∫sin3xdx は置換で 1 行、∫sin4xdx は半角の公式を 2 回です。次数が 1 違うだけで手順が変わります。
分かれ目は奇数乗か偶数乗か。奇数なら 1 つを dx の側へ回して置換、偶数なら次数を下げてから積分します[1]。
以下は 15 問です。冪の形から始め、積の形、積和の公式、正接と正割、有理式に直す置換まで並べました。
型の見分け
被積分関数の形で手順が決まります。
| 形 | 手順 | | sinmxcosnx で一方が奇数 | 奇数側から 1 つ抜いて置換 |
| 両方とも偶数 | 半角の公式で次数を下げる |
| tannx や secnx | tan2=sec2−1 で書きかえる |
| sinmxcosnx など | 積和の公式で和に直す |
| 三角関数の有理式 | t=tan2x で有理関数に直す |
奇数乗は置換、偶数乗は次数下げ。この 2 本が中心で、残りは公式で形を変える手です。
問題 1:奇数乗
∫sin3xdx を計算せよ。
解答 1
sinx を 1 つ残し、残りを cos で書きます。
∫sin3xdx=∫(1−cos2x)sinxdx
u=cosx と置くと du=−sinxdx です。
=−∫(1−u2)du=−cosx+3cos3x+C
抜いた 1 つが du になります。奇数乗のときだけ、こうして 1 つ余らせられる。
問題 2:偶数乗
∫cos4xdx を計算せよ。
解答 2
1 つ抜くと残りが奇数になり、sin で書き直せません。半角の公式で次数を下げます[1]。
cos4x=(21+cos2x)2=41+2cos2x+cos22x
cos22x にもう一度当てます。
=83+2cos2x+8cos4x
∫cos4xdx=83x+4sin2x+32sin4x+C
定数項の 83 から x が出ます。偶数乗では必ず x の項が残る。
問題 3:積で一方が奇数
∫sin2xcos3xdx を計算せよ。
解答 3
cos の側が奇数なので、そちらから 1 つ抜きます。u=sinx です。
∫sin2x(1−sin2x)cosxdx=∫u2(1−u2)du
=3sin3x−5sin5x+C
奇数側を抜いて、偶数側をそのまま u にする。片方が奇数ならいつでもこの手です。
問題 4:次数が高い積
∫sin5xcos2xdx を計算せよ。
解答 4
sin が奇数なので 1 つ抜きます。残りは sin4x=(1−cos2x)2 です。
u=cosx、du=−sinxdx と置きます。
−∫(1−u2)2u2du=−∫(u2−2u4+u6)du
=−3cos3x+52cos5x−7cos7x+C
0 から 1 までの定積分は 0.040112 です。次数が上がっても展開が増えるだけになります。
問題 5:両方偶数の定積分
∫0π/2sin2xcos2xdx を計算せよ。
解答 5
倍角の公式でまとめます。sinxcosx=2sin2x です。
sin2xcos2x=4sin22x=81−cos4x
∫0π/2=81[x−4sin4x]0π/2=16π
値は 0.196350 です。積を先にまとめてから半角へ進むと、展開が 1 段で済みます。
問題 6:正接の奇数乗
∫tan3xdx を計算せよ。
解答 6
tan2x=sec2x−1 で書きかえます。
∫tanx(sec2x−1)dx=∫tanxsec2xdx−∫tanxdx
第 1 項は u=tanx で 2tan2x です。第 2 項は ∫tanxdx=−ln∣cosx∣ なので、引くと ln∣cosx∣ になります[3]。
∫tan3xdx=2tan2x+ln∣cosx∣+C
sec2x が tanx の微分であることが効いています。正接では sec2 を作る。これが型です。
問題 7:正接の偶数乗
∫tan4xdx を計算せよ。
解答 7
同じ書きかえを 2 回使います。
tan4x=tan2x(sec2x−1)=tan2xsec2x−sec2x+1
順に積分します。
∫tan4xdx=3tan3x−tanx+x+C
0 から 1 までは 0.701766 です。偶数乗でも x の項が残ります。
問題 8:正割の偶数乗
∫sec4xdx を計算せよ。
解答 8
sec2x を 1 つ残し、残りを tan で書きます。
∫(1+tan2x)sec2xdx
u=tanx と置くと du=sec2xdx です。
=∫(1+u2)du=tanx+3tan3x+C
0 から 1 までは 2.816582 になります。正割が偶数乗なら、この手がいつでも通ります。
問題 9:積和の公式
∫sin3xcos5xdx を計算せよ。
解答 9
積のままでは置換が効きません。和に直します[1]。
sinAcosB=2sin(A+B)+sin(A−B)
A=3x、B=5x を入れます。sin(−2x)=−sin2x です。
sin3xcos5x=2sin8x−sin2x
∫sin3xcos5xdx=−16cos8x+4cos2x+C
角が違う積は、必ず和に直してから積分します。
問題 10:直交性
∫02πsin2xsin3xdx を計算せよ。
解答 10
