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光の速さの測定〜レーマー・フィゾー・マイケルソンの方法

光は 1 秒で地球を 7 周半する。 離れた鏡まで往復させても、かかる時間は マイクロ秒。

人の反応は 秒ほどなので、手で合図を送り合っても届いた瞬間はつかめません。山の上でランタンを開け閉めしても、測れるのは反応の遅さだけ。

抜け道は 2 つあります。距離のほうを太陽系の大きさまで伸ばすか、時間のほうを回る仕掛けで細かく刻むか。

木星の衛星が遅れる

木星の衛星イオは、 時間ほどで木星を 1 周する[1]。1 周ごとに木星の影へ入るので、地上からは規則正しい食が見える。

ところがこの食の時刻が、季節によってずれる。地球が木星へ近づく時期は早まり、遠ざかる時期は遅れる。

レーマーは 1676 年、11 月 9 日の食が予報より 分遅れると予告し、そのとおりになりました[1]。

イオの公転そのものが変わったわけではない。変わったのは、知らせを運ぶ光が渡る距離のほう。

地球が公転で反対側へ回ると、木星までの距離が軌道の直径ぶん増える。増えたぶんを光が渡る時間が、そのまま遅れになる。

レーマーの見積もり

レーマーは、光が地球の軌道の直径を渡るのに約 分かかると述べました[1]。

いまの値は 分です。ずれの原因は、当時の距離の見積もりが小さすぎたこと[1]。

彼は 1 公転あたりの距離の変化を地球 個ぶんと見ましたが、実際は 個ぶん。 割ほど足りていません[1]。

例:レーマーの値から光速を出す

地球の軌道の直径を 、渡る時間を 分 秒とします。

真の値の 割ほど。 世紀に、桁が合う値が出ていたことになる。

例:正しい時間で計算し直す

渡る時間を 分 秒に直します。

いまの値と一致しました。方法そのものは正しく、入れた数値だけが古かった。

歯車で時間を刻む

地上で測るには、 秒の単位で光を切る仕掛けが要ります。フィゾーは 1849 年、回る歯車でそれをやりました[2]。

パリ郊外のシュレーヌから、 離れたモンマルトルの鏡へ光を送ります。光は歯車の歯と歯のすきまを通って出ていき、そのまま戻ってくる。

歯車がゆっくり回っていれば、光は同じすきまを通って目に届きます。速くすると、戻ったときに隣の歯が来ていて光が消える。

歯車の式

歯の数を 、1 秒あたりの回転数を とします。1 回転で歯とすきまが 組ずつ通る。

すきまの中央から隣の歯の中央までは、 回転ぶん。かかる時間は次のとおり。

光の往復にかかる時間 がこれと等しくなったとき、最初に光が消えます。

例:フィゾーの数値を入れる

歯の数 、距離 、最初に消えた回転数 回転毎秒とします。

フィゾー自身が発表した値は でした[2]。真の値より パーセントほど大きい。

天体を使わずに地上だけで測った、最初の値です。

例:次に消えるのはいつか

回転をさらに上げていくと、光は明るくなったり消えたりを繰り返す。

隣の歯まで進む時間の奇数倍のときに消えるので、消える回転数は の奇数倍。 回目は 回転毎秒です。

偶数倍のときは、すきま 1 つぶんずれて再び通り抜けます。 回転毎秒でいちばん明るくなる。

この繰り返しが見えること自体が、測定が正しいことの確かめになる。

回転鏡に置き換える

歯車のかわりに、回る鏡を使う手もあります。フーコーがこの形に改め、のちにマイケルソンが精度を押し上げました[3]。

マイケルソンは 1924 年から 1926 年にかけて、ウィルソン山からサンアントニオ山までの マイルを使いました[3]。八角形の鏡を空気で回します。

光は 1 つの面ではね返って遠くの鏡へ向かい、戻ってきて別の面ではね返ります。

戻るまでに鏡がちょうど 回転していれば、次の面が同じ角度で待っている。像は動かずに見えます。

回転がずれていると像も横へずれるので、像が止まる回転数を探せばよい。ここが測定の勘どころです。

八角鏡の式

回転にかかる時間は です。これが往復の時間と等しくなる。

例:マイケルソンの数値を入れる

