加法定理は 6 つあります。証明がいるのは cos(α−β) の 1 つだけです。
cos(α−β)=cosαcosβ+sinαsinβ
残りの 5 つは、β を −β に替え、sinθ=cos(2π−θ) を挟み、最後に割り算をすれば導ける。
この 1 つを単位円上の 2 点の距離から示します。
単位円の弦を 2 通りに測る
単位円上に P(cosα, sinα) と Q(cosβ, sinβ) をとる。
2 点の距離は、この 2 つの座標から計算できる。
PQ2=(cosα−cosβ)2+(sinα−sinβ)2
展開して、α どうし、β どうしをまとめる。
PQ2=cos2α−2cosαcosβ+cos2β+sin2α−2sinαsinβ+sin2β=(cos2α+sin2α)+(cos2β+sin2β)−2(cosαcosβ+sinαsinβ)=2−2(cosαcosβ+sinαsinβ)
α と β の 2 か所で sin2θ+cos2θ=1 を使いました。
図を −β だけ回す
P と Q をまとめて −β だけ回します。
Q の角は β−β=0 になり、Q が (1, 0) へ動く。P の角は α−β になる。
移った先を A(cos(α−β), sin(α−β))、B(1, 0) と呼びます。
回しても 2 点の距離は変わらないため、AB も座標から同じように計算できます。
AB2=(cos(α−β)−1)2+sin2(α−β)=cos2(α−β)−2cos(α−β)+1+sin2(α−β)=2−2cos(α−β)
同じ長さの 2 乗を 2 通りに書いたので、等号で結べる。
2−2(cosαcosβ+sinαsinβ)=2−2cos(α−β)
両辺から 2 を引き、−2 で割ると cos(α−β)=cosαcosβ+sinαsinβ。
α と β の大きさに条件をつけていません。座標と距離しか使っていないため、どんな角でも通る。
残りの 5 つを導く
β を −β に替えます。cos(−β)=cosβ で符号は変わらず、sin(−β)=−sinβ で符号が変わる。
cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ
sin のほうは sinθ=cos(2π−θ) を挟む。
sin(α+β)=cos(2π−α−β)=cos((2π−α)−β)=cos(2π−α)cosβ+sin(2π−α)sinβ
cos(2π−α)=sinα、sin(2π−α)=cosα を入れると sinαcosβ+cosαsinβ になる。
tan の 2 つは cos(α±β)sin(α±β) を計算し、分子と分母を cosαcosβ で割れば求められる。
π/2 - θ の関係を挟んで sin の 2 つ
証明 2:内積を使う
OA=(cosα, sinα)、OB=(cosβ, sinβ) とします。大きさはどちらも 1。
成分で計算すると cosαcosβ+sinαsinβ。定義で計算すると ∣OA∣∣OB∣cos(α−β) で、cos(α−β) だけが残ります。
2 つの計算は同じ内積を指しています。等号で結べば加法定理そのもの。
証明 3:面積を使う
鋭角に限れば、面積でも示せる。
頂点の角が α+β の三角形をとり、その頂点から底辺へ垂線を下ろす。垂線の長さを h とし、角が α と β に分かれるようにとる。
2 辺と挟む角から面積を書きます。2 辺は cosαh と cosβh。
21⋅cosαh⋅cosβh⋅sin(α+β)
底辺と高さから書くと 21(htanα+htanβ)⋅h になる。どちらも同じ三角形の面積です。両辺を 2h2 で割ります。
cosαcosβsin(α+β)=tanα+tanβ
右辺を通分すると cosαcosβsinαcosβ+cosαsinβ。両辺に cosαcosβ をかければ sin の加法定理です。
この図は、α も β も鋭角で和も 90∘ 未満のときしか描けない。
弦と内積による証明
座標だけを使うので、角の大きさに条件がつかない。一般の角でそのまま通る
面積による証明
図がそのまま式になるが、鋭角のときしか描けない。ほかの角へ広げるには別の議論が必要
示したい式を途中で使わない
証明のなかで、示したい式そのものを使ってしまうことがあります。たとえば sin の 2 倍角を途中で使う形。
2 倍角は加法定理から導いた式だから、それを使って加法定理を示すと堂々巡りになる。
弦による証明で使う道具は、座標と sin2θ+cos2θ=1 だけです。もとをたどれば三平方の定理で、加法定理を経由しない。
内積による証明も同じように確かめます。∣a∣∣b∣cosθ の根拠は余弦定理で、余弦定理は三平方の定理までさかのぼれる。
弦による証明で、PQ2 を展開したあとに使う関係はどれですか。
- sin2θ+cos2θ=1
- sin2θ=2sinθcosθ
- tanθ=cosθsinθ
__RESULT__
展開すると cos2α+sin2α と cos2β+sin2β が並びます。どちらも 1 にまとまるので、使うのは相互関係のほうです。2 倍角は加法定理から導いた式です。ここで当てはめると、示したい式を先に使ったことになります。
P(cosα, sinα) と Q(cosβ, sinβ) を −β だけ回すと、(1, 0) へ動くのはどちらですか。
__RESULT__
角から β を引くので、Q の角が β−β=0 になります。P の角は α−β に変わり、こちらが A です。P と B を対応させると、そのあとの計算が合いません。
1 つの量を 2 通りに計算して、等号で結ぶ。弦でも内積でも面積でも、組み立ては変わりません。
$\cos(\alpha - \beta)$ さえ示せば、残りの 5 つは置きかえと割り算で作れます。$\beta$ を $-\beta$ に替え、$\sin\theta = \cos\left(\dfrac{\pi}{2}-\theta\right)$ を挟み、最後に割る。その 1 つは、単位円上の 2 点の距離を座標から計算し、図を $-\beta$ 回してもう一度計算すれば示せます。同じ長さを 2 通りに書いて等号で結ぶ、という組み立ては内積でも面積でも変わらない。面積による証明が鋭角にしか使えない理由と、2 倍角を途中で使うと堂々巡りになる話まで。
展開すると cos2α+sin2α と cos2β+sin2β が並びます。どちらも 1 にまとまるので、使うのは相互関係のほうです。2 倍角は加法定理から導いた式です。ここで当てはめると、示したい式を先に使ったことになります。