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60 回中 14 回出た目があっても偶然〜カイ二乗検定の計算例題

さいころを 60 回振って、ある目が 14 回出ました。期待される 10 回より 4 回多い。

偏っているように見えますが、カイ二乗検定にかけると 、p 値は 0.639 です。まったく珍しくありません。

見た目の偏りと、統計としての偏り。この 2 つの距離を測るのがこの検定です。

適合度の検定

観測された度数が、想定した確率と合っているかを調べます[1]

が観測度数、 が期待度数です。差を 2 乗して、期待度数で割ってから足します。

期待度数で割るところが要点になります。100 に対する と、10 に対する では、意味の重さが違うためです。

を大きくすると、この量は自由度 のカイ二乗分布に近づきます[1]

例 1:さいころ 60 回

観測が 8、12、9、14、7、10 で、期待はどの目も です。

観測
180.4
2120.4
390.1
4141.6
570.9
6100.0

合計は 3.40。自由度は で、上側 5% 点は 11.0705 です。

まったく届きません。p 値は 0.639 で、この程度のばらつきは 6 割の確率で起きます。

自由度が でなく なのは、6 つの度数の合計が 60 に決まっているためです。5 つ決まれば残り 1 つも決まる。

独立性の検定

2 つの分類が関係しているかを調べる場合も、同じ統計量を使います[2]

行と列に分けた表を作り、独立だと仮定したときの期待度数を出します。

が行の合計、 が列の合計、 が総数です。独立なら、行の割合が列によらないはず、という考え方から出ます。

自由度は になります[2]。行と列の合計が決まっているぶん、自由に動ける枡が減る。

例 2:2 行 2 列の表

薬を使った 70 人のうち 45 人が改善、使わなかった 70 人のうち 30 人が改善したとします。

改善した人は合計 75 人、しなかった人は 65 人。総数は 140 です。

期待度数は 。どちらの行も同じ値になります。

観測期待
薬あり・改善4537.5
薬あり・不改善2532.5
薬なし・改善3037.5
薬なし・不改善4032.5

差はどの枡も です。2 乗して期待度数で割ると

合計は 6.4615 になります。自由度は で、上側 5% 点は 3.8415。p 値は 0.0110 です。

イェーツの補正

自由度 1 の場合、離散的な度数を連続分布で近似しているぶん、値が大きく出やすくなります。

差の絶対値から を引いてから 2 乗する形が使われます。

さきほどの表に当てると に下がり、p 値は 0.0110 から 0.0177 へ。

補正なし

イェーツの補正あり

どちらでも 5% は割りますが、値は 6 割ほど動きました。 が小さいほど差が大きくなります。

例 3:3 行 2 列の表

3 つの学年で、ある選択肢を選んだ人数が 30、25、15、選ばなかった人数が 20、25、35 だったとします。

各行の合計はどれも 50、列の合計は 70 と 80、総数は 150 です。

期待度数は 1 行目が 。どの行も同じになります。

、自由度は で、上側 5% 点は 5.9915。p 値は 0.0092 です。

学年が上がるほど選ぶ人が減っている、という傾向が数字にも出ました。

どの枡が効いているか

は合計なので、どの枡が押し上げたかは値そのものからは読めません。枡ごとの寄与を見ます。

さきほどの 2 行 2 列では、寄与が でした。4 つがほぼ均等で、特定の枡が突出してはいません。

期待度数の小さい枡ほど寄与が大きくなりやすい。分母が小さいためで、同じ人数のずれでも重く効きます。

関連の強さを測る

の値は に比例して大きくなります。同じ割合の偏りでも、人数を 10 倍にすれば値も 10 倍。

強さを見るには で割った量を使います。行と列のうち小さいほうから 1 を引いた数で、さらに割る。

2 行 2 列の例では 。3 行 2 列の例では です。

値は前者が 0.0110、後者が 0.0092 とほぼ同じですが、関連の強さは後者のほうが上でした。 と強さは別の量です。

期待度数が小さいとき

近似が成り立つのは を大きくした極限です[1]。期待度数が小さい枡があると、この近似が怪しくなります。

目安として、期待度数が 5 を下回る枡があれば注意します。カテゴリをまとめるか、正確確率の方法へ切りかえる。

観測が 2、3、15 で期待が 4、4、12 という場合、 が出ますが、この値をカイ二乗分布と比べる根拠は弱くなります。

問題になるのは観測度数ではなく期待度数のほうです。観測が でも、期待が十分大きければ困りません。

逆に観測が大きくても、期待が の枡があれば、その枡の寄与が不安定になります。

手順のまとめ

期待度数を出す

枡ごとに を計算する

全部足して とする

自由度を数えてパーセント点と比べる

自由度の数え方だけが型ごとに違います。適合度なら 、独立性なら 、母数を推定していればさらに減ります[1]

4 行 3 列の分割表で独立性を調べます。自由度はいくつですか。

  • 6
  • 12
  • 11
__RESULT__

です。12 は枡の総数、11 は枡の総数から 1 を引いた値で、行と列の合計が決まっていることを数え落としています。

差の大きさをそのまま見るのではなく、期待度数で割ってから足す。この一手で、大きい枡と小さい枡を同じ物差しに乗せています。

参考文献

Chi-squared test. Encyclopedia of Mathematics.
Contingency Table Approach. NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods.
Chi-Square Test for the Variance. NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods.
さいころ 60 回で 8、12、9、14、7、10。ある目が期待より 4 回多くても $\chi^2 = 3.40$ で、自由度 5 の上側 5% 点 11.07 には遠く届きません。p 値は 0.639。差をそのまま見るのではなく期待度数で割ってから足すので、大きい枡と小さい枡が同じ物差しに乗ります。$2 \times 2$ の分割表で期待度数 $r_ic_j/n$ を出し、$\chi^2 = 6.4615$ からイェーツの補正で 5.6287 へ動くところ、$3 \times 2$ で自由度 $(r-1)(c-1) = 2$ を数えるところまで。$p$ がほぼ同じでもクラメールの $V$ が 0.215 と 0.250 で違う例、期待度数 5 未満の枡が出たときの扱いも。