sin75∘sin15∘ は 41 です。どちらも二重根号を含む値なのに、掛けると分数になります。
積和を当てるだけで出ます。
sin75∘sin15∘=21{cos60∘−cos90∘}=21(21−0)=41
掛け算のままでは進まない式が、足し算になった途端に片づく。積和はそのための道具です。
4 本をその場で作る
覚えていなくても、加法定理を 2 行書けば作れます[1]。
cos(α−β)=cosαcosβ+sinαsinβ と cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ。
引くと cos(α−β)−cos(α+β)=2sinαsinβ です。
sinαsinβ=21{cos(α−β)−cos(α+β)}
足せば cosαcosβ の式が出ます。今度は差が先ではなく、和と差の順が入れ替わらない形。
cosαcosβ=21{cos(α+β)+cos(α−β)}
sin の加法定理を足せば sinαcosβ が出ます[2]。4 本すべてが 2 行から生まれます。
| sinαcosβ | 21{sin(α+β)+sin(α−β)} |
| cosαsinβ | 21{sin(α+β)−sin(α−β)} |
| cosαcosβ | 21{cos(α+β)+cos(α−β)} |
| sinαsinβ | 21{cos(α−β)−cos(α+β)} |
sin どうしの積だけ、差が先に来ます。順を逆にすると符号が反対になる。
例:値を出す
cos75∘cos15∘ を求めます。cos どうしなので和が先。
21{cos90∘+cos60∘}=21(0+21)=41。
sin75∘sin15∘ と同じ値になりました。cos15∘=sin75∘ なので、当然です。
sin105∘cos15∘ も見ます。混ざった積なので sin の式。
21{sin120∘+sin90∘}=21(23+1)=43+2。
数値では 0.933。sin105∘=0.9659、cos15∘=0.9659 の積と合っています。
例:3 つの積
sin20∘sin40∘sin80∘ を求めます。3 つ並んでいますが、2 つずつ処理します。
後ろの 2 つを積和で開きます。sin40∘sin80∘=21{cos40∘−cos120∘}。
cos120∘=−21 なので 21(cos40∘+21) です。
もとの式に戻すと sin20∘×21cos40∘+sin20∘×41。
前の項にもう一度積和を当てます。sin20∘cos40∘=21{sin60∘+sin(−20∘)}。
sin(−20∘)=−sin20∘ なので 21(sin60∘−sin20∘)。
全体は 41sin60∘−41sin20∘+41sin20∘ となり、後ろの 2 項が消えます。
sin20∘sin40∘sin80∘=41sin60∘=83
数値では 0.2165。0.342×0.643×0.985 と一致します。
3 つの積では、消える項が出るまで開き続ける のが要です。
途中で sin20∘ が 2 回現れ、符号が反対になって打ち消し合いました。開く順を変えても、どこかで同じことが起きます。
積分で使う
∫cos5xcos3xdx を求めます。積のままでは原始関数がありません。
cos どうしなので和が先。21{cos8x+cos2x}。
∫cos5xcos3xdx=161sin8x+41sin2x+C
21 に、それぞれの中身の 81 と 21 が掛かった係数です。
定積分にすると、もっと目立つことが起きます。
∫0πsin2xsin3xdx=21∫0π(cosx−cos5x)dx=21[sinx−5sin5x]0π=0
sinπ=0、sin5π=0 なので、上端も下端も 0。値が丸ごと消えます。
中身の数が違う sin どうしを、0 から π で積むと 0 になる。この性質は音や波の解析で使われます。
中身が同じときだけ残る
∫0πsin3xsin3xdx はどうなるでしょう。積和を当てます。
sin3xsin3x=21{cos0−cos6x}=21(1−cos6x)。
cos0=1 という定数が出てきました。ここが違いです。
∫0π21−cos6xdx=[2x−12sin6x]0π=2π
2π が残ります。中身が同じときだけ、差が 0 になって定数項が現れる。
数が違えば cos が 2 つ並び、どちらも積分すると 0 になります。だから丸ごと消える。
まちがえやすい点
sinαsinβ の順を逆にする誤りが最も多い。差の cos が先で、和の cos を引きます。
α=β を入れて確かめられます。左辺は sin2α≥0、右辺は 21−cos2α≥0。
順を逆にすると 2cos2α−1 となり、負になってしまいます。
21 を落とす誤りも同じくらい起きます。加法定理を足した時点で 2 倍になっているためです。
sin(α−β) が負の角になる場合も見落としやすい。sin(−20∘)=−sin20∘ と符号を出します。
sin105∘sin15∘ の値はどれですか。
__RESULT__
sin どうしなので 21{cos90∘−cos120∘} です。cos90∘=0、cos120∘=−21 なので 21(0+21)=41 になります。差が先、和が後という順が要です。
積分の形も確かめます。
∫0πcos2xcos4xdx の値はどれですか。
__RESULT__
積和で 21{cos6x+cos2x} に開きます。∫0πcos6xdx も ∫0πcos2xdx も 0 なので、全体が 0 です。中身の数が違うので定数項が出ず、値が残りません。
加法定理を 2 行書き、足すか引くか。積和の計算は、毎回そこから作り直せます。
参考文献
Sum-to-Product and Product-to-Sum Formulas. Algebra and Trigonometry 2e, OpenStax(4 本と、加法定理から足し引きで作る導き方). É. Bouchet. Trigonométrie, Cours de PCSI, Proposition 1.8 の注(積和の 3 本).
$\sin 75^\circ\sin 15^\circ$ はどちらも二重根号を含む値なのに、積は $\dfrac{1}{4}$ です。積和で開けば $\dfrac{1}{2}(\cos 60^\circ - \cos 90^\circ)$ になるだけ。4 本を覚える必要はなく、加法定理を 2 行書いて足すか引くかすれば毎回作れます。$\sin$ どうしの積だけ差の $\cos$ が先に来る点は、$\alpha = \beta$ を入れて負にならないかで確かめられる。$\sin 20^\circ\sin 40^\circ\sin 80^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{8}$ を 2 段階で開く計算と、中身の数が違う積分が $0$ になる仕組みまで。
sin どうしなので 21{cos90∘−cos120∘} です。cos90∘=0、cos120∘=−21 なので 21(0+21)=41 になります。差が先、和が後という順が要です。