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標本を 4 倍にしても信頼区間の幅は半分にしかならない

標本 16 個で作った 95% 信頼区間の半幅が 3.41 でした。標本を 4 倍の 64 個にすると 1.60 になります。

手間は 4 倍、狭まる幅はおよそ半分。 が分母にいるので、この交換条件からは逃げられません。

区間推定の計算を、この関係を軸に通していきます。

区間が動き、母数は動かない

95% 信頼区間について、「母平均がこの区間にある確率が 95%」という読み方は正しくありません。

母平均は決まった数で、動きません。動くのは標本のほうで、標本が変わるたびに区間の位置も幅も変わります[1]。

同じ手順を何度も繰り返せば、作った区間のうち 95% が母平均を含む。確率は手順についての話で、目の前の 1 本についての話ではない[1]。

目の前の区間は、含んでいるか含んでいないかのどちらかです。どちらかは分かりません。

母分散が分かっている場合

標本平均の標準偏差は です。標準化した量が標準正規分布に従うので、そこから区間を作ります。

95% なら 、99% なら 2.576、90% なら 1.645 です。

母分散が分からない場合

を標本標準偏差 で置きかえ、比べる相手を t 分布にします。

自由度は 。 は より大きいので、区間はそのぶん広くなります。

例 1:16 個の測定から

表示 500 g の袋を 16 個はかり、平均 496.2 g、標本標準偏差 6.4 g でした。

標準誤差は 。自由度 15 の は 2.1314 です。

区間は 。 を含んでいないので、表示どおりとは言いにくい。

母分散が 6.4 だと分かっていれば となり、区間は です。 ぶんだけ狭い。

幅を決めるのは 3 つ

半幅は という積です。動かせるものが 3 つあります。

信頼係数を下げる

ばらつき を小さくする

標本の大きさ を増やす

は測り方の問題で、統計の外側にあります。測定の精度を上げるか、条件をそろえるか。

信頼係数と は、こちらで選べる数です。

例 2:信頼係数を変える

同じ 16 個のデータで、信頼係数だけを動かします。

信頼係数 の値区間の全幅
90%1.75315.61
95%2.13146.82
99%2.94679.43

99% にすると幅が 1.7 倍になりました。確実さを買うには、幅を払うことになります。

100% の区間を作ることもできますが、それは全実数になって何も言っていません。

例 3:標本を増やす

信頼係数 95%、 のまま だけを変えます。

標準誤差半幅
43.20010.18
161.6003.41
640.8001.60
2560.4000.79

を 4 倍にするたびに、半幅がおよそ半分になっています。 が分母にあるためです。

小さい では の値も大きいので、二重に効きます。 では もあり、半幅が 10 を超える。

半幅を 10 分の 1 にしたいなら、 は 100 倍。精度を上げる費用は、思ったより急に増えます。

比率の区間推定

比率の場合、標準誤差は です。 が大きければ正規近似が使えます。

は で最大の 0.25 になります。だから 0.5 に近いほど区間が広い。

比率ではばらつきが から決まってしまう。平均の推定と違い、 を別に測る必要がありません。

そのぶん、必要な標本の大きさを事前に見積もりやすい。最悪の場合として を置けば足ります。

例 4:1000 人の調査

1000 人に聞いて 52% が賛成だったとします。標準誤差は 。

半幅は で、区間は です。

を含んでいます。52% という数字が出ても、実は半数を割っている可能性は消えません。

400 人だと半幅が 0.049 まで広がり、区間は 。人数が半分以下になると、幅は 1.6 倍になります。

必要な人数を逆算する

半幅を 以下にしたいなら、 を について解きます。

95% で なら 。 にすると です。

を 3 分の 1 にすると は 9 倍。世論調査の人数が 1000 前後で止まりがちなのは、この曲がり方のためです。

95% 信頼区間の半幅を半分にしたい。標本の大きさをどうしますか。

  • 2 倍にする
  • 4 倍にする
  • 信頼係数を 90% に下げれば足りる
__RESULT__

半幅は に反比例するので、半分にするには を 2 倍、つまり を 4 倍にします。信頼係数を 95% から 90% に下げても、 が 2.1314 から 1.7531 になるだけで、幅は 2 割ほどしか縮みません。

区間の幅は と と の積で決まる。どれを動かすといくら縮むかを先に見積もれば、調査の設計はそこで決まります。

参考文献

Confidence estimation. Encyclopedia of Mathematics.
Critical Values of the Student's t Distribution. NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods.
Student distribution. Encyclopedia of Mathematics.
16 個で作った 95% 区間の半幅 3.41 は、64 個にすると 1.60。$\sqrt{n}$ が分母にいるので、手間 4 倍で幅は半分です。「母平均がこの区間にある確率が 95%」という読み方は正しくありません。動くのは区間のほうで、母平均は固定されています。平均 496.2 g、標本標準偏差 6.4 g の 16 個から $[492.79, 499.61]$ を出し、信頼係数を 90、95、99% と動かすと全幅が 5.61、6.82、9.43 になるところまで。1000 人で 52% という調査結果が $[0.489, 0.551]$ になり、半数を割る可能性が残ること、半幅 0.03 に $n \geq 1068$、0.01 に $n \geq 9604$ が要ることも。