積和の公式で sinAsinB=2cos(A−B)−cos(A+B) です。
sin2xsin3x=2cosx−cos5x
cos を 0 から 2π まで積分すると、どちらも 0 になります。
∫02πsin2xsin3xdx=0
m=n ならいつでも 0 です。フーリエ級数で係数をとり出せるのは、この直交性によります[4]。
問題 11:分母に三角関数
∫1+cos2xsinxdx を計算せよ。
解答 11
u=cosx と置きます。du=−sinxdx で、分子がそのまま du です。
−∫1+u2du=−arctan(cosx)+C
分母に三角関数があっても、微分が分子に見えていれば置換が効きます。
問題 12:ワイエルシュトラス置換
∫3+5cosxdx を計算せよ。
解答 12
t=tan2x と置きます[2]。cosx=1+t21−t2、dx=1+t22dt です。
∫3(1+t2)+5(1−t2)2dt=∫8−2t22dt=∫4−t2dt
部分分数に分けます。
=41ln2−t2+t+C
0 から 1 までは 0.140133 です。分母の 3 と 5 の大小で答えの形が変わり、∣a∣<∣b∣ なら対数、∣a∣>∣b∣ なら逆正接になります。
問題 13:正弦の逆数
∫sinxdx を計算せよ。
解答 13
同じ置換を使います。sinx=1+t22t です[2]。
∫2t1+t2⋅1+t22dt=∫tdt=ln∣t∣+C
=lntan2x+C
0.5 から 1 までは 0.760569 です。1+t2 が約分されて、いちばん簡単な形になりました。
問題 14:部分積分と混ぜる
∫0πxsinxdx を計算せよ。
解答 14
三角関数だけの型ではないので、部分積分に切りかえます。u=x、dv=sinxdx です。
[−xcosx]0π+∫0πcosxdx=π+0=π
多項式が掛かっていたら、まず部分積分で外します。冪の型の判断はそのあとです。
問題 15:型に当てはまらない場合
∫sinx+cosxdx を計算せよ。
解答 15
合成して 1 つの三角関数にします。
sinx+cosx=2sin(x+4π)
問題 13 の結果が使える形になりました。
∫2sin(x+4π)dx=21lntan(2x+8π)+C
角が同じ和なら、合成で 1 本にまとめられます。ワイエルシュトラス置換に進む前に、この手を試します。
つまずきやすいところ
型の見分けと、公式の符号で誤ります。
1 つ抜くと残りが奇数になり、書き直せません。半角の公式で次数を下げます。
sin(A−B) が負になる場合があります。A−B の符号を確かめます。
−ln∣cosx∣ です。ln∣secx∣ と書いても同じで、負号を落とすと符号が反転します。
定数項から x が出ます。sin と cos だけの答えにはなりません。
奇数か偶数かを先に数える。それだけで、置換か次数下げかが決まります。
∫sin4xcos3xdx の手順として正しいものはどれですか。
- 半角の公式で両方の次数を下げる
- cos から 1 つ抜いて u=sinx と置く
- t=tan2x と置く
__RESULT__
cos の側が 3 乗で奇数です。1 つ抜いて du に回し、残る cos2x を 1−sin2x に書き直せば、u の多項式の積分になります。
よくある誤り
偶数乗に置換を当てようとする。半角の公式で次数を下げます。
両方が奇数のときにどちらを抜くか迷う。どちらでも解けます。
積和の公式で sin(A−B) の符号を落とす。A<B なら負になります。
∫tanxdx から負号を落とす。−ln∣cosx∣ で、ln∣secx∣ と同じです。
偶数乗の答えに x の項を書き落とす。定数項から必ず出ます。
角が違う積をそのまま置換しようとする。先に積和で和に直します。
多項式が掛かっているのに冪の型で処理する。部分積分で先に外します。
次数の偶奇を数え、角が同じかを見る。この 2 つで、15 問のどれに当たるかがその場で決まります。
参考文献
[1] が半角の公式・積和の公式・倍角の公式、[2] がワイエルシュトラス置換の公式、[3] が三角関数の積分公式の一覧、[4] が三角関数の直交性とフーリエ級数、[5] がドイツ語での公式集で、冪の低減・積の公式・半角の正接による表示を扱っています。
$\int\sin^3x\,dx$ は置換で $1$ 行、$\int\sin^4x\,dx$ は半角の公式を $2$ 回。次数が $1$ 違うだけで手順がまるごと入れかわります。奇数乗なら $1$ つ抜いて $du$ に回し、偶数乗なら次数を下げてから積分する。$15$ 問で、積の形での抜き方、正接と正割を $\tan^2=\sec^2-1$ で書きかえる型、角の違う積を積和で和に直す手順を扱いました。$\sin 2x\sin 3x$ を $1$ 周ぶん積分すると $0$ になる直交性、$t=\tan\frac{x}{2}$ で有理関数に落とす置換、合成で $1$ 本にまとめる手まで並べています。
cos の側が 3 乗で奇数です。1 つ抜いて du に回し、残る cos2x を 1−sin2x に書き直せば、u の多項式の積分になります。