イプシロンデルタ論法の答案は「押さえて逆算」の 2 手で書ける
- の答案は 手で書けます。 を の式で上から押さえ、その式が 未満になるように を逆算する。
関数が変わっても骨は同じで、変わるのは押さえ方だけです。因数分解、有理化、分母を下から押さえる。使う道具はこの つでほぼ足ります[1]。
以下は 問です。押さえ方の型を順に見たあと、演算法則の証明、極限が存在しないことの証明、一意性まで並べました。
答案の骨
証明は下書きと清書に分かれます。下書きで を探し、清書では見つけた を先に置く。
|f(x) − L| を |x − a| の式で押さえる
その式が ε 未満になる条件を解く
δ をその値に置いて、清書では逆順に書く
清書の順序は「 をとる、 を置く、 を仮定する、 未満を示す」です。探した過程を書く必要はありません。
は存在すればよいので、最良である必要もない。見つけたものより小さい正の数は、すべて条件を満たします。

問題 1:1 次関数
を証明せよ。
解答 1
差は です。押さえの定数が傾きの になります。
をとり、 と置きます。 なら です。
次関数では傾きで割るだけ。押さえの定数が によらないので、 は要りません。
問題 2:2 次関数を中心 0 以外で
を証明せよ。
解答 2
因数分解します。 で、 が に依存する。
そこで をあらかじめ 以下に制限します。 なら で、 です。
と置けば、両方の条件が同時に満たされます。
の片方は押さえを作るため、もう片方は に合わせるため。役割が違う つを つの にまとめています。
問題 3:3 次関数
を証明せよ。
解答 3
の因数分解を使います。
なら で、 です。
と置けば示せます。押さえの はゆるい見積もりですが、それで足ります。
次数が上がっても手順は同じ。 を 因子だけ残し、残りを数で押さえます。
問題 4:分数関数
を証明せよ。
解答 4
通分します。分母に が現れる点が要です。
が小さいと全体が大きくなるので、下から押さえます。 なら で です。
で示せます。分数では分母を下から押さえる、が型になります。
問題 5:平方根
を証明せよ。
解答 5
有理化します。分子から をとり出す形です。
分母は でつねに 以上なので、押さえが の範囲によりません。
で示せます。 が要らないのは、押さえがはじめから定数だからです。
問題 6:3 乗根
を証明せよ。
解答 6
の因数分解を、、 として使います。
分母は で 以上です。負の側も含めるなら別の見積もりが要りますが、 に限れば押さえは定数になります。
と置きます。 を で頭打ちにしたのは、 を確保するためです。
問題 7:三角関数
を証明せよ。
解答 7
を使います。単位円で、弧の長さより弦の長さが短いことから出ます[2]。
と置けば です。
同じ不等式から も出ます。半角の公式で と押さえる。
問題 8:はさみうち
を証明せよ。
解答 8
正弦は によらず絶対値が 以下です[2]。
で示せます。 の激しい振動は、 が押さえ込んでいる。
振動する因子は、値の範囲だけ見て捨てる。これがはさみうちの使い方です。
問題 9:和の極限
、 のとき、和の極限が になることを示せ。
解答 9
を半分ずつに割ります。それぞれの定義から 、 をとる。
と が、それぞれの範囲で成り立ちます。
と置けば両方が同時に成り立ちます。三角不等式でまとめる。
項が つなら 等分、 つなら 等分。分け方は出てくる項の数で決まります。
問題 10:積の極限
同じ仮定のもとで、積の極限が になることを示せ。
解答 10
差を つに割ります。真ん中に を足して引く。
が残るので、先に有界にします。 に対する をとると、その範囲で です。
あとは と を満たす をとり、 と合わせて をとります。
分母に を入れたのは、 や が でも割れるようにするためです。細かい工夫ですが、これがないと場合分けが要ります。
問題 11:商の極限
のとき、 を示せ。
解答 11
分母を下から押さえるところから始めます。 に対する をとると、その範囲で です。
となる をとり、 です。
商そのものは、この結果と積の法則を組み合わせて出ます。 で割らないための下からの押さえが、いちばん手のかかるところ。
問題 12:片側極限
を証明せよ。
解答 12
右側極限なので、条件は です。絶対値が外れて向きが固定されます。
と置くと です。
負の側では定義されないので、両側の極限は考えられません。定義域が片側にしかない場合は、片側極限だけを問います。
問題 13:無限大がからむ 2 つの形
と を証明せよ。
解答 13
前者では の役目を大きな数 が担います。 と置けば、 で です。
後者では の役目を大きな数 が担います。 と置くと、 で になる。
どちらも「小さくする」を「大きくする」に読みかえただけです。不等式の向きが変わる点だけ確かめます。
問題 14:極限が存在しないことの証明
が存在しないことを示せ。
解答 14
この関数は で 、 で です。
極限が だったとします。 に対する をとると、 のすべてで です。
では 、 では になります。
つを足すと です。ところが三角不等式から左辺は 以上で、矛盾する。
を に選ぶ。ここが要点です。左右の値の差が なので、その半分より小さくとれば必ず矛盾します。

問題 15:極限の一意性
が存在するなら、値はただ つであることを示せ。
解答 15
と の つが極限だったとし、 を仮定します。
と置きます。 つは違う値なので、これは正の数です。
それぞれの定義から 、 をとり、 とします。 となる を つ選ぶ。
自分自身より小さいという式になり、矛盾します。よって です。
差の半分を にとる。これが型です。「 つが違う」を「あいだに隙間がある」に言いかえています。
押さえ方の型
関数の形ごとに、使う道具が決まります。
因数分解して を 因子とり出す。残りは の範囲で数に置きかえます。
分母を下から押さえる。 の範囲で 分母 の最小値を見積もります。
有理化して分子に を出す。分母は正の定数で下から押さえられることが多い。
値の範囲だけ使って捨てる。 で押さえ、残りが に行けば足ります。
型が決まれば の逆算は機械的です。迷うのは押さえ方を選ぶところだけになります。
を示すとき、 のとり方として正しいものはどれですか。
よくある誤り
押さえて逆算する。 手のうち前半だけが関数ごとに変わり、後半はいつも同じです。
参考文献
[1] が定義と を の関数として与えること、[2] がはさみうちの定理と の例、[3] が片側極限・無限大の場合・極限が存在しないことの示し方、[4] がドイツ語での定式化、[5] がフランス語での定義と除いた近傍です。










差は ∣x∣∣x−1∣ です。分母を下から押さえるため ∣x−1∣<21 とすると ∣x∣>21 になり、差は 2∣x−1∣ 未満。δ を 1 で頭打ちにすると x が 0 に届いてしまいます。