光の分散と散乱と偏光をわかりやすく解説
プリズムに白い光を通すと、虹の色に分かれます。空が青く、夕日が赤いのも、光の波長ごとの違いから来る現象。
どちらも屈折率や散乱の強さが波長によって変わることで説明できます。偏光まで含めると、光が横波であることの証拠もそろう。
以下では分散から始めて虹の角度、レイリー散乱と空の色、偏光板とブリュースター角までを扱います。計算例には、散乱の強さを比べる手順と、偏光板を通る光の強さを出す手順を置いた。
分散
物質の屈折率は、光の波長によってわずかに違います。この性質を分散という。
ふつうの透明な物質では、波長が短いほど屈折率が大きくなる。英語版 Wikipedia の分散の項目も、 という順になるとしている。
屈折率が大きいほど、光は大きく曲げられる。だから紫がいちばん曲がり、赤がいちばん曲がりにくい。
| 色 | 波長 | 屈折率の傾向 |
|---|---|---|
| 赤 | nm ほど | いちばん小さい |
| 黄 | nm ほど | 中くらい |
| 紫 | nm ほど | いちばん大きい |
差はごくわずかで、ガラスなら 程度。それでも角度の差として積み重なると、目に見える色の広がりになります。
プリズムがスペクトルを作る仕組み
三角形のプリズムに白色光を入れると、入るときと出るときの 回、光が曲げられる。どちらの面でも紫が大きく曲がる。
回ぶんの差が重なるので、出てきたときには色が並んで見えるほど開いている。この帯をスペクトルといいます。
赤が上、紫が下という順に並ぶ。曲がりの大きさの順が、そのまま色の並びになる。
同じことは水滴でも起きる。虹はプリズムの代わりに、空中の水滴が並んで作った模様です。
虹ができる仕組み
太陽の光が水滴に入ると、まず屈折して色に分かれる。分かれたまま水滴の奥の面に届き、そこで内部反射する。
戻ってきた光は、水滴から出るときにもう一度屈折します。合わせて 段の過程。
水滴に入るときに屈折して色が分かれる
奥の面で内部反射する
出るときにもう一度屈折する
色ごとに違う角度で観測者に届く
角度が色ごとに違うので、目に届く色は水滴の位置によって決まる。空一面の水滴のうち、条件を満たす位置にあるものだけが、その色を届ける。
虹が円弧に見えるのは、条件が「太陽と反対の向きから測った角度」で決まるからです。同じ角度の点を集めれば円になる。

主虹の角度
内部反射が 回の虹を主虹といいます。太陽と反対の向きから測って、およそ 度の方向に見える。
正確には色ごとに角度が違う。英語版 Wikipedia の虹の項目によれば、赤は 度、青は 度。
角度が大きい赤のほうが外側に来る。虹の外側が赤で、内側が紫という並びになる。
ここは間違えやすいところ。プリズムでは紫が大きく曲がるのに、虹では赤が外側に来ます。
理由は光が水滴の中で折り返して戻ってくるから。曲がりが大きい紫ほど、観測者から見た角度は小さくなる。
副虹
主虹の外側に、もう 本うすい虹が見えることがあります。内部反射が 回起きた光による副虹。
角度はおよそ 度で、主虹より 度ほど外側です。ドイツ語版 Wikipedia の虹の項目も、赤が 度、青が 度としている。
反射が 回増えたぶん、色の順が入れ替わる。副虹は内側が赤、外側が紫。
内部反射が 1 回。角度は約 度。外側が赤で内側が紫。明るい
内部反射が 2 回。角度は約 度。内側が赤で外側が紫。反射のたびに光が漏れるので暗い
本のあいだの帯は、どちらの光も届かない領域です。ほかより暗く見え、アレキサンダーの暗帯と呼ばれる。
散乱とは
光が小さな粒子に当たると、四方へ振りまかれる。この現象が散乱。
空気の分子も散乱を起こす。太陽の光がまっすぐ目に入らなくても空全体が明るいのは、分子が光を散らしているからです。
散乱の強さは粒子の大きさで決まる。波長よりずっと小さい粒子による散乱をレイリー散乱といいます。
レイリー散乱
レイリー散乱の強さは、波長の 乗に反比例します。
乗という効き方が強烈。波長が半分になれば、散乱は 倍になります。
フランス語版 Wikipedia のレイリー散乱の項目も、 nm の光は nm の光より 倍散らされるとしている。
条件は、粒子が波長よりずっと小さいこと。空気の分子は nm 程度で、可視光の波長の千分の 以下にあたります。
空が青い理由
太陽の光には、あらゆる色が同じくらい含まれています。ところが大気を通るあいだに、青いほうが強く散らされる。
散らされた光は空のあちこちから目に届く。だから太陽の方向でなくても、空全体が青く光って見える。
紫のほうがもっと強く散乱されるはずですが、空は紫には見えません。太陽光に含まれる紫の量が少ないことと、人の目が紫に鈍いことが理由です。
宇宙空間では空が黒い。散乱する空気がないので、太陽の方向以外からは光が届かないからです。
夕焼けが赤い理由
夕方の太陽は、地平線に近い低い位置にある。光が大気を斜めに通るので、通り抜ける距離が昼よりずっと長い。
長い距離を進むあいだに、青い光は散らされ尽くす。残った赤い光だけが目まで届く。
同じ理由で、朝日も赤く見える。空の色と夕日の色は、どちらも という つの法則から出てきます。
夕日が赤く見えるのは、どういう仕組みですか。
- 夕方は太陽が赤い光を強く出すから
- 大気を長く通るあいだに、青い光が散らされてしまうから
