経路によるかどうかで線積分の手間はまるごと変わる
の線積分は、どの経路をとっても両端だけで決まります。 では経路ごとに値が変わる。
見分けは が成り立つかどうかです。成り立てば、ポテンシャルを つ求めて引き算するだけで終わります[1]。
以下は 問です。スカラー場とベクトル場の定義から始め、経路独立性、グリーンの定理、面積公式、そして条件がそろっていても破れる例まで並べました。
2 種類の線積分
積分するものが違います[1]。
| スカラー場 | |
| ベクトル場 |
前者は弧長についての積分で、向きを逆にしても値が変わりません。後者は向きを逆にすると符号が変わります[1]。
どちらも媒介変数のとり方によりません。速く進むか遅く進むかは、 と で打ち消し合います。
問題 1:スカラー場の線積分
を計算せよ。 は原点から への直線とする。
解答 1
、 と媒介変数表示します。
で です。
値は です。 に が入るところを落とすと、 になってしまいます。
問題 2:ベクトル場の線積分
について、 から への に沿った線積分を求めよ。
解答 2
、 です。 は になります。
内積をとってから積分します。ベクトルのまま積分しようとすると形が合いません。
問題 3:保存場の判定
が保存場か判定し、ポテンシャルを求めよ。
解答 3
偏微分を比べます。
一致するので、単連結な領域では保存場です[1]。ポテンシャルを積み上げます。
から です。 で微分して比べます。
になります。線積分は両端での の差です。
問題 4:経路によらないことを確かめる
について、 から への線積分を 通りで計算せよ。
解答 4
直線 では 、 です。
折れ線 では、前半が で被積分関数が 、後半が で第 成分だけ残ります。
一致しました。 なので、勾配定理から両端の値の差 になります[1]。
問題 5:経路によって変わる場合
について、同じ 経路で線積分を比べよ。
解答 5
直線では です。
折れ線では、前半が で 、後半は かつ第 成分が なので になります。合計 です。
値が違います。判定式を見ると 、 で一致しません。
保存場でなければ、経路ごとに計算するほかありません。ポテンシャルも存在しない。
問題 6:閉曲線
を計算せよ。 は原点中心、半径 の円で反時計回りとする。
解答 6
、 と置きます。、 です。
保存場なら閉曲線での積分は になります。 なので保存場ではありません。
問題 7:グリーンの定理で確かめる
問題 をグリーンの定理で計算せよ。
解答 7
閉曲線に沿う積分を、囲む領域上の重積分に直します[2]。
、 で、被積分関数は です。
問題 と一致します。 次元の積分が 次元の積分に置きかわり、被積分関数が定数になりました。
問題 8:面積を線積分で出す
で楕円 の面積を求めよ。
解答 8
、 と置きます。
、 なら です。境界をなぞるだけで内部の面積が出ます。
グリーンの定理で被積分関数が になる場合にあたります。プラニメータという製図器具は、この原理で動きます。

問題 9:3 次元の線積分
について、 から への単位円周上の弧に沿う線積分を求めよ。
解答 9
、 とします。
、 です。
第 成分は の側が なので効きません。 次元でも手順は同じです。
問題 10:仕事の計算
力 が、原点から を経て へ物体を動かすときの仕事を求めよ。
解答 10
前半は 、 なので被積分関数が です。
後半は 、 で、第 成分だけ残ります。
この場は保存場ではないので、別の経路なら別の値になります。仕事の大きさが道のりに依存する、という状況です。
問題 11:弧長
、 の弧長を求めよ。
解答 11
です。 としたスカラー場の線積分になります。
値は です。 と置くか、 の公式を使います。
直線距離は なので、曲がったぶんだけ長くなっています。
問題 12:媒介変数のとり方によらない
問題 を 、 で計算し、同じ値になることを確かめよ。
解答 12
で です。
問題 と同じ値になりました。同じ曲線を違う速さでなぞっても、値は変わりません[1]。
速く進むところでは が大きく、 の刻みが少ない。 つが打ち消し合っています。
問題 13:向きを逆にする
問題 の経路を逆向きにたどると、値はどうなるか。
解答 13
ベクトル場の線積分では、向きを逆にすると符号が変わります[1]。値は です。
と置き直すと の符号が反転するので、内積の符号も反転します。
スカラー場の では変わりません。 が絶対値なので、符号が出てこないためです。
種類の線積分で振る舞いが違う点は、書き分けるときの目印になります。
問題 14:判定式が成り立つのに保存場でない
について、判定式を確かめ、単位円周に沿う積分を計算せよ。
解答 14
偏微分を計算します。どちらも同じ式になります。
ところが単位円周に沿う積分は になりません。、 を入れると被積分関数が です。
原因は定義域です。この場は原点で定義されず、領域が単連結ではありません[3]。
判定式は必要条件にすぎない、と言いかえられます。単連結という条件があって初めて十分条件になります。
問題 15:条件を確かめる順序
線積分を計算するとき、どの順に確かめればよいかをまとめよ。
解答 15
まず積分の種類を見ます。 か かで、向きの扱いが変わります。
ベクトル場なら判定式を見ます。成り立たなければ、経路ごとに媒介変数表示して計算するほかありません。
成り立つなら定義域を見ます。単連結なら保存場で、ポテンシャルの差だけで済みます。
穴があるなら、経路が穴を回るかどうかで値が変わります。閉曲線なら、グリーンの定理を使う前に領域の中に特異点がないかを確かめます[2]。
つまずきやすいところ
定義のとり違えと、定理の適用条件で誤ります。
スカラー場の線積分では、この因子が本体です。
領域が単連結であることが要ります。原点を抜いた平面では成り立ちません。
囲む領域の中で場が定義されていることを確かめます。
なら向きによらず、 なら符号が変わります。
判定式と定義域を つセットで見る。ここを分けて考えると、必要条件を十分条件と読み違えます。
の から への線積分はどれですか。
- 経路によって変わる
よくある誤り
種類・判定式・定義域。この つを順に見れば、計算に入る前に手が決まります。
参考文献
[1] がスカラー場とベクトル場の線積分の定義・媒介変数によらないこと・勾配定理と経路独立性、[2] がグリーンの定理、[3] が保存場と単連結性、[4] がドイツ語での定式化、[5] が弧長の計算です。











判定式は ∂y∂F1=1=∂x∂F2 で成り立ち、全平面は単連結です。ポテンシャルは ϕ=x2+xy+y2 で、両端の差は ϕ(1,2)−ϕ(0,0)=7 になります。