メルデの実験と弦の振動数(おもりの重さと腹の数)
弦の一端を振動子でゆすり、もう一端を滑車にかけておもりを下げます。おもりを増やしていくと、弦にできる腹の数が減っていく。
腹が 4 つの状態から 2 つの状態へ移すには、おもりを 4 倍にする必要があります。腹の数の 2 乗と張力の積が変わらないためです。
右辺には弦の長さ 、振動子の振動数 、弦の線密度 しか入りません。実験のあいだ動かさない量ばかり。
装置
振動子、弦、滑車、おもり。これだけで組めます[1]。

弦を張る力は、おもりの重さがそのまま伝わる。質量 なら 。
滑車は力の向きを変えるだけで、大きさは変えません。だからおもりを換えるたびに、張力が既知の値で動かせる。
弦を伝わる波の速さ
張った弦を横に伝わる波の速さは、張力と線密度で決まります[2]。
は 1 メートルあたりの質量です。単位は 。
強く張るほど速く、重い弦ほど遅い。振動数はここに出てこないので、速さは弦の揺らし方によらない。
定常波が立つ条件
両端が節になるので、弦の長さに半波長がちょうど整数個入ります[3]。
が腹の数です。 なら弦全体で腹 1 つ、 なら腹が 4 つ並ぶ。
端が節になる理由
弦の端は留められていて動けません。固定端で返ってきた波は位相が ずれ、もとの波と打ち消し合う[3]。
だから端の変位はいつでも です。節を置く場所が先に決まり、そのあいだに収まる波長だけが残る。
振動子の側の端は、厳密には止まっていません。ただし振幅が腹に比べてずっと小さいので、節として扱って差し支えない。
振動数の式
に 2 つを入れると、次の形になります[1]。
実験では と と を固定し、 だけを変える。すると が変わる。
両辺を 2 乗して整理すると、冒頭の関係が出る。
腹の数と張力
が一定ということは、 を 4 倍にすると が半分になるということです。
おもりを少しずつ足しても、腹の数はなめらかには変わりません。整数でしか立たないので、飛び飛びに切り替わる。
赤い点が節です。両端は必ず節になり、そのあいだに腹が並ぶ。
例:腹が 4 つのとき
弦の長さ 、振動子の振動数 、線密度 とします。
腹が 4 つなら波長は次のとおり。
速さは 。張力は から出る。
おもりの質量は 、つまり になります。
例:腹を 2 つにする
を半分にしたいので、 を保つには を 4 倍にします。
おもりは で、。 のちょうど 4 倍です。
腹を 1 つ減らすだけなら、 から 。おもりは になる。
例:積が一定であることを確かめる
同じ弦で 4 通り測ったとします。
| 腹の数 | 張力 | |
|---|---|---|
右の列がそろえば、実験は合っている。 とも一致する。
そろわない場合、まず疑うのは腹の数え違いです。端の節を腹と数えていないか確かめる。
例:弦の長さを変える
を から へ半分にします。張力と振動数はそのまま。
波長は張力と振動数で決まるので変わりません。 のまま。
弦に入る半波長の数は になる。腹は 4 つから 2 つへ減る。
は に比例する。長い弦ほど腹が多く並ぶという、見たとおりの結果。
例:太い弦に換える
線密度を 4 倍の にします。張力は のまま。
速さが半分になったので、波長も半分の です。腹の数は で 2 倍に増える。
は に比例する。重い弦ほど腹が細かく並ぶ。
横に振るか、弦に沿って振るか
振動子の振れる向きを変えると、同じおもりでも腹の数が変わります[1]。
振動子が弦と垂直に振れる。弦の振動数は振動子の振動数と同じ
振動子が弦に沿って振れる。弦の振動数は振動子の半分になる
同じ張力で比べると、横振動のときの腹の数は縦振動のときの 2 倍です[1]。

速さ は張力だけで決まるので、両者で同じ です。
弦の振動数が半分になると、 が 2 倍になる。だから腹の数も半分になる。
なぜ半分になるのか
縦振動では、振動子が弦を引っぱったりゆるめたりする。張力が周期的に増減する形。
1 回の往復のあいだに、張力は 2 回だけ最大になります。振れの両端でどちらも強く引くため[1]。
弦から見ると、揺さぶりの周期は振動子の周期の半分。この揺さぶりに弦が応えると、振動数は振動子の半分になります。
緑の線が張力です。青の 1 往復のあいだに山が 2 つ立っている。
赤の弦は、青の半分の速さで振れている。周期でいえば 2 倍。
例:同じおもりで腹の数が変わる
張力 のままで、振動子を横向きから縦向きへ変えたとします。
横向きなら弦は 、波長は で腹は 4 つ。
縦向きなら弦は 、波長は で腹は 2 つになります。
同じ装置で 2 通りの測り方ができる。どちらから計算しても振動子の振動数が一致すれば、測定は信頼できます。
線密度を測る
は弦を切って量ってもよいのですが、この実験の中でも求まります。
例:線密度から振動数を出す
、、、 とします。
商用電源で駆動する振動子なら、 Hz か Hz のはずです。出た値がそこから大きく外れたら、どこかで測り違えている。
観察のこつ
数え方と張力の関係を、数値で確かめます。
、 の弦を張力 で張り、腹が 4 つの定常波が立ちました。振動子の振動数はいくらですか。
張力との関係も確かめます。
腹が 3 つ立っている状態から、腹を 6 つにしたいとします。おもりの質量をどうすればよいですか。
- 倍にする
- 分の にする
- 分の にする
が一定なので、 を 倍にするには を にします。おもりの質量も です。 は の 2 乗に反比例するところがつまずきやすい点になります。
検算のしかた
測った組を全部使って を計算し、値がそろうかを見ます。ばらつきが数パーセントに収まれば十分。
理論値 とも比べられます。 と は別に測れる量なので、独立な検算になる。
横振動と縦振動の両方で振動子の振動数を出し、一致するかを見る手もある。片方だけの測定より強い。
おもりを重くしたのに腹が増えたら、どこかが逆になっています。張力が上がれば波は速くなり、波長は伸び、腹は減る。











速さは 3.6÷(1.0×10−3)=60 m/s、波長は 2×1.0÷4=0.50 m です。f=60÷0.50=120 Hz になります。60 Hz は、波長を弦の長さと同じ 1.0 m としてしまった値になります。