係数は積分 1 本で出る(フーリエ級数の計算問題とギブス現象)
と を行き来する矩形波は、 の和で書けます。
角ばった不連続な関数が、なめらかな曲線の重ね合わせになる。係数は積分 本で出ます[1]。
係数が積分で出る理由
と は、 上で掛けて積分すると になります。同じものどうしのときだけ が残る[3]。
級数 の両辺に を掛けて積分すると、 の項以外が全部消えます。
残った を で割ったものが係数の式です。直交性がそのまま係数のとり出し方になっています。
偶奇で片方が消える
が偶関数なら は奇関数なので、積分は 。 が全部消えます。
が奇関数なら逆に が消える。計算を始める前に偶奇を見ておくと、手間が半分になります。
。 だけの級数になる
。 だけの級数になる
問題 1:矩形波
()、()、周期 のフーリエ級数を求めよ。
解答 1
奇関数なので です。 だけを計算します。
が偶数なら 、奇数なら 。奇数次だけが残ります。
という形が出たら、偶数次が消える合図です。
問題 2:三角波
()、周期 のフーリエ級数を求めよ。
解答 2
偶関数なので 。定数項から出します。
なので、定数項は です。
は部分積分で出します。
奇数次だけ が残ります。
分母が になりました。矩形波の より速く減っています。この差は後で効いてきます。
問題 3:定数の項から級数を出す
問題 の式に を代入して、奇数の 乗の逆数和を求めよ。
解答 3
左辺は です。右辺は定数項から級数を引いた形になります。
移項して整理すると次が出ます。
代入する点は自由に選べます。級数がいちばん簡単になる点を探すところが要領になります。
問題 4:x のフーリエ級数
()、周期 のフーリエ級数を求めよ。
解答 4
奇関数なので 。部分積分で を出します。
したがって です。
端点の では両側の値が と で食い違います。級数はその平均 に収束する[1]。
問題 5:ライプニッツの公式を出す
問題 の式に を代入せよ。
解答 5
は 、、、 の繰り返しです。偶数次が消えます。
両辺を で割ると 。ライプニッツの公式です。
を選ぶと不連続点に当たるので、この形は出ません。連続な点を選ぶところが要点になります。
問題 6:バーゼル問題
()のフーリエ級数を求め、 を出せ。
解答 6
偶関数なので 。、部分積分を 回行って です。
を代入します。 なので が つ掛かって消えます。
は連続なので、端点 を使っても平均をとる必要がありません。
パーセバルの等式
係数の 乗和と、関数の 乗の積分が等しくなります[3]。
代入する点を選ぶ方法と違って、こちらは級数全体の情報を使います。 乗で足すので符号が消え、絶対値の大きい係数が効きます。
問題 7:パーセバルで確かめる
問題 の矩形波にパーセバルの等式を当てて、問題 の結果を確かめよ。
解答 7
なので左辺は です。
右辺は奇数次の だけ。 を 乗して足します。
問題 と同じ値になりました。 点の代入と、全体の 乗和。別の道から同じ結果へ着きます。
複素形
でまとめると、係数が 本の式になります[1]。
と の 本が 本になるかわりに、 が負の側まで走ります。指数関数の積分は三角関数より軽いので、計算量は減ることが多い。
問題 8:指数関数の複素係数
(、 は実数で )の複素フーリエ係数を求めよ。
解答 8
指数どうしをまとめると、そのまま積分できます。
で、 です。
三角関数のまま計算すると部分積分を循環させることになります。複素形なら 回の積分で終わる。
区間を変える
周期が なら、 を に置き換えます。角の係数が に変わるだけです。
だけで与えられた関数は、奇関数として へ広げれば だけの級数に、偶関数として広げれば だけの級数になります。
同じ関数から 種類の級数が作れる。どちらを使うかは、境界での値をどう振る舞わせたいかで決めます。
問題 9:正弦級数へ展開する
()を正弦級数に展開せよ。
解答 9
奇関数として へ広げます。係数の式は次のようになります。
したがって です。
とすると問題 に戻ります。区間を変えても構造は同じです。
係数の減り方は滑らかさで決まる
部分積分を 回するごとに、係数の分母に が つ増えます。 回できれば の速さです[1]。
| 関数 | なめらかさ | 係数の減り方 |
|---|---|---|
| 矩形波 | 不連続 | n の 1 乗分の 1 |
| 三角波 | 連続、角あり | n の 2 乗分の 1 |
| 無限回微分可能 | どこまでも滑らか | どの冪よりも速い |
問題 と問題 の係数を見比べると、この差がそのまま出ています。不連続な関数ほど高い次数まで必要になる。
ギブス現象
不連続点の近くでは、部分和がいくら項を増やしても行き過ぎたままになります[2]。
角は横に細くなっていきますが、高さが変わりません。一様収束していない形が、そのまま目に見えています。
問題 10:行き過ぎの大きさ
矩形波の部分和が、不連続点の近くでどこまで行き過ぎるか答えよ。
解答 10
部分和の最初の山は、正弦積分 で書けます[2]。
本来の値 に対して だけ行き過ぎます。矩形波は から へ跳ぶので、跳びの幅 で測ると約 です。
項を増やすと山の位置は不連続点へ寄りますが、高さはこの値のまま動きません。
ギブス現象は矩形波に固有の話ではなく、跳びを持つ関数すべて に起きます[2]。
行き過ぎの割合は跳びの幅に比例し、比例定数はいつも同じ になる。
不連続点で、フーリエ級数はどの値に収束しますか。
- 左側の値
- 左右の値の平均
- 右側の値
偶奇を見て片方を落とし、部分積分で係数を出す。あとは代入する点を選ぶか、パーセバルで 乗和をとるかです。











左右の極限を f(x−)、f(x+) とすると、級数は 21(f(x−)+f(x+)) に収束します。矩形波の x=0 なら 21+(−1)=0 です。関数の値がどう定めてあっても、級数は平均を返します。