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English

n を大きくすると何が残るか〜数列の極限の計算問題

の極限は です。 で割れば も消え、最高次の係数だけが残る。

数列の極限の計算は、消える項と残る項を見分ける作業です。手は限られていて、割る・有理化する・はさむ・単調性を言う、の つでほとんど片づきます[1]

以下は 問です。有理式から始め、根号の差、 の形、階乗、漸化式、リーマン和、部分列まで並べました。

4 つの手

順に試す形になります。

最高次で割る

有理化して差を分数に直す

上下からはさむ

単調で有界なら極限の存在を言う

つ目は値を出さずに存在だけを言う手です。単調で有界なら収束する、という定理を使います[1]

存在が分かってから漸化式に極限を代入すると、値が出ます。順序を逆にすると、存在しないものに式を当てることになる。

問題 1:有理式

を求めよ。

解答 1

分母分子を で割ります。

分母と分子の次数が同じなら、最高次の係数の比になります。分子の次数が低ければ 、高ければ発散です。

問題 2:根号の差

を求めよ。

解答 2

の形なので、そのままでは判断できません。有理化します。

差を分数に直すと、問題 の形に落ちます。根号の差が出たら有理化、が型です。

問題 3:e の形

を求めよ。

解答 3

を使います[1] と置きます。

となり、 に近づいています。

の形は不定形です。底が に近づく速さと指数の伸びの兼ね合いで決まります。

問題 4:階乗とべき

を求めよ。

解答 4

分子分母を項ごとに並べます。

つ目以降はすべて 以下です。最初の因子だけ残して押さえます。

はさみうちで です。 のほうが より速く伸びる、と言いかえられます。

問題 5:単調有界を書き切る

の極限を求めよ。

解答 5

先に存在を示します。上に有界であることを帰納法で言います。

です。 なら になります。

次に単調増加を示します。 で、 なら正です。

単調増加で上に有界なので収束します[1]。極限を と置いて漸化式に入れます。

で、 から です。実際に 回反復すると になります。

存在を示さずに代入すると、収束しない数列にも値が出てしまいます。順序が要です。

問題 6:ε-N 論法

を定義から示せ。

解答 6

任意の に対し、 より大きい整数にとります[1]

なら次が成り立ちます。

に応じて選べる、という順序が定義の中身です。 を小さくするほど は大きくなります。

問題 7:n 乗根

を示せ。

解答 7

と置きます。 です。

両辺を 乗し、二項展開の第 項だけを残して下から押さえます。

整理すると で、 です。

になります。 乗根はどんな多項式でも に行く、が結論です。

問題 8:リーマン和に見る

を求めよ。

解答 8

各項を でくくります。

等分したリーマン和です。

となり、 に近づきます。

和が で書けたら、積分に化けます。項ごとに極限をとると になってしまう点に注意します。

問題 9:スターリングを使う

を求めよ。

解答 9

スターリングの近似 を使います[2]

乗根をとると、根号の因子は に行きます。

となり、 に近づいています。

対数をとって平均に直す手もあります。 に行く形です。

問題 10:無限積

が収束することを示せ。

解答 10

対数をとって和に直します。

なので、和は で上から押さえられます。

この級数は収束するので、対数の側が有界です。単調増加でもあるので収束します。

値は です。数値計算でも まで一致します。

問題 11:コーシー列

がコーシー列であることを示せ。

解答 11

として差を評価します。 を使います。

任意の に対し、 となる をとれば条件が満たされます。

実数は完備なので収束します[1]。極限は です。

極限の値を知らないまま収束が言えるところが、コーシー列の使いどころになります。

問題 12:チェザロ平均

のとき、平均 に収束することを示せ。

解答 12

の場合に帰着できます。 を考えればよいからです。

に対し、 となる をとります。

和を つに割ります。前半は項数が で固定なので、 で割れば に行く。後半は各項が 未満です。

を十分大きくとれば全体が 未満になります。

逆は成り立ちません。 は収束しませんが、平均は に行きます。

問題 13:部分列で割れる

が収束しないことを示せ。

解答 13

偶数番目だけとると です。奇数番目は に行きます。

収束する数列は、どの部分列も同じ値に収束します。 つの部分列が違う値に行くので、全体は収束しない。

有界ではあるので、収束する部分列は存在します。集積点が つある形です。

問題 14:有理数の範囲では極限が外へ出る

の極限を求め、有理数列であることを確かめよ。

解答 14

各項は有理数です。有理数を割ったり足したりしても有理数のままだからです。

極限を と置くと で、 になります。

で、有理数ではありません。有理数の数列が有理数でない値に収束しています。

有理数の範囲では「収束する数列の極限がその中にある」とは限りません。実数の完備性が効くのは、まさにこの点です[1]

問題 15:項ごとの極限で誤る例

を、項ごとに極限をとって求めるとどうなるか。

解答 15

各項は です。項ごとに極限をとると、 を足しているように見えます。

ところが実際の和は で、極限も です。

項数が とともに増えることが原因です。有限個の和なら項ごとに極限をとれますが、項数が動くときは使えません。

問題 でリーマン和として扱ったのも同じ事情です。項数と項の大きさの両方が動く和は、まとめて評価します。

つまずきやすいところ

手の順序と、極限の交換で誤ります。

存在を示す前に漸化式へ代入する

収束しない数列にも値が出ます。単調有界を先に言います。

項数が動く和で項ごとに極限をとる

リーマン和に化ける場合があります。まとめて評価します。

をそのまま判断する

有理化して分数に直します。差のままでは決まりません。

とする

不定形です。底の近づく速さと指数の伸びの兼ね合いで決まります。

まず不定形かどうかを見分け、次に つの手を順に当てる。当たらなければ、はさむか単調性へ回します。

はどれですか。

__RESULT__

有理化すると です。分母分子を で割ると になります。

よくある誤り

極限の存在を示さずに漸化式へ代入する。単調有界を先に言います。
項数が動く和で項ごとに極限をとる。リーマン和になる場合があります。
とする。有理化して分数に直してから判断します。
とする。不定形で、 の形になることがあります。
部分列が収束すれば全体も収束すると思う。 つの部分列が割れれば発散です。
有理数列の極限が有理数だと思う。完備性が効くのはこの点です。
より大きいまま止まると思う。 に収束します。

消える項と残る項を見分ける。それが数列の極限の計算のほとんどです。

参考文献

[1] が数列の極限の定義・単調収束定理・はさみうち・コーシー列と完備性・ の定義、[2] がスターリングの近似、[3] がドイツ語での定式化、[4] がリーマン和と定積分、[5] がチェザロ総和です。

Limit of a sequence - Wikipedia
Stirling's approximation - Wikipedia
Grenzwert (Folge) - Wikipedia)
Riemann sum - Wikipedia
Cesàro summation - Wikipedia
$\dfrac{n^2+3n+1}{2n^2-n+4}$ を $n^2$ で割れば $3n$ も $4$ も消え、最高次の係数だけが残ります。手は $4$ つで、割る・有理化する・はさむ・単調有界を言う。$15$ 問で、$\infty-\infty$ を有理化で分数に直す型、$1^{\infty}$ が $e$ になる形、$\sqrt[n]{n}\to1$ の二項展開による証明を扱いました。$a_{n+1}=\sqrt{2+a_n}$ では存在を先に示してから値を出します。項数が動く和がリーマン和に化けて $\dfrac{\pi}{4}$ になる例、有理数列の極限が $\sqrt2$ になる完備性の話まで。