∫xexdx で u=x と置けば、次の積分は ∫exdx になって終わります。逆に u=ex と置くと ∫2x2exdx が残り、次数が上がってしまう。
部分積分は ∫udv=uv−∫vdu という書きかえです[1]。式の形は選び方によらず、残る積分が簡単になるかどうかだけが変わります。
以下は 15 問です。多項式と指数から始め、対数と逆三角、循環して連立になる型、表で繰り返す方法、漸化式まで並べました。
公式と、選び方の目安
積の微分 (uv)′=u′v+uv′ を積分して移項すると導けます[1]。
∫udv=uv−∫vdu
u に選ぶのは、微分すると簡単になるほうです。目安として、対数・逆三角・多項式・三角・指数の順で優先します[2]。
対数関数。微分すると x1 になり、代数式に落ちます。
指数関数。積分しても形が変わらないので dv 向きです。
先に来るほうを u、あとに来るほうを dv にします。絶対の規則ではありませんが、迷ったときの出発点になる。
問題 1:多項式と指数
∫xexdx を計算せよ。
解答 1
u=x、dv=exdx と置きます。du=dx、v=ex です。
∫xexdx=xex−∫exdx=ex(x−1)+C
多項式を u にすると微分で次数が下がり、1 回で消えます。
問題 2:多項式と三角関数
∫xsinxdx を計算せよ。
解答 2
u=x、dv=sinxdx です。v=−cosx になります。
∫xsinxdx=−xcosx+∫cosxdx=−xcosx+sinx+C
v の符号を落とすと答えが反転します。sin の原始関数は −cos です。
問題 3:2 回繰り返す
∫x2exdx を計算せよ。
解答 3
u=x2 と置くと 1 回で ∫xexdx に落ちます。
∫x2exdx=x2ex−2∫xexdx
問題 1 の結果を入れます。
=x2ex−2ex(x−1)+C=ex(x2−2x+2)+C
xn なら n 回で終わります。多項式が有限回で消えるからです。
問題 4:表にして繰り返す
∫x3sinxdx を表を使って計算せよ。
解答 4
左の列に u の微分、右の列に dv の積分を並べ、斜めにかけて符号を交互につけます[1]。
| 微分の列 | 積分の列 | 符号 | | x3 | sinx | + |
| 3x2 | −cosx | − |
| 6x | −sinx | + |
| 6 | cosx | − |
斜めにかけて足します。
∫x3sinxdx=−x3cosx+3x2sinx+6xcosx−6sinx+C
左の列が 0 になったところで止まります。4 回ぶんの部分積分が 1 枚の表で済みました。
問題 5:対数
∫lnxdx を計算せよ。
解答 5
積の形に見えませんが、dv=dx と置けます。u=lnx、v=x です。
∫lnxdx=xlnx−∫x⋅x1dx=x(lnx−1)+C
1 をかけていると見れば、単独の関数でも部分積分が使えます[3]。
問題 6:逆三角関数
∫arctanxdx を計算せよ。
解答 6
同じく dv=dx です。du=1+x2dx、v=x になります。
∫arctanxdx=xarctanx−∫1+x2xdx=xarctanx−21ln(1+x2)+C
残った積分は ff′ の形で、置換で片づきます。
問題 7:対数の 2 乗
∫(lnx)2dx を計算せよ。
解答 7
u=(lnx)2、dv=dx です。du=x2lnxdx になります。
∫(lnx)2dx=x(lnx)2−2∫lnxdx
問題 5 の結果を入れます。
=x((lnx)2−2lnx+2)+C
対数の次数が 1 ずつ下がります。(lnx)n なら n 回で終わる。
問題 8:循環して連立になる型
∫exsinxdx を計算せよ。
解答 8
I と置いて 2 回部分積分します。1 回目は u=sinx、dv=exdx です。
I=exsinx−∫excosxdx
2 回目も同じ向きで選びます。ここで向きを変えるともとに戻ってしまう。
I=exsinx−excosx−I
I について解きます。
I=2ex(sinx−cosx)+C
2 回で元の積分が現れる型です[3]。移項して割る、という代数の操作で終わります。
問題 9:正割の 3 乗
∫sec3xdx を計算せよ。
解答 9
u=secx、dv=sec2xdx です。v=tanx になります。
∫sec3xdx=secxtanx−∫secxtan2xdx
tan2x=sec2x−1 で書き直すと、もとの積分が現れます。
∫sec3xdx=secxtanx−∫sec3xdx+∫secxdx
∫sec3xdx=21(secxtanx+ln∣secx+tanx∣)+C
0 から 1 までの定積分は 2.05433 です。循環型に恒等式を挟む形になっています。
問題 10:定積分
∫01xe−xdx を計算せよ。
解答 10
u=x、dv=e−xdx で v=−e−x です。定積分では uv の部分も範囲を入れます[4]。
∫01xe−xdx=[−xe−x]01+∫01e−xdx=−e−1+(1−e−1)
=1−e2=0.26424
uv の値を入れ忘れる誤りが多いところです。x=0 で 0 になるからといって省略しないほうが安全になります。
問題 11:ウォリスの漸化式
In=∫0π/2sinnxdx の漸化式を導け。
解答 11
u=sinn−1x、dv=sinxdx と置きます。
