中学理科1633649 views
数学講師2913151 views
高校物理162509 views
世界の国567435 views
英語617403 views
高校倫理1444503 views
高校国語790013 views
小学算数1203731 views
中学社会670081 views
教育150077 views
Help
Tools

English

イプシロンデルタ論法の答案は「押さえて逆算」の 2 手で書ける

- の答案は 手で書けます。 を の式で上から押さえ、その式が 未満になるように を逆算する。

関数が変わっても骨は同じで、変わるのは押さえ方だけです。因数分解、有理化、分母を下から押さえる。使う道具はこの つでほぼ足ります[1]。

以下は 問です。押さえ方の型を順に見たあと、演算法則の証明、極限が存在しないことの証明、一意性まで並べました。

答案の骨

証明は下書きと清書に分かれます。下書きで を探し、清書では見つけた を先に置く。

|f(x) − L| を |x − a| の式で押さえる

その式が ε 未満になる条件を解く

δ をその値に置いて、清書では逆順に書く

清書の順序は「 をとる、 を置く、 を仮定する、 未満を示す」です。探した過程を書く必要はありません。

は存在すればよいので、最良である必要もない。見つけたものより小さい正の数は、すべて条件を満たします。

問題 1:1 次関数

を証明せよ。

解答 1

差は です。押さえの定数が傾きの になります。

をとり、 と置きます。 なら です。

次関数では傾きで割るだけ。押さえの定数が によらないので、 は要りません。

問題 2:2 次関数を中心 0 以外で

を証明せよ。

解答 2

因数分解します。 で、 が に依存する。

そこで をあらかじめ 以下に制限します。 なら で、 です。

と置けば、両方の条件が同時に満たされます。

の片方は押さえを作るため、もう片方は に合わせるため。役割が違う つを つの にまとめています。

問題 3:3 次関数

を証明せよ。

解答 3

の因数分解を使います。

なら で、 です。

と置けば示せます。押さえの はゆるい見積もりですが、それで足ります。

次数が上がっても手順は同じ。 を 因子だけ残し、残りを数で押さえます。

問題 4:分数関数

を証明せよ。

解答 4

通分します。分母に が現れる点が要です。

が小さいと全体が大きくなるので、下から押さえます。 なら で です。

で示せます。分数では分母を下から押さえる、が型になります。

問題 5:平方根

を証明せよ。

解答 5

有理化します。分子から をとり出す形です。

分母は でつねに 以上なので、押さえが の範囲によりません。

で示せます。 が要らないのは、押さえがはじめから定数だからです。

問題 6:3 乗根

を証明せよ。

解答 6

の因数分解を、、 として使います。

分母は で 以上です。負の側も含めるなら別の見積もりが要りますが、 に限れば押さえは定数になります。

と置きます。 を で頭打ちにしたのは、 を確保するためです。

問題 7:三角関数

を証明せよ。

解答 7

を使います。単位円で、弧の長さより弦の長さが短いことから出ます[2]。

と置けば です。

同じ不等式から も出ます。半角の公式で と押さえる。

問題 8:はさみうち

を証明せよ。

解答 8

正弦は によらず絶対値が 以下です[2]。

で示せます。 の激しい振動は、 が押さえ込んでいる。

振動する因子は、値の範囲だけ見て捨てる。これがはさみうちの使い方です。

問題 9:和の極限

、 のとき、和の極限が になることを示せ。

解答 9

を半分ずつに割ります。それぞれの定義から 、 をとる。

と が、それぞれの範囲で成り立ちます。

と置けば両方が同時に成り立ちます。三角不等式でまとめる。

項が つなら 等分、 つなら 等分。分け方は出てくる項の数で決まります。

問題 10:積の極限

同じ仮定のもとで、積の極限が になることを示せ。

解答 10

差を つに割ります。真ん中に を足して引く。

が残るので、先に有界にします。 に対する をとると、その範囲で です。

あとは と を満たす をとり、 と合わせて をとります。

分母に を入れたのは、 や が でも割れるようにするためです。細かい工夫ですが、これがないと場合分けが要ります。

問題 11:商の極限

のとき、 を示せ。

解答 11