片道 、回転数 回転毎秒とします[4]。

桁めまで合いました。歯車より 2 桁ほど精度が上がっている。

例:往復にかかる時間

往復の距離は です[4]。

万分の 秒ほど。この短さを、鏡の回転数という数えられる量に置き換えたところが工夫です[3]。

3 つの方法を並べる

方法測るもの置き換え先
レーマー食の遅れ軌道の直径と分
歯車光が消える回転数歯の数と回転数
回転鏡像が止まる回転数面の数と回転数

どれも共通しているのは、短い時間を直接測っていない点です。時間を数えられる量へ移している。

歯の数、面の数、回転数。どれも人の手で数えたり、音のうなりで合わせたりできる量です。

いまは測る側ではない

年から、光速は測る量ではなくなりました。メートルのほうを光速で決めているためです。

真空中の光速は ちょうどと定められています[5]。誤差はありません。

とは、光が真空中を 分の 秒で進む距離として決められています。

だから光速を測ると、出てくるのは光速ではなく「その物差しがどれだけ正確か」になる。

レーマーからマイケルソンまでの 年で、光速は測る対象から測る道具へ変わりました。

歯の数 の歯車を毎秒 回転させたところ、 先の鏡から戻った光がちょうど消えました。光速はいくらですか。

__RESULT__

です。実際の値より小さいので、この装置ではもっと速く回すか、鏡をもっと遠くへ置く必要があると分かります。

回転鏡のほうも確かめます。

八角鏡を使い、片道 の鏡から戻った像が静止しました。光速を とすると、鏡の回転数はいくらですか。

  • 回転毎秒
  • 回転毎秒
  • 回転毎秒
__RESULT__

から 回転毎秒になります。 は往復を片道と数えた値、 は次の面までを 1 回転と考えた値です。

よくあるミス

レーマーが光速そのものを測ったと考える。彼が出したのは、軌道の直径を渡る時間です。
歯車の式で を と書いてしまう。光は往復するので距離は 2 倍になります。
すきまから隣の歯までを 回転と数える。歯とすきまが交互なので 回転です。
八角鏡で 回転ではなく 1 回転と考える。面が 8 つあるので、次の面までは です。
消えるのは 1 つの回転数だけだと思う。奇数倍のたびに消えます。
いまも光速を測っていると考える。 年からは、光速でメートルを決めています。

短い時間は測れなくても、回った数なら数えられる。測れないものを測れるものへ移す。この一手だけで、 という値が 世紀の望遠鏡から出てきます。

参考

Ole Rømer and the Speed of Light. Optics & Photonics News, Optica.
*Appareil de Fizeau*. Mus'X, Musée de l'École polytechnique.
VT Michelson Site. Mount Wilson Observatory.
Michelson's Speed of Light Measurement Between Mt. Wilson and Mt San Antonio. Physics Van, University of Illinois.
Speed of light in vacuum. CODATA, NIST.
1 km 先の鏡まで往復しても 6.7 マイクロ秒しかかからないので、手で合図を送っても測れません。抜け道は、距離を太陽系の大きさへ伸ばすか、時間を回る仕掛けで刻むか。レーマーは木星の衛星イオの食が季節でずれることに気づき、軌道の直径を渡るのに 22 分と見積もった。いまの 16.6 分を入れ直すと $3.0 \times 10^8$ m/s が出ます。フィゾーは 720 枚の歯車を 12.6 回転毎秒で回して 8633 m 先の光を消し、$c = 4nNL$ で $3.13 \times 10^8$ を得た。マイケルソンは八角鏡を 528 回転毎秒で回し、$c = 16NL$ から 3 桁めまで合わせています。1983 年からは、この値でメートルのほうが決められている。