微分の基本計算で落ちるのは連鎖律のいちばん内側の因子
を微分すると、外側から 回ぶんの因子が掛かります。落としやすいのは真ん中の ではなく、いちばん内側の のほう。
微分の計算で誤るところは決まっています。連鎖律の内側を落とす、対数微分法で を掛け戻し忘れる、媒介変数で 階微分の分母を間違える。この つです[1]。
以下は 問です。連鎖律から始め、積と商、対数微分法、媒介変数表示、逆関数の微分、微分できない点まで並べました。
3 つの規則
覚えるのは つで、あとは組み合わせです。
| 連鎖律 | 。外側を微分して内側の微分を掛ける |
| 積 | 。 つなら つずつ微分して足す |
| 商 | 。分子の順序を入れかえない |
連鎖律をライプニッツの記法で書くと、分数の約分のように見えます[1]。実際には約分ではありませんが、 段でも 段でも同じ形で伸びる。
問題 1:合成関数
を微分せよ。
解答 1
外側が 、内側が です。
内側の微分 を掛けるところが連鎖律です。 で止めると誤りになります。
問題 2:3 段の合成
を微分せよ。
解答 2
外から順に微分し、すべて掛けます。
段の数だけ因子が並びます。 段でも 段でも、内側へ進むごとに つ増えるだけです。
問題 3:3 つの積
を微分せよ。
解答 3
つの積では、 つずつ微分して足します。
共通因子でくくると見やすくなります。
個の積なら 項です。項数が増えるときは、次の問題の対数微分法へ切りかえます。
問題 4:商
を微分せよ。
解答 4
商の公式に入れます。分子の順序に注意します。
でくくると括弧の中が になり、大きく簡単になりました。展開してから整理するより、くくるほうが速い。
問題 5:対数微分法の基本
()を微分せよ。
解答 5
底も指数も なので、べき関数の公式も指数関数の公式も使えません。両辺の対数をとります[2]。
両辺を微分します。左辺には連鎖律が掛かり、 になる。
最後に を掛け戻すのを忘れないところが要です。 で止めると答えになりません。
問題 6:対数微分法で積を分ける
()を微分せよ。
解答 6
対数をとると、積と商が和と差になります[2]。
微分すると、各項が の形になる。
商の公式を直接使うと、分母が まで膨らみます。因子が つ以上なら対数微分法のほうが速い。
問題 7:媒介変数表示
、 について を求めよ。
解答 7
半径 の円が転がる軌跡、サイクロイドです[3]。
での微分を先に出します。
割り算で が消えます。
半角の公式で整理すると です[3]。 で発散し、そこが尖点にあたります。

問題 8:媒介変数の 2 階微分
問題 の曲線について を求めよ。
解答 8
をもう一度 で微分し、それを で割ります。
分子を計算します。
で割って次を得ます。
分母で割るのを忘れると で止まります。 階微分でいちばん多い誤りです。
問題 9:逆三角関数
を微分せよ。
解答 9
と置きます。商の微分で です。
分母を展開すると になり、 が約分されます。
答えが の微分の符号違いになりました。実際 では です。
問題 10:逆双曲線関数
を微分せよ。
解答 10
対数の中を と置きます。 です。
分子と分母で が約分されます。この関数は で、導関数はいまの形です[4]。
問題 11:逆関数の微分
の逆関数について を求めよ。
解答 11
なので です。
で になります。
の式は 次方程式を解くことになり書けません。それでも 点での微分は出ます。
問題 12:絶対値を含む関数
が で微分可能かを調べ、導関数を求めよ。
解答 12
定義から差分商を見ます。
で微分できます。 では で 、 では で です。
まとめると になります。 階は微分できますが、 は で微分できません。
そのものは で微分できません。左右の差分商が と に分かれるからです。
問題 13:微分できるのに導関数が連続でない
()、 の導関数を求め、 での連続性を調べよ。
解答 13
原点では差分商が で、 に収束します。 です。
では積と連鎖律を使います。
で第 項は に行きますが、第 項は と のあいだを振動します。極限がありません。
は原点で定義されているのに連続でない。微分可能性と導関数の連続性は別の条件です。

問題 14:高階微分の一般項
の 階導関数を求めよ。
解答 14
階から順に出します。、、 です。
規則が見えました。微分するたびに指数が 下がり、その絶対値が係数に掛かる。
内側の微分 と、外側から出る負号が打ち消し合うので、符号はつねに正です。
を入れると で、マクローリン係数は になります。 の展開が等比級数であることと合っています。
問題 15:ライプニッツの公式
の 階導関数を求めよ。
解答 15
積の高階微分には二項係数が出ます。
は 階以上で になるので、和は 項で止まります。
で 、 で です。直接 回微分した結果と合います。
多項式と指数の積では、この公式が効きます。片方が有限回で消えるからです。
つまずきやすいところ
計算そのものより、規則の当て方で誤ります。
の微分は ではなく です。段の数だけ因子が並びます。
出るのは です。最後にもとの を掛けます。
で微分したあと で割ります。分母が 乗になるのはそのためです。
です。逆にすると符号が反転します。
規則を当てる前に、どの形かを見分ける。合成なのか積なのか、それだけ決まれば手は自動的に決まります。
の導関数はどれですか。
よくある誤り
どの規則を当てるかは、式の形だけで決まる。そこを見分けてから手を動かせば、あとは代入です。
参考文献
[1] が連鎖律とライプニッツ記法での書き方、[2] が対数微分法と積を和に直す仕組み、[3] がサイクロイドの媒介変数表示・尖点・弧長と面積、[4] が逆双曲線関数の対数表示と導関数、[5] がライプニッツの公式と高階微分です。












底も指数も x を含むので、対数微分法を使います。lny=xlnsinx を微分すると yy′=lnsinx+x⋅sinxcosx です。最後に y を掛け戻します。