
分母は なので、 になり、問題 の答えと一致します。
つまずきやすいところ
計算そのものより、どこで公式が止まるかの判断で誤ります。
は の関数なので、 の微分は です。連鎖律を落とすと が出てきません。
割り算が止まります。役割を入れかえて を見るか、そもそも解けないかを見分けます。
は を使えば まで簡単になります。
でも解ける場合はあります。定理が言うのは十分条件だけです。
どれも という式そのものに戻れば判断がつきます。式を見ずに公式だけ当てると外します。
の上で、陰関数定理が を保証しない点はどれですか。
- と
- と
- 原点
よくある誤り
微分するだけなら解く必要はない。この一点が陰関数の扱いの中身で、あとは連鎖律を落とさないことだけです。
参考文献
[1] が定理の主張・ヤコビ行列による導関数の公式・円と交差する曲線の例、[2] がドイツ語での定式化、[3] がフランス語での記述と逆関数定理との関係、[4] がデカルトの葉線の媒介変数表示、[5] が逆関数定理です。











Fy=x+2y が 0 になる点です。x=−2y ともとの式から (−2,1) と (2,−1) が出ます。前者は接線が水平になる点で、原点はそもそも曲線上にありません。