逆関数定理の計算問題を通じて、逆写像の微分とヤコビ行列の関係を身につける。
問題1:1変数の逆関数の微分
f(x)=x+ex の逆関数 f−1 について、(f−1)′(1) を求めよ。
解答1
f(0)=0+e0=1 なので f−1(1)=0。
逆関数の微分公式 (f−1)′(y)=f′(f−1(y))1 より
f′(x)=1+ex なので f′(0)=2。
(f−1)′(1)=f′(0)1=21
問題2:逆関数定理の適用条件
f(x)=x3 について、x=0 の近傍で逆関数定理は適用できるか。
解答2
f′(x)=3x2 であり、f′(0)=0。
逆関数定理は f′(a)=0 を要求するため、x=0 では適用できない。
実際、f(x)=x3 は全射かつ単射で逆関数 f−1(y)=y1/3 が存在するが、(f−1)′(0)=limy→0yy1/3 は発散し、f−1 は y=0 で微分不可能。
問題3:2変数の極座標変換
F(r,θ)=(rcosθ,rsinθ) のヤコビ行列とヤコビアンを求めよ。また、逆写像の微分を求めよ。
解答3
x=rcosθ, y=rsinθ のヤコビ行列は
JF=(∂r∂x∂r∂y∂θ∂x∂θ∂y)=(cosθsinθ−rsinθrcosθ)
ヤコビアンは detJF=rcos2θ+rsin2θ=r。
r=0 で逆行列が存在し
JF−1=r1(rcosθ−sinθrsinθcosθ)=(cosθ−sinθ/rsinθcosθ/r)
これは ∂x∂r=cosθ=rx 等と一致する。
問題4:逆写像の存在
F(x,y)=(x2−y2,2xy) について、点 (1,1) の近傍で逆写像が存在するか判定せよ。
解答4
ヤコビ行列は
JF=(2x2y−2y2x)
(1,1) で
JF(1,1)=(22−22),detJF=4+4=8=0
逆関数定理より、(1,1) の近傍で局所的に逆写像が存在する。
F(1,1)=(0,2) なので、(0,2) の近傍で逆写像が定義される。
この F は複素関数 w=z2(z=x+iy, w=u+iv)に対応する。
問題5:ヤコビアンがゼロになる点
F(x,y)=(x2−y2,2xy) でヤコビアンがゼロになる点を求め、その点での振る舞いを調べよ。
解答5
detJF=4x2+4y2=4(x2+y2)=0 となるのは原点 (0,0) のみ。
原点で F(0,0)=(0,0)。逆関数定理は適用できない。
実際、w=z2 では z と −z が同じ w に移るため、原点の近傍で逆写像は一価にならない。w=0 の近傍では、z=±w と2つの分岐が生じる。
問題6:3変数の場合
F(u,v,w)=(uv,vw,wu) のヤコビ行列を求め、点 (1,1,1) で逆写像が存在するか判定せよ。
解答6
JF=v0wuw00vu
(1,1,1) で
JF=101110011
行列式を計算:detJF=1(1−0)−1(0−1)+0=1+1=2=0
逆関数定理より、(1,1,1) の近傍で局所的に逆写像が存在する。
問題7:具体的な逆写像の微分
F(x,y)=(excosy,exsiny) の点 (0,0) におけるヤコビ行列の逆行列を求めよ。
解答7
JF=(excosyexsiny−exsinyexcosy)
(0,0) で JF=(1001)=I。
したがって JF−1=I。
この F は複素指数関数 w=ez に対応し、(0,0) では ez の微分が e0=1 であることを反映している。