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精度を「3 分の 1」にすると標本サイズは 9 倍になる

世論調査で誤差を ポイントに収めるには 1068 人が要ります。 ポイントにするなら 9604 人。

精度を 3 分の 1 にすると、人数は 9 倍。 が分母で 2 乗になっているためです。

必要な人数を決める計算は、この形をどう読むかに尽きます。

区間の幅から逆算する

比率の 95% 信頼区間の半幅は でした。これを 以下にしたい、として について解きます。

が分かっていないので、 が最大になる を置きます。最悪の場合でも足りる人数になる。

例 1:比率の調査

半幅を変えたときの必要な人数です。

半幅必要な人数1 つ前の何倍
97—
3854.0
10682.8
96049.0

半幅を半分にするたびに人数が 4 倍。世論調査が 1000 人前後で止まりがちなのは、この先の値上がりが急なためです。

ポイントから ポイントへ進めるのに、9 倍の費用がかかる。得られる精度は 3 倍にしかなりません。

例 2:平均の調査

平均を推定する場合は、 の代わりに が入ります。

として計算します。半幅 なら 16 人、 なら 97 人、 なら 385 人、 なら 1537 人。

が分からないと計算できません。予備調査の値を使うか、過去のデータから見積もることになります。

を小さめに見積もると必要な人数を過小に見積もることになります。安全側に倒すなら、大きめの を置く。

範囲が分かっているなら、 という粗い当てはめもよく使われます。

検出力から逆算する

検定をするなら、区間の幅ではなく検出力から決めます。2 群の平均を比べる場合、各群に必要な人数は次の形です。

は効果量で、差を標準偏差で割った値。 は検出力に対応する点で、80% なら 0.8416、90% なら 1.2816 です。

効果量各群の人数(検出力 80%)
0.2393
0.563
0.825
1.016

効果量 0.5 で各群 63 人。検出力を 90% に上げると 85 人になります。

ここでも が分母の 2 乗です。拾いたい差が半分になれば、人数は 4 倍。

効果量をどう決めるか

計算に必要な は、統計の外側から持ってきます。この分野で意味のある差はどれくらいか、という判断です。

過去の研究から見積もる、実務上の意味から決める、予備調査から推定する。どれを使ったかは記録しておきます。

慣習の目安をそのまま当てると、必要な人数を小さく見積もることになりがちです。分野ごとに実際の効果量を測り直すと、目安より小さい値が出ることが多い。

4 つの数のうち 3 つを決めれば残りが決まる

検出力の計算に出てくるのは、有意水準、検出力、効果量、標本の大きさの 4 つです。

このうち 3 つを決めると、残る 1 つが決まります。どれを未知数にするかで、問いの意味が変わる。

設計の段階では標本の大きさを未知数にします。 と検出力と効果量を決めて、必要な を出す。

標本の数が先に決まっている場合は、効果量を未知数にします。この人数で拾える差はどこまでか、を出す形です。

拾えない大きさの差しか期待できないと分かったなら、調べる前に設計を変えるか、調べること自体をやめる判断もあります。

例 3:試験の設計を最後まで通す

新しい指導法が従来より効くかを調べる、という設定で最後まで計算します。

意味のある差は 5 点、これまでの標準偏差は 10 点でした。効果量は 。

両側 5%、検出力 80% とすると、各群 63 人です。2 群で 126 人。

途中でやめる人が 2 割いると見込むなら、 人ずつ集めます。合わせて 158 人。

学校 1 校あたり 40 人しか集まらないなら、4 校が要ります。ここまで出して初めて、実行できるかどうかが判断できる。

もし 2 校しか使えないなら、80 人で 2 群に分けて各群 40 人。この人数で 80% の検出力を保つには、効果量が 0.63 以上でないと届きません。

5 点の差を拾いたいのに 6.3 点の差でないと拾えない設計なら、始める前に分かるほうがよい。

母集団が小さいとき

母集団そのものが有限で小さい場合、上の式は過大になります。修正が入ります。

が修正前の人数、 が母集団の大きさです。

母集団 修正後の人数
500341
1000517
10000966
1000001057

の場合です。母集団が 10 万を超えるとほとんど修正されません。

母集団が無限に大きいかどうかは効いていない、と読めます。効いているのは標本の絶対数のほう。

回収率と脱落

計算で出るのは、最後に手元に残る人数です。実際に声をかける人数は、これより多く要ります。

回答率 60% を見込むなら 人へ配る。脱落 20% を見込むなら、各群 人を組み入れる。

必要な有効回答数を出す

回収率や脱落率で割る

実際に接触する人数を決める

割り算の順序を逆にすると足りません。1068 人に配って 60% が返ってくれば 641 人で、目標に届きません。

比率の調査で半幅を ポイントから ポイントにしたい。人数はどうなりますか。

  • 2 倍
  • 4 倍
  • 8 倍
__RESULT__

必要な人数は に反比例します。 を半分にすると が 4 分の 1 になるので、人数は 4 倍。 で 601 人なら、 では 2401 人が要ります。

精度も検出力も、 の 2 乗で人数に跳ね返る。調べる前にこの計算を通しておけば、届かない設計に気づけます。

出典

Confidence estimation. Encyclopedia of Mathematics.
Power of a statistical test. Encyclopedia of Mathematics.
Christopher R. Brydges, *Effect Size Guidelines, Sample Size Calculations, and Statistical Power in Gerontology*. Innovation in Aging 3(4), 2019.
誤差を $\pm 3$ ポイントに収めるなら 1068 人、$\pm 1$ ポイントなら 9604 人。$d$ が分母の 2 乗にいるので、精度を上げる費用は急に立ち上がります。比率なら $p = 0.5$ を置いて $0.9604/d^2$、平均なら $(z\sigma/d)^2$、2 群の比較なら $2(z_{\alpha/2}+z_\beta)^2/d^2$。効果量 0.5 で各群 63 人、検出力を 90% に上げると 85 人です。有意水準、検出力、効果量、標本の大きさの 4 つのうち 3 つを決めれば残りが決まる。各群 40 人しか集められないなら拾えるのは効果量 0.63 以上、という逆向きの計算もできます。有限母集団の修正と、回収率で割る順序まで。