平均値の定理の応用問題|不等式・単調性・リプシッツ条件・反例
平均値の定理は、区間の両端を結ぶ弦と同じ傾きを持つ接線が内部に必ずある、という主張である。
が で連続、 で微分可能なら、ある が存在して次が成り立つ。
の存在だけが言えて、位置は分からない。この形のまま を上下から押さえるのが、不等式の証明の基本の型である。
<svg viewBox="0 0 460 240" width="100%" style="max-width:460px;display:block;margin:0 auto">
<line x1="60" y1="210" x2="400" y2="210" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<line x1="80" y1="190" x2="380" y2="80" stroke="#9a9a9a" stroke-width="1" stroke-dasharray="5 3"></line>
<line x1="160" y1="150" x2="350" y2="81" stroke="#d0562a" stroke-width="1.5"></line>
<polyline points="80,190 120,178 160,160 200,140 240,122 280,108 320,96 380,80" fill="none" stroke="#1f1f1f" stroke-width="2"></polyline>
<line x1="245" y1="119" x2="245" y2="210" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1" stroke-dasharray="4 3"></line>
<circle cx="80" cy="190" r="3" fill="#1f1f1f"></circle>
<circle cx="380" cy="80" r="3" fill="#1f1f1f"></circle>
<circle cx="245" cy="119" r="3" fill="#d0562a"></circle>
<text x="55" y="30" font-size="11" fill="#1f1f1f">弦と平行な接線が、区間の内部に必ずある</text>
<text x="76" y="228" font-size="11" fill="#9a9a9a">a</text>
<text x="241" y="228" font-size="11" fill="#d0562a">c</text>
<text x="376" y="228" font-size="11" fill="#9a9a9a">b</text>
<text x="288" y="62" font-size="11" fill="#9a9a9a">弦</text>
<text x="356" y="98" font-size="11" fill="#d0562a">接線</text>
</svg>問題 1:対数の上からの評価
のとき を示せ。
解答 1
に区間 で平均値の定理を適用する。、 である。
より なので である。両辺に を掛けて を得る。
の位置は分からないが、 という一言だけで評価が済んでいる。
問題 2:対数の両側からの評価
のとき を示せ。
解答 2
上からの評価は問題 1 で済んでいる。下からの評価も同じ式から出る。
より なので である。
を使う。 の値を区間の左端の値で押さえる。
を使う。 の値を区間の右端の値で押さえる。
同じ に対して 2 つの不等式を当てるだけで、両側の評価が同時に手に入る。 が単調なときはいつでもこの型が使える。
問題 3:正弦関数の評価
のとき を示せ。
解答 3
に区間 で平均値の定理を適用する。
のときは なので であり、 が従う。
のときは なので、平均値の定理を使うまでもない。
場合分けが要るのは、 を保証するために の範囲を押さえる必要があるからである。 の位置が分からない以上、区間全体で が 1 未満になる範囲に限るしかない。
問題 4:指数関数の評価
のとき を示せ。
解答 4
に区間 で平均値の定理を適用する。
より なので、 が従う。
のときも同じ不等式が成り立つ。 から となり、 で割るときに不等号が逆転して同じ向きに戻る。
問題 5:逆正接関数の両側評価
のとき を示せ。
解答 5
に区間 で平均値の定理を適用する。
より である。逆数を取ると不等号が反転する。
各辺に を掛ければ結論が出る。、 とすれば で、実際に成り立っている。
問題 6:平方根の差の評価
のとき を示せ。
解答 6
に区間 で平均値の定理を適用する。 である。
は増加するので となり、逆数を取って各辺に を掛ければよい。
、 とすると が得られる。真の値は で、上下からよく挟まれている。
平方根の近似値を手で求めるときの標準的な道具である。
問題 7: 乗根の差の評価
のとき を示せ。
解答 7
に区間 で平均値の定理を適用する。
では なので、 は狭義単調減少である。 から次が従う。
を除いてあるのは、そこで等号になるからである。 となって が成り立ち、実際に左辺も右辺も 1 になる。
指数が負であることが評価の要になっている。仮定の範囲を書くときは、こうした境目を確かめる。
問題 8:双曲線正接の評価
のとき を示せ。
解答 8
に区間 で平均値の定理を適用する。 であり、導関数は である。
では なので である。したがって が成り立つ。
と同じ形の議論である。 で値も傾きも一致し、そこから先で傾きが 1 を下回る関数は、すべて同じ型で押さえられる。
問題 9:リプシッツ条件
が区間で微分可能で を満たすとき、 を示せ。
解答 9
とし、小さいほうを左端にして平均値の定理を適用する。ある が両者のあいだにあって次が成り立つ。
絶対値を取れば となる。 のときは両辺が 0 で成り立つ。
これがリプシッツ連続性である。導関数が有界という局所的な条件から、任意の 2 点の関係が出るところに定理の働きがある。
問題 10:導関数が 0 なら定数
区間 で ならば は 上で定数であることを示せ。
解答 10
の任意の 2 点 を取る。平均値の定理からある で次が成り立つ。
したがって であり、 は定数である。
定義域が区間であることが要る。 のように離れた 2 つの区間では、それぞれ別の定数を取る関数が反例になる。
