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分母を因数分解できれば必ず解ける、有理関数の積分

実数係数の多項式は、 次式と既約な 次式の積に必ず分解します[1]。分母をそこまで割れば、有理関数の積分はいつでも終わる。

出てくる形は つだけです。 から対数、 からべき、 から逆正接。答えはこの つの組み合わせになります。

以下は 問です。単純な分解から始め、重根、既約 次、仮分数、平方完成、 次の分母まで並べました。

分解の形

分母の因数によって、立てる項の形が決まります[1]。

次因子 を 項
次の重複
既約 次 を 項
既約 次の重複 乗から 乗まで、分子はすべて 次

分子の次数が分母以上なら、先に多項式の割り算をします[1]。真分数にしてからでないと分解できません。

問題 1:1 次因子が 2 つ

を計算せよ。

解答 1

と分けます。

通分して です。 を入れて 、 を入れて 。

分母が になる値を代入して係数を出す、が最短の手順です。

問題 2:分子に x がある

を計算せよ。

解答 2

と置きます。 で 、 で です。

分子の次数が分母より低ければ、分子が何であっても手順は同じになります。

問題 3:重根がある

を計算せよ。

解答 3

重複した因子には、 乗と 乗の両方を立てます[1]。

です。 で 、 で 。

残る は を入れて から です。

乗の項からは対数ではなく が出ます。行き先が違う点が要です。

問題 4:既約な 2 次因子

を計算せよ。

解答 4

は実数の範囲で因数分解できません。分子を 次に立てます。

で、 から 。係数を比べて 、 です。

既約 次の分子を定数で立てると、係数が合いません。 次にする必要があります。

問題 5:分子を 2 つに割る

を計算せよ。

解答 5

分子を分母の微分の部分と定数に分けます。

既約 次から出るのは対数と逆正接の 本です。 の部分が対数、残りが逆正接になります。

問題 6:仮分数

を計算せよ。

解答 6

分子の次数が分母以上なので、先に割ります[1]。

割らずに分解しようとすると、係数が定まりません。真分数に直す。それが最初の手順です。

問題 7:約分できる場合

を計算せよ。

解答 7

分母を因数分解します。 です。

分子と共通因子があるので、そのまま約分できます。

分解を始める前に約分を確かめます。ここを飛ばすと無駄な計算が増えます。

問題 8:平方完成が要る

を計算せよ。

解答 8

分母は判別式が負で既約です。平方完成します。

と置けば標準形になります。

から までの定積分は です。既約 次はまず平方完成、が定石になります。

問題 9:既約 2 次の重複

を計算せよ。

解答 9

分解では済まないので、 と置換します。、 です。

戻すと次の形です。

から までは になります。既約 次の重複は、置換か漸化式で下げます。

問題 10:分子が 1 次で重複がある

を計算せよ。

解答 10

分子を つに割ります。 の側は置換で片づく。

残りは問題 の結果です。合わせます。

から までは です。分子を分母の微分の部分と定数に割る、が既約 次での共通の手になります。

問題 11:ヘヴィサイドの被覆法

を計算せよ。

解答 11

次因子だけで重複がなければ、係数は つずつ直接出せます[1]。

求めたい因子を隠し、その根を残りに代入します。

連立方程式を立てずに済みます。 次因子が 個でも 個でも、同じ手間で出ます。

問題 12:分母が 3 次

を計算せよ。

解答 12

と分けます。 次の側は判別式が で既約です。

次の側は、分母の微分 を作ってから残りを分けます。

から までは です。 次でも手順は変わらず、項が増えるだけになります。

問題 13:係数の決め方を 2 通りで

の係数を、代入と係数比較の 通りで求めよ。

解答 13

と置きます。

代入なら で 、 で です。、 になります。

係数比較なら の項から 、定数項から です。解くと同じ値が出ます。

代入は 次因子で速く、係数比較は既約 次や重複があるときに要ります。両方使える場面では代入を選びます。

問題 14:定積分

を計算せよ。

解答 14

問題 の結果を使います。

値は です。積分区間に が入っていないことを先に確かめます。

をまたぐ区間なら、そこで被積分関数が発散して広義積分になります。分母の零点と区間の位置関係は、計算前に見ておきます。

問題 15:初等関数で必ず書ける理由

有理関数の不定積分が、いつでも初等関数で書けることを説明せよ。

解答 15

実数係数の多項式は、 次式と既約 次式の積に分解します。代数学の基本定理から従う事実です[1]。

したがって部分分数分解でできる項は 種類に限られます。 と と多項式です。

前者は かべき、後者は平方完成と漸化式で と に落ちます。多項式はそのまま積分できる。

や のように書けない例が出るのは、有理関数の外側です。分母を因数分解できさえすれば、この種の行き止まりはありません。

つまずきやすいところ

分解の立て方で誤ります。

真分数にしないまま分解する

分子の次数が分母以上なら、先に多項式の割り算をします。

重複した因子に 項しか立てない

には 乗から 乗まで 項が要ります。

既約 次の分子を定数にする

の形に立てます。定数だけでは係数が合いません。

被覆法を重複した因子に使う

次で重複がないときだけの手です。ほかは連立で解きます。

分母を因数分解したら、因子の型を見て項を立てる。ここさえ正しければ、あとは連立方程式です。

の部分分数分解で、立てる項はいくつになりますか。

  • 項
  • 項
  • 項
__RESULT__

から 乗・ 乗・ 乗の 項、既約 次の から の 項です。分子が 次でも 項として数えます。

よくある誤り

仮分数のまま分解しようとする。先に多項式の割り算をします。
重複した因子に 項しか立てない。 乗なら 項が要ります。
既約 次の分子を定数で立てる。 にします。
約分を確かめずに分解を始める。共通因子があれば手間が消えます。
被覆法を重複した因子に当てる。 次で重複なしのときだけです。
平方完成せずに逆正接の形へ進む。 に直してからです。
定積分で分母の零点が区間に入っていないかを見ない。入れば広義積分になります。

分母を因数分解して型を見る。それだけで、立てる項も答えの形も先に決まります。

参考文献

[1] が部分分数分解の一般形・真分数への直し方・被覆法・実係数多項式の分解、[2] がドイツ語での記述、[3] が部分分数分解による有理関数の記号的積分、[4] が三角置換、[5] が代数学の基本定理です。

Partial fraction decomposition - Wikipedia
Partialbruchzerlegung - Wikipedia
Partial fractions in integration - Wikipedia
Trigonometric substitution - Wikipedia
Fundamental theorem of algebra - Wikipedia
実数係数の多項式は $1$ 次式と既約な $2$ 次式の積に必ず分解します。だから部分分数で出る形は $3$ つだけで、答えも対数・べき・逆正接の組み合わせに決まる。$15$ 問で、重複した因子には $k$ 項立てる、既約 $2$ 次の分子は $1$ 次にする、仮分数は先に割る、といった型を順に扱いました。$1$ 次で重複がなければ被覆法で係数が直接出せます。平方完成が要る場合、$(x^2+1)^2$ のような重複、分母が $3$ 次の場合、そして係数を代入と係数比較の $2$ 通りで求める手順まで並べています。