光の屈折と全反射(絶対屈折率・臨界角・見かけの深さ)
水に差し込んだストローは、水面のところで折れて見えます。光が水に入るときに向きを変えるからで、この現象が屈折です。
曲がり方の大きさは屈折率で決まる。真空中の光の速さを、その媒質の中での速さで割った値です。
以下では絶対屈折率の定義から始めて、屈折の法則を屈折率で書き直し、媒質の中で波長が縮むこと、全反射と臨界角、光ファイバーと見かけの深さまでを扱います。計算例には、臨界角を出す手順と、見かけの深さを求める手順を置いた。
光は真空中でも進む
音とは違い、光は媒質がなくても進む。太陽の光が真空を越えて届くのは、光が電磁波だから。
電場と磁場が互いを作り合いながら進むので、揺らすための物質が要りません。真空中の速さは決まった値をとる。
物質の中に入ると、光は遅くなる。原子の中の電子と電磁場がやりとりをするためで、その分だけ進みが鈍る。
絶対屈折率
真空中の速さを、その媒質の中での速さで割った値を絶対屈折率といいます。単に屈折率と呼ぶときも、たいていこちら。
真空の屈折率は定義から です。どんな媒質でも光は真空より遅いので、屈折率は 以上になる。
ドイツ語版 Wikipedia の屈折率の項目も、真空中の光速と媒質中の速さの比として定義しています。
屈折率がわかれば、その媒質の中での速さは割り算で出る。 という形です。
屈折率の値
身のまわりの物質の屈折率を並べておきます。空気はほぼ なので、計算では として扱ってよい。
| 物質 | 屈折率 | 光の速さ |
|---|---|---|
| 空気 | 1.0003 | ほぼ真空と同じ |
| 水 | 1.33 | m/s |
| ガラス | 1.5 | m/s |
| ダイヤモンド | 2.42 | m/s |
ダイヤモンドの値がとびぬけて大きい。中では光の速さが真空の半分以下になります。
英語版 Wikipedia の屈折率の項目にある値も同じで、水 、窓ガラス 、ダイヤモンド となっている。
屈折率は波長によってわずかに変わる。表の値は黄色の光での目安。
屈折の法則を屈折率で書く
波としての屈折の法則は、速さの比で書けました。速さは屈折率で表せるので、書き換えができる。
分母を払うと、覚えやすい形になります。
左辺と右辺が同じ形をしているので、どちらが入射側かを気にせず書ける。境界をはさんで が保たれる、と読めば十分です。
屈折率の大きい媒質では、角が小さくなる。 が大きいほど が小さくなり、光線は法線に近づく。

図はガラスから空気へ光が出ていく場面です。左では屈折して外へ出て、右では外へ出られずに戻っている。
相対屈折率と絶対屈折率
媒質 1 に対する媒質 2 の相対屈折率は、絶対屈折率の比で書ける。
空気から水へ入る場合なら、 なので相対屈折率は水の絶対屈折率とほぼ等しくなる。空気がからむ問題で 本の値しか出てこないのは、この事情によるものです。
水からガラスへ入るような場合は、比を計算する必要がある。 となり、曲がり方は小さくなる。
真空を基準にした値。 で、物質ごとに 1 つ決まる
2 つの媒質の比。 で、どちらからどちらへ入るかで変わる
媒質の中では波長が縮む
境界を越えても振動数は変わりません。変わるのは速さと波長のほう。
は真空中の波長です。屈折率 のガラスの中では、波長が に縮む。
色は振動数で決まるので、水の中でも色は変わりません。プールの底が青く見えたり赤く見えたりしないのは、そのため。
真空中の波長 nm の光が、屈折率 のガラスに入りました。ガラスの中での波長と色はどうなりますか。
- 波長は nm になり、色は赤へ寄る
- 波長は nm になり、色は変わらない
- 波長は nm のままで、色も変わらない
- 波長は nm になり、色は青へ寄る
外から見た色と、水中で見た色が同じになる。この事実が、変わらないのは振動数だという証拠です。
中国語版 Wikipedia の折射率の項目も、屈折率を真空中の速さと媒質中の速さの比として定義している。
光路長
媒質の中を進む距離に屈折率を掛けた量を、光路長といいます。同じ時間で真空ならどこまで進めたか、を表す長さ。
屈折率 のガラスを cm 通り抜けるのに、真空中で cm 進むのと同じ時間がかかる。厚さそのものより、光路長のほうが時間を素直に表す。
英語版 Wikipedia の光路長の項目も、同じ時間で真空中を進む長さとして定義しています。
複数の媒質を通るときは、区間ごとに を足す。この和が つの経路で違うと、干渉の明暗が決まる。
ものさしで測れる距離そのもの。厚さ cm のガラス板なら cm
屈折率を掛けた長さ。 なら cm で、真空中を同じ時間で進む距離にあたる
時間を比べたいときは光路長を使います。ものさしの値のままでは、媒質が違う経路を比べられない。
全反射が起きる条件
屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ光が出るとき、屈折角は入射角より大きくなる。入射角を増やしていくと、屈折角が先に 度へ届く。
そこから先は、屈折光が存在できません。光はすべて境界で反射され、外へ出なくなる。これが全反射です。
条件は つ。屈折率の大きい側から小さい側へ向かうことと、入射角が臨界角を超えること。
逆向きでは決して起きない。空気から水へ入る場合、屈折角のほうが小さいので 度に届く場面がない。
屈折角のほうが大きい。入射角を増やすと屈折角が先に 度へ届き、そこから全反射になる
屈折角のほうが小さい。どんな入射角でも 度に届かず、全反射は起きない
向きを確かめるところが最初の一手です。屈折率の大小を見るだけで、全反射があり得るかどうかが決まる。
臨界角
屈折角がちょうど 度になる入射角を臨界角といいます。屈折の法則に を入れれば出る。
空気へ出る場合は なので、 という形になる。屈折率が大きいほど臨界角は小さい。
英語版 Wikipedia の全反射の項目は、水から空気で 度、ガラスから空気で 度、ダイヤモンドから空気で 度としています。
光が水中から空気へ出るときの臨界角は約 度です。同じ水と空気の境界で、空気から水へ入るときに全反射は起きますか。
- 入射角が 度を超えれば起きる
- どんな入射角でも起きない
- 入射角が 度より小さければ起きる
- 入射角が 度のときだけ起きる
全反射は屈折率の大きい側から小さい側へ向かうときにしか起きません。空気から水へ入る向きでは、屈折角が入射角より小さくなり、 度に届く場面がない。
水中から水面を見上げると、真上の狭い円の中にだけ外の景色が見えます。円の外は全反射で、水中の景色が映る。円の半径は臨界角で決まる。
光ファイバー
全反射のいちばん大きな応用が光ファイバーです。屈折率の大きいコアを、屈折率の小さいクラッドで包んだ細い糸。
屈折率の大きいコアに光を入れる
境界で臨界角より大きい角で当たる
外へ漏れずに全反射する
曲がった経路でも光が閉じこめられて進む
金属の鏡と違い、全反射では光がほとんど失われません。何十 km 進んでも弱りにくいのは、この損失の小ささによるもの。

