sin75∘cos15∘ を電卓なしで計算します。かけ算のままでは進みませんが、足し算に直せば片づく。
sinαcosβ=21{sin(α+β)+sin(α−β)}
α=75∘、β=15∘ を入れると 21(sin90∘+sin60∘)=21(1+23)=42+3。
これが積和の公式[1]。逆向きに、和を積へ直す和積の公式もある。
加法定理を足すか引くかだけ
新しい定理ではありません。加法定理を 2 つ並べて、足すか引くかした形[2]。
sin(α+β)sin(α−β)=sinαcosβ+cosαsinβ=sinαcosβ−cosαsinβ
辺々を足すと右辺の第 2 項が消えます。sin(α+β)+sin(α−β)=2sinαcosβ。
両辺を 2 で割れば、冒頭の式そのもの。引けば cosαsinβ の式になります。
cos の加法定理でも同じことをする。足せば cosαcosβ、引けば sinαsinβ が残る。
積和の 4 つ
| sinαcosβ | 21{sin(α+β)+sin(α−β)} |
| cosαsinβ | 21{sin(α+β)−sin(α−β)} |
| cosαcosβ | 21{cos(α+β)+cos(α−β)} |
| sinαsinβ | −21{cos(α+β)−cos(α−β)} |
最後の 1 つだけ先頭にマイナスがつきます。cos の加法定理で sinαsinβ の項に − がついているため[1]。
覚えるかわりに、その場で作り直せます。加法定理を 2 行書いて、足すか引くかを選ぶ。
sin どうしの積からは cos が、cos どうしの積からも cos が残ります。sin が残るのは混ざった積のとき。
かけ算のままでは積分もできず、0 になる条件も読めません。足し算にすると、項ごとにばらして扱えます。
和積の 4 つ
積和を逆向きに読みます。α+β=A、α−β=B と置き換える。
このとき α=2A+B、β=2A−B になる。
sinA+sinBsinA−sinBcosA+cosBcosA−cosB=2sin2A+Bcos2A−B=2cos2A+Bsin2A−B=2cos2A+Bcos2A−B=−2sin2A+Bsin2A−B
2A+B は 2 つの角の平均、2A−B は差の半分[1]。
cos の引き算だけ先頭が −2 になります。ここも積和のマイナスが引き継がれた形。
例:cos75° + cos15°
平均は 275+15=45∘、差の半分は 275−15=30∘。
cos75∘+cos15∘=2cos45∘cos30∘=2⋅22⋅23=26
加法定理からも確かめられます。cos75∘=46−2、cos15∘=46+2 なので、足すと 2 が消えて 426=26 になる。
75∘ も 15∘ も単独では根号が 2 つ並ぶ値ですが、足すと 1 つにまとまる。これが和積の効き目です。
因数分解の道具として使う
和積のいちばんの使い道は、方程式の因数分解。
sin3θ+sinθ=0 を解きます。左辺のままでは、共通因数が見えません。
和積を当てる。平均は 2θ、差の半分は θ です。
sin3θ+sinθ=2sin2θcosθ=0
積が 0 になったので、sin2θ=0 または cosθ=0 に分かれます。
0≤θ<2π なら、前者から θ=0, 2π, π, 23π、後者から θ=2π, 23π。
重なりを除いて θ=0, 2π, π, 23π が答え。
cos3θ−cosθ=0 なら −2sin2θsinθ=0。同じ手順で分かれます。
例:積分で次数を落とす
∫sin3xcosxdx は、積のままでは原始関数が見えません。
積和で開く。sin3xcosx=21(sin4x+sin2x)。
足し算になれば、項ごとに積分できます。
∫sin3xcosxdx=−81cos4x−41cos2x+C
sin2x や cos2x の積分も同じ発想。sin2x=21−cos2x と直してから積分します[1]。
かけ算は積分と相性が悪く、足し算は相性がよい。積和はその橋渡しをしています。
まちがえやすい点
sinαsinβ の先頭のマイナスを落とす誤りが多い。cos(α−β) から cos(α+β) を引く形。
21 を忘れる誤りも同じくらい多い。加法定理を足した時点で右辺が 2 倍になっているため。
和積では、平均と差の半分をとり違えやすい。sin の前にくるのは 2A+B、cos の前は 2A−B。
ただし sinA−sinB だけは順序がいれかわります。cos が平均、sin が差の半分。
確かめ方は A=B です。sinA−sinA=0 になるはずで、右辺は sin0=0 を含む形でなければならない。
cos5θcos3θ を和の形に直すとどれですか。
- 21(cos8θ+cos2θ)
- 21(cos8θ−cos2θ)
- cos8θ+cos2θ
__RESULT__
cosαcosβ=21{cos(α+β)+cos(α−β)} を使います。α=5θ、β=3θ なので 21(cos8θ+cos2θ) です。引き算になるのは sinαsinβ のほうで、そちらは先頭にマイナスもつきます。
和積のほうも確かめます。
sin50∘+sin10∘ を積の形に直すとどれですか。
- 2sin20∘cos30∘
- 2sin30∘cos20∘
- 2cos30∘sin20∘
__RESULT__
平均は 250+10=30∘、差の半分は 250−10=20∘ です。足し算では sin の前に平均がくるので 2sin30∘cos20∘ になります。sin30∘=21 なので、値は cos20∘ そのもの。2cos30∘sin20∘ は sin50∘−sin10∘ のほうの答えです。
加法定理を 2 行書き、足すか引くか。積和も和積も、そこから毎回作り直せます。
出典
É. Bouchet. Trigonométrie, Cours de PCSI, Proposition 1.8 の注(積和の 3 本と、cost+cos2t を因数分解する例).
$\sin 75^\circ\cos 15^\circ$ は掛け算のままでは進みませんが、$\dfrac{1}{2}(\sin 90^\circ + \sin 60^\circ)$ に開けば $\dfrac{2+\sqrt{3}}{4}$ と出ます。積和も和積も新しい定理ではなく、加法定理を 2 行並べて足すか引くかしただけ。8 本を覚えるより、その場で作り直すほうが速い。$\sin 3\theta + \sin\theta = 2\sin 2\theta\cos\theta$ と直せば方程式が因数分解でき、$\int \sin 3x\cos x\,dx$ は和に開いてから積めます。$\sin\alpha\sin\beta$ だけ先頭にマイナスが付く理由も扱いました。
cosαcosβ=21{cos(α+β)+cos(α−β)} を使います。α=5θ、β=3θ なので 21(cos8θ+cos2θ) です。引き算になるのは sinαsinβ のほうで、そちらは先頭にマイナスもつきます。