音の干渉をくわしく説明(2 つのスピーカーのあいだを歩く)
同じ音を 2 つのスピーカーから出し、その前を横に歩く。すると数十センチごとに、音が大きくなったり小さくなったりする。
耳の位置で 2 つの音の経路差が変わるため[3]。差が波長の整数倍なら強め合い、半波長の奇数倍なら打ち消し合う。
音の波長は数十センチから数メートルあります。だから人が歩ける距離で経路差が波長ぶん変わり、耳だけで干渉が確かめられる。
場所で決まる強弱
スピーカーからの距離を 、 とします。同じ信号を入れているので、出るときの位相は同じ。
模様は空中に固定されている。動かなければ、ずっと同じ大きさで聞こえ続ける。
経路差を図で見る

例:680 Hz のスピーカー
音速を とします。 の波長は次のとおり。
スピーカーの間隔を 、そこから 離れた線の上を歩くとします。
正面から測った位置 が小さい範囲では、強め合う場所の間隔は で出せる。
ごとに大きく、そのあいだの ずれた位置で小さく聞こえる。
秒速 で歩けば、1 秒に 1 回ずつ強弱が来ます。
例:低い音にすると
に下げると波長は 。強め合う間隔は に広がる。
低い音ほど模様が粗く、歩いても変化に気づきにくい。高い音ほど細かく、少し首を動かすだけで変わります。
音なら歩いて確かめられる
波長が数十センチ。模様の間隔も同じ桁なので、体を動かすだけで強弱が分かる
波長が数百ナノメートル。スリットを まで詰め、拡大しないと縞が見えない
同じ式で決まる現象なのに、確かめ方がまるで違う。効いているのは波長の桁だけです。
時間で決まる強弱
ここまでは 2 つの音の振動数が同じ場合でした。わずかにずらすと、話が変わる。
同じ場所で聞いていても、音の大きさが周期的に増減する。これがうなりです[1]。
前の因子がゆっくりした増減、後ろの因子が実際に聞こえる高さにあたります[1]。
うなりの回数は 2 つの振動数の差そのものです[1]。
例:684 Hz と 680 Hz
差は なので、1 秒に 4 回の増減になります。
聞こえる高さは平均の あたり。そこにゆっくりした波打ちが乗ります[1]。
楽器を合わせるときは、この回数が になるまで張力を調節する。回数が減っていくほど、正解に近づいている印です。
場所か時間か
2 つの強弱は、原因も現れ方も違います。
振動数が同じなら、経路差で決まる強弱が空中に固定される
振動数がわずかに違うと、位相差が時間とともにずれていく
その場に立っていても、大きさが周期的に増減する
じつは同じことの 2 つの見方でもあります。振動数がずれていると、空中の模様そのものがゆっくり流れていく[2]。
流れる模様の中に立っていれば、強弱が次々に通り過ぎる。歩いて模様を横切るのと、模様のほうが動くのとは、耳には区別がつかない。
例:模様が流れる速さ
と を出すと、1 秒間に模様が 4 つぶん流れる。
間隔の模様なら、流れる速さは秒速 。人が歩いて追いつける速さではありません。
同じ振動数に戻せば模様は止まり、歩かないかぎり音は変わらなくなる。
逆位相につなぐと正面が消える
2 つのスピーカーの配線を、片方だけ逆にしたとします。出る音の位相が ずれる。
すると正面では経路差が なのに打ち消し合い、いちばん静かな場所になります[3]。
高い音では影響が目立ちません。波長が短く、少しずれれば強め合う場所に入るからです。
低い音は波長が長いので、広い範囲で打ち消し合う。配線を間違えると低音だけが痩せて聞こえるのは、このためです。
例:配線を確かめる
の低音を出し、2 つのスピーカーの正面に立ちます。波長は 。
正しくつないであれば、正面がいちばん大きい。片方を逆にすると、正面が最も小さくなります。
片方のスピーカーを 前へ動かすと、経路差が半波長になって同じことが起きる。配線と位置は同じはたらきをする。
打ち消しを使う
打ち消し合いを積極的に使う道具もあります。外から来る音を拾い、位相を反転させた音を重ねる仕組み。
うまく重なれば経路差が半波長のときと同じことが起き、耳に届く音が小さくなります。
低い音ほど効きます。波長が長いぶん、耳の位置が多少ずれても打ち消しが保たれるため。
離した 2 つのスピーカーから の音を出します。音速を とすると、正面から の線の上で、音が大きい場所の間隔はいくらですか。
うなりのほうも確かめます。
の音叉と弦を同時に鳴らすと、1 秒に 3 回のうなりが聞こえました。弦を強く張ったら 5 回に増えた。もとの弦の振動数はいくらですか。
- どちらとも決まらない
差が なので、候補は と です。弦を強く張ると振動数は上がるので、 なら へ近づいてうなりは減ります。増えたということは、もとが で、そこからさらに離れたということ。増減の向きを見れば候補が 1 つに絞れます。
例:スピーカーを 1 つ止める
強め合っている場所に立ち、片方のスピーカーを止めます。音は半分ではなく、それよりずっと小さくなる。
2 つそろっているときは振幅が 2 倍、強さは 4 倍になっていたためです。1 つにすれば強さは 4 分の 1 に落ちます。
逆に打ち消し合っていた場所では、止めたとたんに音が聞こえ始める。消えていた音が戻ってくるように感じられます。
エネルギーが消えているわけではありません。強め合う場所へ回されていただけで、部屋全体で足せばつじつまが合う。
スピーカーを増やすと
同じ間隔で 3 つ、4 つと並べ、すべて同じ信号を入れます。強め合う向きの条件は変わりません。
変わるのは鋭さのほう。本数が増えるほど、強め合う向きが細く絞られる。
回折格子で明線が鋭くなるのと同じ仕組みです。並べる数だけで、向きは変わらず切れ味が上がる。
つまずきやすいところ
同じ経路差の式が、光では顕微鏡の中の話になり、音では歩けば分かる話になる。桁が変わるだけで、体験の仕方までこれだけ変わります。












波長は 850340=0.40 m です。間隔は dλL=1.00.40×5.0=2.0 m になります。0.4 m は波長そのもので、距離と間隔の効果を落とした値です。