- 大気が夕方だけ赤い光を出すから
- 地面で反射した赤い光が目に届くから
雲が白い理由
雲は水滴でできていて、その大きさは数 m ほど。可視光の波長より大きい。
粒子が波長と同程度以上になると、散乱の波長依存が弱くなる。この領域の散乱をミー散乱という。
どの色も同じように散らされるので、雲は白く見えます。厚い雲が灰色に見えるのは、光が奥まで届かないから。
粒子が波長よりずっと小さいとき。強さが に比例し、青が強く散らされる
粒子が波長と同程度以上のとき。波長による違いが小さく、どの色も同じように散らされる
偏光
光は電場と磁場が振動しながら進む横波です。振動の向きは、進行方向に垂直な面の中で自由に選べる。
振動の向きがそろった光を偏光といいます。ふつうの光源から出る光は向きがばらばらで、自然光と呼ばれる。
中国語版 Wikipedia の偏光の項目も、偏光は横波だけが持つ性質だと述べている。縦波である音には偏光がない。
振動の向きがあらゆる方向にばらばら。太陽や電球から出る光がこれにあたる
振動の向きがそろっている。偏光板を通った光や、水面で反射した光がこれにあたる
見た目では区別がつきません。偏光板を当てて回してみて、明るさが変わるかどうかで見分ける。
偏光板
特定の向きの振動だけを通す板を偏光板といいます。自然光を通すと、決まった向きに振動する光だけが出てくる。
自然光の振動の向きはあらゆる方向に均等なので、通り抜ける強さは半分になる。残りは吸収される。
出てきた光は、その板の向きに偏光しています。 枚目の偏光板を起偏子という。
偏光板を 2 枚重ねる
枚目の偏光板を置き、向きを回してみます。 枚目と同じ向きなら、光はほとんどそのまま通る。
度回すと、光はまったく通りません。 枚目を出た光の振動の向きが、 枚目の通す向きと直交するから。
途中の角度では、その中間の強さになる。角度を とすると、通り抜ける強さは次の形。
マリュスの法則といいます。 で 、 で 、 なら 。
反射光の偏光とブリュースター角
水面やガラスで反射した光は、部分的に偏光している。面に平行な向きの振動が、より強く反射されるから。
入射角をある値にすると、反射光は完全に偏光します。この角をブリュースター角という。
英語版 Wikipedia のブリュースター角の項目によれば、空気からガラスで約 度、空気から水で約 度。
このとき反射光と屈折光は直角に交わる。 という関係が成り立つ。
偏光の応用
釣りをする人がかける偏光サングラスは、水面からの反射だけを消す。反射光が水平方向に偏光しているので、その向きを遮る偏光板を使えばよい。
液晶ディスプレイも偏光板を 枚使っています。あいだの液晶が振動の向きを回すかどうかで、明暗を切り替える。
D 映画では、左右の目に違う偏光の映像を送る。眼鏡の左右で通す向きを変えれば、それぞれの目に別の映像だけが届く。
光が横波である証拠
偏光が起きること自体が、光が横波であることの証拠になります。縦波では振動の向きが進行方向に決まっているので、選ぶ余地がない。
音を偏光板に通す実験は成り立たない。空気の振動は進行方向と平行で、そろえるべき向きが最初から つしかないからです。
光が波であることはヤングの実験でわかりましたが、縦波か横波かは長く決着しませんでした。偏光の発見が、横波だと決める手がかりになった。
音波を偏光板のような装置に通しても、偏光は観測されません。理由はどれですか。
- 音の波長が長すぎるから
- 音は縦波で、振動の向きが進行方向に決まっているから
- 音の速さが遅いから
- 空気が偏光を吸収するから
偏光は、進行方向に垂直な面の中で振動の向きを選べる横波だけに起きます。縦波である音には、そろえる向きがありません。
計算例:プリズムでの赤と紫の差
屈折率が赤で 、紫で のガラスに、入射角 度で光を入れます。それぞれの屈折角を求めます。
屈折の法則に代入する。
赤なら で 度。紫なら で 度になります。
差は 度ほど。小さく見えますが、プリズムでは入るときと出るときの 回ぶんが重なり、遠くのスクリーンでは色がはっきり分かれる。
計算例:散乱の強さを比べる
波長 nm の青い光と、 nm の赤い光では、散乱の強さが何倍違うかを求めます。
の比をとる形になる。
計算すると約 倍。青は赤より 倍以上強く散らされます。
この差が空を青くしている。 乗が効いているので、わずかな波長の違いが大きな差になる。
計算例:水面のブリュースター角
空気から水へ光が入るときのブリュースター角を求めます。水の屈折率は 。
となる角は約 度です。水面をこの角度で見たとき、反射光は完全に偏光している。
このとき屈折角は 度。反射光と屈折光が直角に交わることも確かめられます。
計算例:偏光板を通る光の強さ
自然光を 枚の偏光板に通す。 枚の向きが 度ずれているとき、出てくる光の強さを求めます。
枚目を通った時点で強さは半分になる。
枚目ではマリュスの法則を使います。
合わせると、もとの自然光の になりました。 段に分けて計算するところが要点。
よくある誤り
分散も散乱も偏光も、波長や振動の向きという光の細かい性質から出てくる。屈折や反射の法則だけでは説明のつかない現象が、ここでまとまります。












太陽が出す光の色は時刻で変わりません。低い位置の太陽は大気を長く通るので、散乱されやすい青が先に失われます。