平均値の定理は 2 点を区間で結べるときにしか使えない。この仮定は落とせない。
問題 11:導関数が一致すれば差は定数
区間 で ならば、 は定数であることを示せ。
解答 11
と置くと である。前問により は定数である。
導関数が 0 なら定数
導関数が一致すれば差は定数
原始関数は定数の差を除いて一つに決まる
不定積分に積分定数が付く理由がこれである。同じ導関数を持つ関数がほかにないことは、平均値の定理から出ている。
問題 12:単調性の判定
区間 で ならば は 上で狭義単調増加であることを示せ。
解答 12
を の点とする。平均値の定理からある で である。
と から が従う。
逆は成り立たない。 は狭義単調増加だが である。 は十分条件であって必要条件ではない。
問題 13:コーシーの平均値の定理
が で連続、 で微分可能とする。ある で が成り立つことを示し、 のとき となる があることを導け。
解答 13
次の関数を用意する。
と を計算すると、どちらも になって一致する。ロルの定理からある で となり、これが主張の式である。
、 を取る。、 である。
より なので、両辺を で割って整理すると を得る。
、 では となり、たしかに区間の内部にある。
問題 14:指数関数の平均の不等式
のとき を示せ。
解答 14
、 と置く。、 である。
で割れるので、示すべきは である。
と置くと で、導関数は次のようになる。
では なので である。問題 12 により は狭義単調増加なので、 が従う。
平均値の定理から となる が取れるので、この不等式は と読める。
ただし の位置が分からない以上、 を端点の値の平均と直接比べることはできない。凸関数だからという理由づけも通らない。実際 、 で を に近く取れば は を超える。
が特定の値であることを使わずに、両辺を直接比べる形へ書き換えるのがこの問題の要点である。
問題 15: を具体的に求める
について、区間 で平均値の定理を満たす を求めよ。、 ではどうか。
解答 15
であり、 なので である。区間の中点になる。
、 では より である。中点ではない。
中点になるのは 2 次以下の多項式に限られる。中点を当てにした議論はここで破綻する。
問題 16: の位置の極限
について、区間 の を の式で表し、 での の極限を求めよ。
解答 16
より である。
なので、 を使う。
したがって である。 で数値を出すと となり、これと合う。
区間を縮めれば は中点に近づく。ただしこれは極限の話であって、有限の区間では中点からずれている。
問題 17:仮定を落とすと成り立たない
を区間 で考え、平均値の定理の結論が成り立たないことを確かめよ。
解答 17
なので、弦の傾きは 0 である。結論が成り立つなら となる があるはずである。
ところが ()、()で、 では微分できない。傾きが 0 になる点はどこにもない。
<svg viewBox="0 0 460 220" width="100%" style="max-width:460px;display:block;margin:0 auto">
<line x1="100" y1="170" x2="360" y2="170" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<line x1="230" y1="60" x2="230" y2="190" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<line x1="130" y1="90" x2="330" y2="90" stroke="#d0562a" stroke-width="1.5" stroke-dasharray="5 3"></line>
<polyline points="130,90 230,170 330,90" fill="none" stroke="#1f1f1f" stroke-width="2"></polyline>
<circle cx="130" cy="90" r="3" fill="#1f1f1f"></circle>
<circle cx="330" cy="90" r="3" fill="#1f1f1f"></circle>
<text x="55" y="30" font-size="11" fill="#1f1f1f">弦は水平なのに、傾き 0 の接線はどこにもない</text>
<text x="336" y="86" font-size="11" fill="#d0562a">弦</text>
<text x="55" y="204" font-size="11" fill="#9a9a9a">原点で微分できず、定理の仮定を満たしていない</text>
</svg>原因は で微分可能でないことにある。開区間の内部 1 点でも微分可能性が欠けると、結論は保証されない。
端点での連続性も落とせない。 で 、 と定めると、 では なのに弦の傾きは 0 になる。
問題 18:ベクトル値関数では成り立たない
を で考え、平均値の定理が成り立たないことを確かめよ。
解答 18
である。結論が成り立つなら、ある で でなければならない。
ところが の長さは常に 1 で、0 になることはない。
各成分に別々の を取れば等式は作れるが、同じ で両成分をそろえることができない。等式としての平均値の定理は、実数値関数に限った主張である。
代わりに使えるのは不等式の形である。 なら が成り立ち、こちらはベクトル値でも正しい。
つまずきやすいところ
誤りの多くは、 に何かを期待するところから起きる。
存在するとしか言えない。中点だと思って進めると、2 次以下の多項式以外では誤る。
区間内の値が端点の平均より小さいとは限らない。凸関数でも成り立たない。
乗根の評価は で等号になる。狭義の不等式を主張するなら境目を除く。
要るのは開区間での微分可能性と閉区間での連続性である。端点では微分できなくてよい。
いずれも定理の主張に戻れば防げる。 について言えるのは「区間の内部にある」ことだけである。
が で連続、 で微分可能とする。平均値の定理の について正しいものはどれか。
- は区間の中点である
- はただ 1 つに定まる
- は開区間 の点であることしか言えない
- が凸なら は区間の左半分にある









f(x)=x2 では中点になるが、f(x)=x3、[0,1] では c=1/3 で中点ではない。c が複数ある関数もある。