sin3θ=3sinθ−4sin3θ,cos3θ=4cos3θ−3cosθ
係数の 3 と 4 が入れ替わり、符号も逆になっています。覚えようとすると、まず混ざります。
導くほうが速い。3θ=2θ+θ と割れば、2 倍角と加法定理だけで出ます[1]。
30 秒あれば復元できるので、覚える対象から外してかまいません。
導き方
sin3θ=sin(2θ+θ)=sin2θcosθ+cos2θsinθ から始めます。
sin2θ=2sinθcosθ を入れ、cos2θ は sin だけの形 1−2sin2θ を選びます。
2sinθcos2θ+(1−2sin2θ)sinθ
cos2θ=1−sin2θ で cos を消します。
2sinθ−2sin3θ+sinθ−2sin3θ=3sinθ−4sin3θ。
cos3θ も同じ手順です。cos2θ は cos だけの形 2cos2θ−1 を選ぶ。
(2cos2θ−1)cosθ−2sinθcosθ⋅sinθ=2cos3θ−cosθ−2cosθ(1−cos2θ)=4cos3θ−3cosθ。
選ぶ形を間違えなければ、途中で sin と cos が混ざりません。
検算のしかた
出した式が正しいかは、θ に値を入れれば分かります。
θ=2π とします。左辺は sin23π=−1。
右辺は 3×1−4×1=−1。合いました。
cos のほうも θ=0 で確かめます。左辺は cos0=1、右辺は 4−3=1。
係数を入れ替えて 4sinθ−3sin3θ としていたら、4−3=1=−1 でずれます。1 か所入れれば見つかる。
値を出す型
sinθ=21 のとき sin3θ を出します。θ が何度かは要りません。
sin3θ=3×21−4×81=23−21=1
sinθ=21 を満たす鋭角は 30∘ で、sin90∘=1。一致しました。
cosθ=31 なら cos3θ=4×271−3×31=274−1=−2723。
この型では象限を調べる必要がありません。sin だけ、cos だけで書けているためです。
2 倍角では sin2θ=2sinθcosθ に両方が要りましたが、3 倍角は片方で済みます。
2 倍角
sin2θ には sinθ と cosθ の両方が要る。象限から符号を決める手順が入る
3 倍角
sin3θ は sinθ だけで書ける。値を入れるだけで終わる
3 次方程式に化ける型
cos3θ=21 を 0≤θ<2π で解きます。
3θ の範囲を先に伸ばします。0≤3θ<6π で、3 周ぶん。
cos が 21 になるのは 1 周につき 2 回なので、3 周で 6 回です。
3θ=3π, 35π, 37π, 311π, 313π, 317π。
3 で割って θ=9π, 95π, 97π, 911π, 913π, 917π の 6 つ。
公式を使わず、範囲を伸ばして解いたほうが速い場合です。公式に頼ると 3 次方程式になります。
4cos3θ−3cosθ=21 を解くのは大変ですが、答えは同じ 6 つになります。
cos 20° が満たす式
θ=20∘ を入れます。3θ=60∘ なので cos3θ=21。
4cos320∘−3cos20∘=21
両辺を 2 倍して整理すると 8x3−6x−1=0。ここで x=cos20∘ です。
x=21 や x=41 を入れても 0 になりません。分数の解を持たない 3 次方程式です。
cos20∘≒0.9397 は、根号を有限個組み合わせても書けないことが知られています。
30∘ や 45∘ の値がきれいなのに 20∘ が書けない。3 倍角の式が、その境目を作っています。
次数を下げる向き
sin3θ を積分したいとき、3 倍角の式を逆に解きます。
sin3θ=43sinθ−sin3θ,cos3θ=4cos3θ+3cosθ
3 次が 1 次式の和になりました。これならそのまま積めます。
∫sin3θdθ=−43cosθ+121cos3θ+C
cos3 のほうは符号がそろっていて、cos3θ に + が付きます。
2 乗なら半角、3 乗なら 3 倍角。落とす次数で使う公式が変わります[2]。
sin3θ の積分には もう 1 つの道 があります。
sinθ を 1 つ外して sinθ(1−cos2θ) とし、u=cosθ と置く方法です。答えの見た目は違いますが、差は定数になります。
まちがえやすい点
係数の 3 と 4 を入れ替える誤りが最も多い。sin が 3,−4、cos が 4,−3 です。
先頭の項も入れ替わります。sin は 1 次が先、cos は 3 次が先。
sin3θ=3sinθ とする誤りも根強い。θ=30∘ で試すと 1 と 1.5 で違います。
方程式では、公式に直さず範囲を伸ばして解くほうが速い場合があります。両方を見比べてから選びます。
次数を下げる向きで分母の 4 を落とす誤りもよく出ます。4sin3θ=3sinθ−sin3θ から割ります。
cosθ=23 のとき、cos3θ はどれですか。
__RESULT__
4cos3θ−3cosθ に入れます。cos3θ=833 なので 4×833−3×23=233−233=0 です。cosθ=23 の鋭角は 30∘ で、cos90∘=0 とも合います。
次数を下げる向きも確かめます。
sin3θ を 1 次式の和に直すとどれですか。
- 43sinθ−sin3θ
- 4sin3θ−3sinθ
- 43sinθ+sin3θ
__RESULT__
sin3θ=3sinθ−4sin3θ を sin3θ について解きます。4sin3θ=3sinθ−sin3θ なので、4 で割って 43sinθ−sin3θ です。θ=2π を入れると左辺 1、右辺 43+1=1 で合います。
2θ+θ に割る。それだけで 3 倍角は毎回作れます。覚える式ではありません。
出典
Double-Angle, Half-Angle, and Reduction Formulas. Algebra and Trigonometry 2e, OpenStax(2 倍角と、そこから重ねる形). É. Bouchet. Trigonométrie, Cours de PCSI, Proposition 1.10(次数を下げる形と、その積分での使い道).
$\sin 3\theta = 3\sin\theta - 4\sin^3\theta$ と $\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta$ は、$3$ と $4$ が入れ替わるうえ先頭の項も入れ替わります。覚えようとすると混ざる。$3\theta = 2\theta + \theta$ に割れば 30 秒で復元できます。$\theta = \dfrac{\pi}{2}$ を入れて $-1$ になるかを見る検算つき。$\cos 3\theta = \dfrac{1}{2}$ は公式より範囲を伸ばしたほうが速い理由、$8x^3 - 6x - 1 = 0$ が $\cos 20^\circ$ の満たす式になる話、$\sin^3\theta$ を 1 次式に落として積む手順まで。
4cos3θ−3cosθ に入れます。cos3θ=833 なので 4×833−3×23=233−233=0 です。cosθ=23 の鋭角は 30∘ で、cos90∘=0 とも合います。