級数の収束判定|比・根・積分・交代級数の判定法
級数の収束判定は、どの判定法を選ぶかで決まる。判定法にはそれぞれ使える条件があり、外れると何も言えないまま終わる。
以下の問題は、判定法の使い分けを身につけるために並べてある。後半には、条件の確かめ漏れで誤りやすいものを集めた。
問題 1:一般項が 0 に行かない場合
の収束・発散を判定せよ。
解答 1
である。
級数が収束すれば一般項は 0 に収束しなければならない。その対偶により、この級数は発散する。
判定はまずここから始める。一般項が 0 に行かないと分かれば、それ以上調べる必要はない。
逆は成り立たない。一般項が 0 に行くことは収束の必要条件にすぎず、根拠にはならない。
問題 2:比較判定法
の収束・発散を判定せよ。
解答 2
であり、 は 級数として収束する()。
比較判定法により は収束する。
別解として、部分分数分解でも解ける。 と書けるので、部分和が望遠鏡和になって に等しい。
とすれば和の値は 1 である。判定だけでなく値まで出るのは、この形に限られる。
問題 3:極限比較判定法
の収束・発散を判定せよ。
解答 3
大きい では分子が 、分母が に近いので、 と同じ振る舞いだと見当をつける。
極限が 0 でも でもない正の数なので、 と収束・発散が一致する。したがって収束する。
不等式を作りにくい形でも、最高次だけを見て比を取れば済む。比較判定法より使い勝手がよい。
問題 4:指数が に依存する場合
の収束・発散を判定せよ。
解答 4
指数が 1 より大きいので 級数として収束する、と考えると誤る。 級数の判定は指数が定数の場合の話である。
と分け、 を使う。
極限比較判定法により、調和級数と収束・発散が一致する。調和級数は発散するので、この級数も発散する。
指数が に依存していると、 を大きくするほど 1 に近づいてしまう。見かけの指数に引きずられないようにする。
問題 5:比判定法
の収束・発散を判定せよ。
解答 5
比判定法により収束する。
階乗とべきが混ざった形は、比を取ると大きく約分できる。この形を見たら比判定法から試す。
問題 6:階乗を含む級数
の収束・発散を判定せよ。
解答 6
比判定法により収束する。
値も分かる。 のマクローリン展開に を入れると なので、 の項を引いて である。
問題 7:根判定法
の収束・発散を判定せよ。
解答 7
根判定法により収束する。
全体が 乗の形をしているので、根を取ると指数が消える。この形では比判定法より手数が少ない。
問題 8:根判定法だけが効く場合
の収束・発散を判定せよ。
解答 8
比を計算すると、 の偶奇で値が変わる。
が偶数なら 、奇数なら である。極限が存在せず、しかも 1 を超える値も取るので、比判定法では判定できない。
根を取ると事情が変わる。 であり なので、次のようになる。
根判定法により収束する。根判定法は比判定法より適用範囲が広く、比が振動する場合でも使える。
実際に和を計算すると である。
問題 9:比が 1 に収束する場合
に比判定法を適用するとどうなるか。
解答 9
比が 1 に収束するので、比判定法では判定できない。根判定法も となって同じである。
判定できないことは発散を意味しない。この級数は 級数として収束する。
でも比は 1 に収束するが、こちらは発散する。比が 1 の場合に両方が起こりうるので、判定法が何も言えないのは当然である。
問題 10:積分判定法
の収束・発散を判定せよ。
解答 10
は で正、連続、単調減少である。積分判定法の条件を満たす。
積分が発散するので、級数も発散する。
比判定法も根判定法も比が 1 に収束して使えない。分母に が入る形は積分判定法の出番である。
<svg viewBox="0 0 460 220" width="100%" style="max-width:460px;display:block;margin:0 auto">
<rect x="60" y="70" width="50" height="110" fill="#1b81e0" opacity="0.15" stroke="#9a9a9a" stroke-width="0.5"></rect>
<rect x="110" y="125" width="50" height="55" fill="#1b81e0" opacity="0.15" stroke="#9a9a9a" stroke-width="0.5"></rect>
<rect x="160" y="143" width="50" height="37" fill="#1b81e0" opacity="0.15" stroke="#9a9a9a" stroke-width="0.5"></rect>
<rect x="210" y="153" width="50" height="27" fill="#1b81e0" opacity="0.15" stroke="#9a9a9a" stroke-width="0.5"></rect>
<rect x="260" y="158" width="50" height="22" fill="#1b81e0" opacity="0.15" stroke="#9a9a9a" stroke-width="0.5"></rect>
<rect x="310" y="162" width="50" height="18" fill="#1b81e0" opacity="0.15" stroke="#9a9a9a" stroke-width="0.5"></rect>
<rect x="360" y="164" width="50" height="16" fill="#1b81e0" opacity="0.15" stroke="#9a9a9a" stroke-width="0.5"></rect>
<polyline points="60,70 85,107 110,125 135,136 160,143 185,149 210,153 235,156 260,158 285,160 310,162 335,163 360,164 385,165 410,166" fill="none" stroke="#d0562a" stroke-width="2"></polyline>
<line x1="50" y1="180" x2="425" y2="180" stroke="#c8c8c8" stroke-width="1"></line>
<text x="55" y="30" font-size="11" fill="#1f1f1f">長方形の総和が級数、曲線の下の面積が積分</text>
<text x="55" y="204" font-size="11" fill="#9a9a9a">左端の高さで長方形を作ると、総和は積分より大きくなる</text>
</svg>長方形の総和と曲線の下の面積が互いに押さえ合うので、どちらかが有限ならもう一方も有限になる。積分判定法はこの挟み込みでできている。
問題 11: の指数を変える
が収束する の範囲を求めよ。
解答 11
同じく積分判定法を使う。 と置換する。
右辺は で収束し、 で発散する。したがって級数も でだけ収束する。
前問は の場合にあたる。 と と は、どれも似た形をしていながら最後だけが収束する。