In=[−sinn−1xcosx]0π/2+(n−1)∫0π/2sinn−2xcos2xdx
第 1 項は両端とも 0 です。cos2x=1−sin2x で書き直します。
In=(n−1)In−2−(n−1)In,In=nn−1In−2
I0=2π、I1=1 から順に決まります。I2=4π、I3=32、I4=163π、I5=158 です。
偶数番目に π が残り、奇数番目には残りません。数値で確かめると I4=0.58905、I5=0.53333 になります。
問題 12:多項式と逆三角の積
∫xarctanxdx を計算せよ。
解答 12
目安では逆三角が多項式より先なので、u=arctanx です。dv=xdx、v=2x2 になります。
∫xarctanxdx=2x2arctanx−21∫1+x2x2dx
残った積分は 1+x2x2=1−1+x21 と分けます。
=2x2+1arctanx−2x+C
0 から 1 までの定積分は 4π−21=0.28540 です。
問題 13:3 通りで解いて突き合わせる
∫sinxcosxdx を 3 通りで計算し、答えが一致することを確かめよ。
解答 13
置換なら u=sinx で 2sin2x+C です。
部分積分なら u=sinx、dv=cosxdx として循環型になり、同じ形になります。
倍角の公式なら sinxcosx=2sin2x で、−4cos2x+C です。
3 つは定数の差だけ違います。cos2x=1−2sin2x を使うと −4cos2x=2sin2x−41 になる。
不定積分の答えが見た目で違っても、差が定数なら同じです。突き合わせるときは微分して確かめます。
問題 14:ベータ積分の漸化式
J(m,n)=∫01xm(1−x)ndx について、n を 1 下げる漸化式を導け。
解答 14
u=(1−x)n、dv=xmdx と置きます。v=m+1xm+1 です。
J(m,n)=[m+1xm+1(1−x)n]01+m+1n∫01xm+1(1−x)n−1dx
m,n>0 なら第 1 項は両端で 0 です。
J(m,n)=m+1nJ(m+1,n−1)
繰り返して n を 0 まで下げると閉じた形になります。
J(m,n)=(m+n+1)!m!n!
これはベータ関数 B(m+1,n+1) にあたります[5]。標準の定義では指数が 1 ずつ小さく書かれるので、添字が 1 ずつずれます。
m=3、n=2 で 7206⋅2=601=0.016667 です。数値積分と一致します。
問題 15:進まない選び方
∫xsinxdx で u=sinx と置くとどうなるか。
解答 15
dv=xdx なので v=2x2 です。
∫xsinxdx=2x2sinx−21∫x2cosxdx
残った積分は次数が 1 上がっています。もう 1 回やれば x3 になり、際限がありません。
式としては正しく、誤りではありません。等式は成り立っていて、ただ進まないだけです。
1 回やって次数が上がったら、選び方を入れかえます。損はしません。
つまずきやすいところ
公式より、選び方と符号で誤ります。
sinx の原始関数は −cosx です。dv を積分するときに符号が入ります。
[uv]ab を先に書いてから残りの積分に進みます。
1 回目と同じ側を u にします。変えるともとの式に戻ります。
左の列が 0 になった行まで書きます。多項式でないと止まりません。
∫x2lnxdx で u に選ぶべきものはどれですか。
__RESULT__
対数が多項式より先です。lnx を微分すると x1 になり、残る積分が ∫3x2dx という多項式に落ちます。逆にすると対数が残ったままになります。
u を選んだら du と v を書き出してから代入する。この順序を崩さなければ、符号の誤りはほぼ消えます。
参考文献
Oliver Knill. Integration by parts, Math 1A: Introduction to Functions and Calculus. Harvard University, 2011. Integration by Parts, Math 2300 Calculus II. University of Colorado Boulder. Berechnung von Integralen, Analysis I. Universität Freiburg. Intégrales, Analyse — Cours de mathématiques première année. Exo7.
$\int xe^x dx$ で $u=x$ と置けば次は $\int e^x dx$ で終わりますが、逆にすると次数が上がって進みません。式はどちらも正しく、残る積分だけが変わる。$15$ 問で、対数・逆三角・多項式・三角・指数の優先順、$x^3\sin x$ を表で $1$ 枚に片づける方法、$e^x\sin x$ や $\sec^3 x$ のように $2$ 回で元へ戻って連立になる型を扱いました。ウォリスの漸化式で $\sin^n$ の定積分を下げる手順、ベータ積分の漸化式まで。同じ積分を $3$ 通りで解き、定数の差だけで一致することも確かめます。
対数が多項式より先です。lnx を微分すると x1 になり、残る積分が ∫3x2dx という多項式に落ちます。逆にすると対数が残ったままになります。