面積の伸び縮みがヤコビアン - 重積分の変数変換の計算問題
円板の上で積分するとき、極座標に直すと が に変わります。この がヤコビアンです。
変数をとり替えると、小さな長方形が引き伸ばされたり縮んだりします。その面積比を表す量がヤコビアンで、積分には比のぶんだけ掛け直す必要があります[2]。
面積の伸び縮みを測る
平面の小さな長方形が、変換で 平面のどんな図形に写るかを見ます。
を だけ動かすと、像は だけ動きます。 についても同じ。
本のベクトルが張る平行四辺形の面積が、行列式の絶対値です。これが元の長方形の面積 の何倍になっているかを表します[2]。

行列式に絶対値が付くのは、面積が負にならないためです。向きが反転する変換では行列式が負になりますが、積分には大きさだけが効きます。
ヤコビアンの形
変数なら の行列式です。
変換に要る条件は つです[1]。
つ目が崩れると、面積がつぶれて逆に戻せません。極座標の原点がその例で、 では になります。境界の 点だけなので積分には影響しません。
問題 1:極座標変換
を求めよ。 は とする。
解答 1
、 とすると です[3]。被積分関数は になります。
円板を長方形 、 に直しています。積分区間が定数になるところが利点です。
問題 2:楕円の面積
を求めよ。 は とする。
解答 2
、 と置くと、 は に対応します。
積分すると です。
円を 方向に 倍、 方向に 倍しただけ。面積が 倍になることが、ヤコビアンにそのまま出ています。
問題 3:双曲線で囲まれた領域
を求めよ。 は 、()とする。
解答 3
境界の式をそのまま新しい変数にします。、 と置くと、領域は正方形 になる。
逆に解くと 、 です。
面積は になります。
境界の式を変数に選ぶ。曲がった領域を長方形に直す標準の手です。
逆向きに計算する
と を 、 で解く手間が大きいときは、逆のヤコビアンを出して逆数をとります。
逆写像の微分が微分の逆行列になることから出ます。行列式は逆行列で逆数になる。
問題 なら 、 を直接微分するほうが速い。 で、逆数が です。
問題 4:線形変換
を求めよ。 は 、、 を頂点とする三角形とする。
解答 4
、 と置きます。、 で 。
頂点の行き先を調べると 、、 です。辺 が 、辺 が 、辺 が に対応します。
領域は になりました。
線形変換ではヤコビアンが定数です。領域の頂点だけを追えば、新しい領域が決まります。
3 変数への拡張
変数では の行列式になります。よく使う つは覚えておくと速い[3]。
| 座標 | 体積要素 |
|---|---|
| 円柱座標 | r dr dθ dz |
| 球座標 | ρ² sin φ dρ dφ dθ |
いちばん多い誤りは、球座標の を落とすことです。 の軸の近くで緯線の輪が縮むぶんが、この因子にあたります。
問題 5:上半球の重み付き積分
を求めよ。 は 、 とする。
解答 5
球座標で 、 です。上半球は 。
つの積分が分離します。 です。
を使いました。変数が分離できる形は、球座標の大きな利点です。
問題 6:円柱座標
を求めよ。 は 、 とする。
解答 6
円柱座標で被積分関数は 、体積要素は です。
の範囲が や によらないので、そのまま長さ が掛かります。
問題 7:複素数の 2 乗に対応する変換
、 のヤコビアン を求めよ。
解答 7
偏微分して並べます。
と置くと です。正則関数のヤコビアンは になり、ここでは 。
原点で になるので、原点の近くでは 対 になりません。 と が同じ点へ写ります。
問題 8:逆変換のヤコビアン
、 のとき を求めよ。
解答 8
、 から直接計算できます。
逆数でも出ます。もとの向きのヤコビアンは次のようになります。
その逆数が で、直接計算した値と一致します。
符号が負なのは向きが反転するためです。積分には を使います。
問題 9:ガウス積分
を求め、そこから を出せ。
解答 9
極座標に直すと、 が つ出てくることで積分できる形になります。
一方、被積分関数が と分離するので、 重積分は 変数の積分の 乗です。
変数では原始関数が初等関数で書けません。 次元へ上げてヤコビアンの を借りると解けます。
問題 10:平行四辺形の面積
、、、 を頂点とする平行四辺形の面積を、ヤコビアンで求めよ。
解答 10
とすると、単位正方形がこの平行四辺形に写ります。
面積は です。
行列式が面積比を表すという線形代数の事実が、そのままヤコビアンの意味になっています。変数変換は、これを曲がった変換へ局所的に持ち込んだものです。
球座標で体積要素を と書くとどうなりますか。
- 値は変わらない
- を落としているので誤り
- 円柱座標の式になる
境界の式を新しい変数に選び、面積比を掛け直す。曲がった領域を長方形に直せれば、あとは繰り返し積分です。









正しくは ρ2sinϕdρdϕdθ です。半径 ρ の球面上で、緯度 ϕ の緯線の輪は ρsinϕ の半径を持ちます。極の近くで輪が縮むぶんが sinϕ にあたり、これを落とすと極付近を重く数えることになります。