問題 12:交代級数判定法
の収束・発散を判定せよ。
解答 12
と置き、ライプニッツの判定法の条件を確かめる。
3 つとも満たすので収束する。値は である。
絶対値を取ると調和級数になり発散するので、絶対収束はしない。この場合を条件収束という。
<svg viewBox="0 0 460 220" width="100%" style="max-width:460px;display:block;margin:0 auto">
<line x1="50" y1="128" x2="410" y2="128" stroke="#d0562a" stroke-width="1" stroke-dasharray="5 3"></line>
<polyline points="60,60 90,170 120,97 150,152 180,108 210,144 240,113 270,140 300,116 330,138 360,118 390,136" fill="none" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.5"></polyline>
<circle cx="60" cy="60" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="90" cy="170" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="120" cy="97" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="150" cy="152" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="180" cy="108" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="210" cy="144" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="240" cy="113" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="270" cy="140" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="300" cy="116" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="330" cy="138" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="360" cy="118" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<circle cx="390" cy="136" r="3" fill="#1b81e0"></circle>
<text x="55" y="30" font-size="11" fill="#1f1f1f">部分和は上下に振れながら幅を狭めていく</text>
<text x="415" y="132" font-size="11" fill="#d0562a">log 2</text>
<text x="55" y="200" font-size="11" fill="#9a9a9a">幅が狭まる根拠が、絶対値の単調減少である</text>
</svg>部分和は極限を挟んで上下に振れ、振れ幅が で押さえられる。単調減少という条件は、この振れ幅が縮むことを保証している。
問題 13:絶対収束と条件収束
は絶対収束するか条件収束するか。
解答 13
絶対値を取った は より収束する。
したがって元の級数は絶対収束する。絶対収束すれば収束もするので、ライプニッツの判定法を持ち出す必要はない。
交代級数を見たらまず絶対値で判定を試す。絶対収束が言えれば、単調性の確認は要らない。
問題 14:交代級数に見えて発散する例
の収束・発散を判定せよ。
解答 14
符号は交互で、一般項は 0 に収束する。しかしライプニッツの判定法は使えない。
絶対値は が偶数なら 、奇数なら である。 で 、 で となり、単調減少ではない。
分母を有理化して 2 つに分ける。
第 1 項の級数は、 が 0 へ単調減少するのでライプニッツにより収束する。第 2 項の級数は調和級数と同じで発散する。
収束する級数と発散する級数の差なので、全体は発散する。実際に部分和を計算すると へ向かう。
条件を 1 つ確かめ忘れると結論が逆になる。交代級数では単調減少を必ず確かめる。
問題 15:条件収束と並べ替え
の項を並べ替えると和は変わるか。
解答 15
変わる。正の項を 2 つ、負の項を 1 つの順に並べ替えると、和は になる。
条件収束する級数は、並べ替えによって任意の値にできる。 や に発散させることもできる。これをリーマンの再配列定理という。
絶対収束する級数ではこの現象は起きない。どう並べ替えても和は変わらない。
条件収束と絶対収束を区別する理由がここにある。単に収束するかどうかだけでは、扱ってよい操作の範囲が決まらない。
つまずきやすいところ
判定を誤るのは、計算そのものより条件の確かめ漏れによることが多い。
必要条件にすぎない。調和級数が反例である。
符号が交互で一般項が 0 でも、絶対値が単調でなければライプニッツは使えない。
のように指数が に依存する場合、 級数の判定はそのまま使えない。
比判定法が使えないだけで、収束も発散も起こりうる。別の判定法へ移る。
いずれも判定法の仮定に立ち返れば防げる。結論だけを覚えて使わないことである。
問題 16:比判定法が効かない級数
の収束・発散を判定せよ。
解答 16
比が 1 に収束するので、比判定法では判定できない。根判定法も同じである。
スターリングの公式を使うと なので、 となる。
は より発散するので、極限比較判定法によりこの級数も発散する。
比が 1 に近づく速さが問題になっている。次の問題で、近づき方だけから判定する方法を見る。
問題 17:ラーベの判定法
前問をスターリングの公式を使わずに判定せよ。
解答 17
比が 1 に収束するとき、1 との差の縮み方を見るのがラーベの判定法である。
なら収束、 なら発散する。前問の級数に当てはめる。
なので発散する。前問と同じ結論が、近似を使わずに得られた。
比が 程度で 1 に近づくとき、級数は と同じ振る舞いをする。ラーベの判定法はこの対応を使っている。
問題 18:複合的な判定
の収束・発散を判定せよ。
解答 18
なので、比判定法により収束する。
分母の 3 を より小さい 2 に取り替えると極限は となり、今度は発散する。境目が にあるので、値を評価せずに 1 と比べることはできない。
一般項 が正で に収束し、 であるとする。 について言えることはどれか。
- 必ず収束する
- 必ず発散する
- 収束することも発散することもある
- 比判定法を使えば判定できる











an=1/n2 は収束し、an=1/n は発散する。どちらも比は 1 に収束するので、比判定法は何も言わない。