分母を下から押さえるところから始めます。 に対する をとると、その範囲で です。

となる をとり、 です。

商そのものは、この結果と積の法則を組み合わせて出ます。 で割らないための下からの押さえが、いちばん手のかかるところ。

問題 12:片側極限

を証明せよ。

解答 12

右側極限なので、条件は です。絶対値が外れて向きが固定されます。

と置くと です。

負の側では定義されないので、両側の極限は考えられません。定義域が片側にしかない場合は、片側極限だけを問います。

問題 13:無限大がからむ 2 つの形

と を証明せよ。

解答 13

前者では の役目を大きな数 が担います。 と置けば、 で です。

後者では の役目を大きな数 が担います。 と置くと、 で になる。

どちらも「小さくする」を「大きくする」に読みかえただけです。不等式の向きが変わる点だけ確かめます。

問題 14:極限が存在しないことの証明

が存在しないことを示せ。

解答 14

この関数は で 、 で です。

極限が だったとします。 に対する をとると、 のすべてで です。

では 、 では になります。

つを足すと です。ところが三角不等式から左辺は 以上で、矛盾する。

を に選ぶ。ここが要点です。左右の値の差が なので、その半分より小さくとれば必ず矛盾します。

問題 15:極限の一意性

が存在するなら、値はただ つであることを示せ。

解答 15

と の つが極限だったとし、 を仮定します。

と置きます。 つは違う値なので、これは正の数です。

それぞれの定義から 、 をとり、 とします。 となる を つ選ぶ。

自分自身より小さいという式になり、矛盾します。よって です。

差の半分を にとる。これが型です。「 つが違う」を「あいだに隙間がある」に言いかえています。

押さえ方の型

関数の形ごとに、使う道具が決まります。

多項式

因数分解して を 因子とり出す。残りは の範囲で数に置きかえます。

分数

分母を下から押さえる。 の範囲で 分母 の最小値を見積もります。

根号

有理化して分子に を出す。分母は正の定数で下から押さえられることが多い。

振動する因子

値の範囲だけ使って捨てる。 で押さえ、残りが に行けば足ります。

型が決まれば の逆算は機械的です。迷うのは押さえ方を選ぶところだけになります。

を示すとき、 のとり方として正しいものはどれですか。

__RESULT__

差は です。分母を下から押さえるため とすると になり、差は 未満。 を で頭打ちにすると が に届いてしまいます。

よくある誤り

を より先に決める。 を見てから選べる、が定義の順序です。
押さえの定数に を残す。 などで範囲を限り、数に置きかえます。
分数で分母を上から押さえる。小さくなる側が危ないので、下から押さえます。
の片方を書き落とす。押さえを作る条件と に合わせる条件は別です。
最良の を求めようとする。存在すればよいので、ゆるい見積もりで足ります。
存在しないことの証明で を任意にとる。 つ具体的に選んで矛盾を出します。
和や積の証明で を分けずに使う。項の数だけ等分します。

押さえて逆算する。 手のうち前半だけが関数ごとに変わり、後半はいつも同じです。

参考文献

[1] が定義と を の関数として与えること、[2] がはさみうちの定理と の例、[3] が片側極限・無限大の場合・極限が存在しないことの示し方、[4] がドイツ語での定式化、[5] がフランス語での定義と除いた近傍です。

(ε, δ)-definition of limit - HandWiki-definition_of_limit)
Squeeze theorem - Wikipedia
Limit of a function - Wikipedia
Grenzwert (Funktion) - Wikipedia)
Limite (mathématiques) - Wikipédia)
$|f(x)-L|$ を $|x-a|$ の式で押さえ、その式が $\varepsilon$ 未満になるよう $\delta$ を逆算する。関数が変わるのは前半だけで、後半はいつも同じです。$15$ 問を、多項式は因数分解、分数は分母を下から押さえる、根号は有理化、振動する因子は値の範囲だけ使って捨てる、と型ごとに並べました。$\min$ が要るのは押さえを作る条件と $\varepsilon$ に合わせる条件が別だから。和と積と商の演算法則、$\dfrac{|x|}{x}$ で極限が存在しないことの証明、極限の一意性まで扱います。