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置換積分で迷うのは「どこを u と置くか」の一点だけ

で と置くのは、微分した が式の中にあるからです。 では がないので、同じ置換は使えません。

置換で迷うのは「どこを と置くか」の一点だけ。判断の材料は、 の微分が被積分関数の中に見えるかどうかです[1]。

以下は 問です。微分が見えている型から始め、三角置換、有理化、ワイエルシュトラス置換、定積分で範囲を変える手順、置換が使えない場合まで並べました。

置換を選ぶ 2 つの型

見分けは 通りしかありません。

内側を u と置く

の微分が式の中にある場合。 の形

外側を x と置く

根号を消したい場合。 のように を別の変数で書き直す

前者は素直な置換で、後者は逆向きの置換です。逆向きでは が単射であることが要ります[1]。

定積分では範囲も一緒に移します。移してしまえば に戻す必要はありません。

問題 1:微分が見えている型

を計算せよ。

解答 1

と置きます。 で、 が式の中にあります。

を戻して です。

が つ余分にあることが置換の合図でした。なければ次数が合わず、この手は使えません。

問題 2:三角関数の冪

を計算せよ。

解答 2

と置くと です。

が つ残っている形が目印です。奇数個あれば つを に使い、残りは に直します。

問題 3:対数が出る型

を計算せよ。

解答 3

分子が分母の微分の定数倍です。 で 。

の形なら答えは です。分母が 次でも 次でも同じ。

問題 4:a² − x² 型

を計算せよ。

解答 4

と置きます。 にとれば単射です[2]。

、 になります。

、 を戻します。

問題 5:a² + x² 型

を計算せよ。

解答 5

と置きます[2]。、 です。

答えは です。根号の中が和のときは正接、差のときは正弦、と対応しています。

問題 6:x² − a² 型

()を計算せよ。

解答 6

、 と置きます[2]。

、 です。

の範囲を切ったのは、 を確保して絶対値を外すためです。

問題 7:指数を含む

を計算せよ。

解答 7

と置くと で、分子がそのまま になります。

と見るところが要です。指数の を係数と見ると置換に気づけません。

問題 8:根号を有理化する

を計算せよ。

解答 8

と置きます。、 です。

分数式は割り算で 次と定数に分けます。 から までの定積分なら です。

問題 9:定積分で範囲を移す

を計算せよ。

解答 9

と置きます。 です。

範囲も移します。 で 、 で になる。

上下が入れかわった符号と、 の符号が打ち消し合いました。範囲を移せば に戻す手間がありません[1]。

問題 10:ワイエルシュトラス置換

を計算せよ。

解答 10

と置きます。三角関数の有理式が、 の有理式に変わります[3]。

代入して整理します。

から までの定積分は です。ただし で が発散するので、そこで区間を割って極限をとります[3]。

問題 11:置換が単射でない場合

を と置いて計算するとどうなるか。

解答 11

でも でも です。範囲を移すと になり、値が と出ます。

正しい値は で、合いません。 が で単射でないことが原因です[1]。

逆向きの置換では、 と が 対 に対応することが要ります。原点で切って にすれば、各区間で単射になり正しく出ます。

三角置換で の範囲を切るのも同じ理由です。範囲を書かずに置換すると、この落とし穴に落ちます。

問題 12:対称性で消す

を計算せよ。

解答 12

被積分関数は奇関数です。 で分子の符号が変わり、分母は変わりません。

の置換で、積分が自分自身の符号違いに等しくなります。したがって値は です。

原始関数を求めても出ますが、対称性を見れば計算が要りません。範囲が原点対称かどうかを先に見ます。

問題 13:範囲を折り返す

を求めよ。 は正の数とする。

解答 13

と置きます。範囲は から へ移り、向きが戻ります。

と が入れかわるので、次の積分になります。

置換で移った先なので です。一方 は被積分関数の和が になり、 に等しい。

によらず同じ値です。 でも でも数値計算で になります。

問題 14:置換のあと部分分数へ

を計算せよ。

解答 14

分母分子に を掛けます。

と置くと です。

分母が平方に因数分解できた時点で、置換の形が見えます。掛け算で形を整えてから置換する、という順序です。

問題 15:置換しても進まない場合

に置換が効かない理由を述べよ。

解答 15

と置くと ですが、式の中に がありません。 と書き直すと、根号が新しく出てきます。

もとより難しくなりました。この積分の原始関数は初等関数で書けないことが知られています。

置換は形を変える道具であって、書けないものを書けるようにはしません。手が止まったら、初等関数で書けるかどうかを疑います。

つまずきやすいところ

置換そのものより、周辺の処理で誤ります。

定積分で範囲を移し忘れる

の範囲に直すか、 に戻してから代入するかのどちらかです。混ぜると誤ります。

の置きかえを落とす

から を書き直します。 だけ替えて を残すと式が合いません。

三角置換で角の範囲を書かない

範囲を切らないと根号を外すときの符号が決まりません。

単射でない置換を使う

を原点をまたぐ区間で使うと、値が消えます。

を決めたら と範囲も同時に決める。 つを 組で動かせば、途中で食い違いません。

を で計算すると、 の範囲はどれですか。

  • から
  • から
  • から
__RESULT__

に対応するのは 、つまり です。積分の値もそのまま になります。

よくある誤り

定積分で範囲を移さずに で計算する。値が別のものになります。
を に書き直さない。 の因子が消えたままになります。
三角置換で角の範囲を決めない。根号を外すときの符号が定まりません。
単射でない置換を原点をまたぐ区間で使う。 が代表です。
ワイエルシュトラス置換で をまたぐ。そこで が発散します。
奇関数の対称性を見ずに原始関数を探す。範囲が原点対称なら です。
置換で解けない積分があることを忘れる。 の原始関数は初等関数で書けません。

の微分が式の中に見えるか。この 問に答えられれば、置換の型はその場で決まります。

参考文献

[1] が置換積分の規則・定積分での範囲の移し方・単射性の条件、[2] が つの三角置換と角の範囲、[3] がワイエルシュトラス置換の公式と での特異点、[4] がドイツ語での定式化、[5] が誤差関数と初等関数で書けない積分です。

Integration by substitution - Wikipedia
Trigonometric substitution - Wikipedia
Tangent half-angle substitution - Wikipedia
Integration durch Substitution - Wikipedia
Error function - Wikipedia
$\int x\sqrt{1-x^2}dx$ で $u=1-x^2$ と置けるのは、微分した $-2x$ が式の中にあるから。$x$ がない $\int\sqrt{1-x^2}dx$ では同じ手が使えず、逆向きに $x=2\sin\theta$ と置きます。$15$ 問で、この $2$ 通りの型、根号の符号で決まる三角置換、三角関数の有理式を $t=\tan\frac{x}{2}$ で有理関数に直す手順を扱いました。定積分で範囲を移す理由、$u=x^2$ が原点をまたぐと値が消える理由、対称性で計算せずに済む場合、置換しても書けない $e^{-x^2}$ まで並べています。