図のように、光は境界に浅い角で当たる。法線から測れば大きい角なので、臨界角を超えて全反射する。
ダイヤモンドが輝く理由
ダイヤモンドの屈折率は で、臨界角は約 度しかありません。中へ入った光は、よほど正面を向いていないかぎり外へ出られない。
そのため光は内部で何度も跳ね返り、あちこちの面から出ていく。強い輝きは、この閉じこめと出口の多さによるもの。
カットの角度が決まっているのも、臨界角に合わせるためです。角度を外すと、光は裏へ抜けてしまう。
見かけの深さ
水の底は実際より浅く見えます。プールの深さを見誤るのは、屈折のせい。
底の点から出た光は、水面で屈折して目に届く。目は光がまっすぐ来たと解釈するので、光線を逆にたどった位置に物があるように見える。
真上から見る場合を計算してみます。水面までの深さを 、見かけの深さを 、水面上での横のずれを とする。
真上に近い向きでは角が小さく、 と置き換えられる。屈折の法則 に入れる。
が消えて、見かけの深さが出ます。
水なら 倍。実際の ほどの深さに見えます。

図の点線が、目が感じる光の来た向きです。実際の光は水面で折れているのに、目はまっすぐ来たものとして位置を決める。
斜めから見ると、ずれ方はもっと複雑になる。真上から見る場合だけが という簡単な形。
蜃気楼
屈折率が場所によって連続的に変わると、光線は折れ線ではなく曲線を描きます。空気の密度が高さで違うときに起きる現象。
夏の道路では、地面近くの空気が熱せられて密度が下がる。屈折率も下がるので、下から来た光が上へ曲げられて目に届く。
その結果、道の先に水たまりがあるように見えます。実際に見えているのは、曲げられて届いた空の光。
寒い海の上では逆に、遠くの船が浮き上がって見えることがある。どちらも屈折率の分布が作る像です。
計算例:屈折角を出す
空気から水へ、入射角 度で光が入る。水の屈折率を として屈折角を求めます。
屈折の法則に入れる。空気の屈折率は とします。
となる角は約 度。入射角より小さくなり、光線が法線へ寄ったことが確かめられます。
計算例:水中での光の速さと波長
真空中の波長が nm の光が、屈折率 のガラスに入ります。ガラスの中での速さ、波長、振動数を求める。
速さは屈折率で割るだけです。
波長も同じ割合で縮む。
振動数は境界で変わらないので、真空中の値のまま。
ガラスの中の値で計算しても同じ答えになる。 を計算すれば確かめられる。
計算例:臨界角を出す
屈折率 のガラスから空気へ光が出るときの臨界角を求めます。
臨界角の式に入れる。
となる角は約 度です。これより大きい角で当たった光は、外へ出られない。
水なら で約 度。屈折率が小さいほど臨界角は大きくなります。
計算例:プールの見かけの深さ
深さ m のプールを真上から見る。水の屈折率を として、見かけの深さを求める。
割り算だけで出ます。
cm ほど浅く見えている。深さを見た目で判断すると危ないのは、この差のためです。
底に沈んだ物を手でつかもうとして外すのも、同じ理由になる。目が伝えてくるのは見かけの位置です。
計算例:ガラス板の光路長
厚さ cm、屈折率 のガラス板を光が垂直に通り抜けます。光路長を求める。
真空中を cm 進むのと同じ時間がかかる。厚さは cm でも、時間の上では cm 分。
同じ場所に何もなければ cm 分の時間で済むので、差は cm 分。干渉の計算では、この差が効いてきます。
よくある誤り
屈折率を「光がどれだけ遅くなるか」の値として押さえておけば、速さも波長も臨界角もそこから出せます。個別に覚える式は少ない。












波長は λ0/n に縮みます。色を決めるのは振動数のほうで、境界を越えても変わりません。