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arcsin と arccos と arctan の入口 - 角度を答えにする関数

を の形に書き直したい。そう思って作られたのが逆三角関数です。

書き方は 。値は です。

ところが の解は だけではありません。 も、 も解です。

無限にある解のうち 1 つだけを選ぶ。その選び方を決めるところが、逆三角関数のいちばんの中身になります。

関数にするには 1 つに絞るしかない

関数は、入れた値 1 つに対して出る値が 1 つでなければなりません。

のグラフに横線を引くと、交点が無限に並びます。逆向きに読むと、答えが定まらない。

そこで の定義域を狭めます。1 回だけ上がって 1 回だけ下がる、その一部分だけを使う。

選ばれたのは の区間です[1]。ここでは は から まで単調に増えます。

横線と 1 回しか交わらないので、逆向きに読んでも答えが 1 つに決まる。この値を主値と呼びます。

3 つの値域

切る区間は関数ごとに違います。単調になり、値をすべてカバーする区間が選ばれます[1]。

関数入れられる値出てくる角
すべての実数

だけ から です。 はこの区間で から へ単調に減ります。

から で切ると、 は を中心に対称になり単調にならない。だから区間をずらしています。

の両端は です。 が で定義されないので、端点が入りません。

と には、足すと になるという関係があります。

と置くと です。 は から に収まるので、これが 。

例:値を求める

を求めます。 が になる角のうち、 から にあるもの。

候補は と ですが、後者は区間の外です。答えは 。

はどうでしょう。 が になるのは と 。

から に入るのは です。負の値を入れても、出てくる角は正になります。

は です。 は奇関数なので、負の値には負の角が返ります。

戻ってこないことがある

は、いつでも に戻るわけではありません。

なら 、 で戻ります。

では違います。 ですが、。

は の値域の外なので、戻ってこられません[1]。

戻るのは が から にあるときだけ。それ以外では、値域の中の相棒に化けます。

逆の順序ならいつでも戻ります。 は でつねに成り立つ。

組み合わせた式を計算する

を の式で書きます。 と置くと です。

から 。

の値域は から で、この範囲では が 以上です。符号は正に決まる。

値域が決まっていると、 が自動的に片づきます。これが主値を決めておく利点です[1]。

も同じ形になります。 の値域では が 以上なので 。

電卓の sin⁻¹ ボタン

関数電卓には と書かれたボタンがあります。これが です。

は ではありません。指数の とは意味が違います。

を入れて を押すと と出る。度の表示なら 、ラジアン表示なら です。

電卓が返すのも主値だけ。 は出てきません。ほかの解が要るなら、自分で足します。

のこと。 の逆をたどって角を返す

のこと。まったく別の値になる

まちがえやすい点

の値域を から とする誤りが多い。それは のほうです。

は から 。負の値を入れたら負の角が返る、と覚えるととり違えません。

に負の値を入れると、返る角は鈍角になります。負の角にはなりません。

をいつでも成り立つと思い込む誤りも起きます。 が値域の中にあるときだけです。

のように から の外を入れると、答えがありません。 が になる角は存在しないため。

の値はどれですか。

__RESULT__

の値域は です。 を満たす角のうちこの範囲にあるのは になります。 は が正なので当てはまらず、 は値域を越えています。

合成の形も確かめます。

の値はどれですか。

__RESULT__

です。 は値域 の中から選ぶので になります。 は値域の外なので、そのままでは戻ってきません。

解が無限にあるところから 1 つを選ぶ。逆三角関数の中身は、その選び方の約束ごとです。

出典

Inverse Trigonometric Functions. Algebra and Trigonometry 2e, OpenStax(値域の切り方、合成の扱い、).
$\sin\theta = \dfrac{1}{2}$ を $\theta = \cdots$ の形に書きたい、という動機から作られた関数です。ただし解は $\dfrac{\pi}{6}$ のほかにも無限にある。そこで定義域を切って 1 つだけ選びます。$\arcsin$ は $-\dfrac{\pi}{2}$ から $\dfrac{\pi}{2}$、$\arccos$ だけ $0$ から $\pi$ になる理由は、$\cos$ がその区間でしか単調にならないため。$\arcsin\left(\sin\dfrac{5}{6}\pi\right)$ が $\dfrac{5}{6}\pi$ に戻らない仕組みと、値域が決まっていると $\sin(\arccos x) = \sqrt{1-x^2}$ の符号が自動で片づく話まで。