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単スリットの回折と分解能〜すきまの幅と広がりの関係

すきまを狭めていくと、通り抜けた光は広がる。細くすれば細い光線になりそうなのに、逆になる。

広がり方は波長とすきまの幅の比で決まる。暗くなる向きが先に決まり、その内側が中央の明るい帯になる[1]。

がすきまの幅です。この式が与えるのは明線ではなく暗線の向き。 が入っていないところに、ヤングの実験との違いが出ています。

狭めるほど広がる

が第 1 暗線の向きです。 が小さいほど は大きくなる。

すきまが波長と同じくらいまで狭まると、 が に近づいて光はほぼ半円状に広がります[1]。

逆に が波長よりずっと大きければ、 はほとんど 。まっすぐ抜けたように見えます。

すきまを狭めるほど、中央の山が横へ伸びていく。山が高くなるのではなく、広がるほう。

暗くなる条件が先に決まる

すきまの中の各点が、それぞれ波源になると考える。スクリーン上のある点には、無数の波が集まる。

これらが打ち消し合うかどうかを、ペアを作って調べる[1]。

すきまを上下 2 つに分け、上半分の点と、そこから だけ下の点をペアにします。

このペアの経路差は 。これが になると、2 つは打ち消し合います。

すべてのペアで同時に成り立つので、その向きは真っ暗になる。条件を整理すると です。

2 番目、3 番目の暗線

今度はすきまを 4 等分し、隣り合う区画どうしでペアを作ります。各ペアの経路差は 。

これが になる向きでも、全体が打ち消し合う。整理すると 。

等分すれば 。これで がそろいました。

が抜けているのは、そこが打ち消しではなく最も明るい向きだからです。

中央の明るい帯の幅

第 1 暗線までが中央の帯です。スクリーンまでの距離を とすると、角が小さいときは次のように書けます。

中央の帯は上下に ずつ広がるので、幅はその 2 倍。

例:中央の帯の幅を出す

波長 、すきまの幅 、スクリーンまで とします。

です。すきまの幅の 倍にも広がっている。

例:すきまを半分にする

にすると、 は になる。

狭めたのに 2 倍に広がった。 が分母にいるので、細くするほど広がる。

例:第 1 暗線の角

同じ条件で角を出す。

。小さい角なので、 の近似がよく効く。

ヤングの実験との違い

2 つの式は形が似ていますが、意味が違います。

ヤングの実験

は明線の条件。 はスリットどうしの間隔で、 が中央の明線

単スリット

は暗線の条件。 はすきまの幅で、 は入らない

同じ の形なのに、片方は明るく、片方は暗い。何の長さかを先に確かめる。

例:とり違えるとどうなるか

すきま幅 の単スリットで、 を明線と読んでしまったとします。

出てくる角は同じ ですが、実際にはそこが暗い。明暗が入れかわった答えになります。

実験では中央が明るいかどうかを見れば区別がつく。単スリットの中央は必ず明るい。

丸い穴だと輪ができる

すきまが丸い穴なら、パターンは同心円になります。中央の丸い明るい部分をエアリーディスクといいます[2]。

暗い輪の 1 本目までの角は、細長いすきまのときより少し外側です。

が穴の直径。 という係数は、丸い形から出てくる数です[2]。

レイリーの基準

2 つの星が近すぎると、それぞれのエアリーディスクが重なって 1 つに見えます。

片方の中心が、もう片方の 1 本目の暗い輪の上に来たところが見分けの限界[3]。これをレイリーの基準といいます。

角が小さいので、 をそのまま とみなしています。単位はラジアン。

例:口径 8 cm の望遠鏡

とします。

秒角に直すと 秒角ほど。これより近い 2 つの星は、どんなに倍率を上げても 1 つに見えます。

例:口径を 2 倍にする

にすると は半分の 秒角。

口径が分母にいるので、大きいほど細かく見えます[3]。望遠鏡の性能が口径で語られる理由がここにある。

倍率を上げても見えない

倍率は接眼レンズを替えれば自由に変えられる。ところが分解能は口径で決まっていて、倍率では動かない。

限界を超えて倍率を上げると、ぼやけた像が大きくなるだけです。これを無効倍率といいます。

見えるものを増やしたければ、口径を大きくするか、波長の短い光を使うしかない[2]。

例:人の目の分解能

瞳の直径を 、 とします。

明視の距離 で見分けられる長さは 。

ほどです。実測でも同じ桁の値が知られています[3]。

波長を短くする道

は波長にも比例する。青い光のほうが赤い光より細かく見える。

電子の波は可視光よりはるかに短い波長を持ちます。電子顕微鏡が分子の並びまで見えるのは、この項が効くためです[2]。

顕微鏡では、レンズと試料のあいだを屈折率の高い油で満たす手もあります。媒質の中で波長が縮むので、そのぶん細かく見える[3]。

幅 の単スリットに波長 の光を当て、 先のスクリーンで観察します。中央の明るい帯の幅はいくらですか。

__RESULT__

です。 は中央から第 1 暗線までの距離で、幅はその 2 倍になります。

分解能のほうも確かめます。

口径 の望遠鏡で の光を見ます。見分けられる最小の角はおよそいくらですか。

__RESULT__

になります。 は を落とした値、 は口径をミリメートルのまま入れた値です。

よくある誤り

を明線の条件だと考える。単スリットでは暗線の条件です。
を式に入れる。中央は打ち消しではなく、いちばん明るい向きになります。
をスリットどうしの間隔と読む。単スリットの はすきまそのものの幅です。
すきまを狭めれば光が細くなると思う。 が分母なので、狭めるほど広がります。
中央から第 1 暗線までを帯の幅とする。上下に広がるので 2 倍にします。
倍率を上げれば細かく見えると考える。分解能は口径と波長で決まっていて、倍率では動きません。

すきまの幅と波長の比。この 1 つの比が、光の広がりも望遠鏡の限界も決めています。細くすれば鋭くなるという直感が、波では通りません。

参考

Single-Slit Diffraction. University Physics Volume 3, OpenStax.
Circular Apertures and Resolution. University Physics Volume 3, OpenStax.
*Das Auflösungsvermögen*. Lernplattform Physik, Universität Göttingen.
細くすれば細い光線になりそうなのに、逆に広がります。$a\sin\theta = m\lambda$ が与えるのは明線ではなく暗線の向きで、$m = 0$ が入らない。すきまを上下 2 つに分けてペアを作ると、経路差が半波長になる向きですべてが打ち消し合う、という筋道で出ます。中央の帯の幅は $2\lambda L/a$ なので、幅 0.10 mm のすきまで 600 nm の光なら 2.0 m 先で 24 mm。丸い穴では係数が 1.22 になり、そのままレイリーの基準につながる。口径 8 cm の望遠鏡は 1.7 秒角までしか見分けられず、接眼レンズを替えて倍率を上げても動きません。人の目の 0.08 mm、電子顕微鏡が細かく見える理由まで。