音の強さとデシベルは逆二乗則で距離とともに弱まる
音源から離れると音は小さくなる。減り方は決まっていて、距離が 2 倍になると強さは 4 分の 1[2]。
デシベルで言えば 下がる。 倍離れれば 下がる。この数だけ覚えておけば、たいていの場面で足ります。
出ていく音のエネルギーは変わらないのに、広がる面積が増えるので薄まる。それだけの話[2]。
広がる面積で薄まる
音源から出た音は、球面状に広がっていく。半径 の球の表面積は 。

あたりを通るエネルギーが、音の強さ です。単位は [1]。
距離が 2 倍になれば面積は 4 倍。同じ出力を 4 倍の広さへ配るので、 あたりは 4 分の 1 になる。
音源が出す量そのもの、つまり音響出力は距離と関係ない[3]。変わるのは配られ方だけ。
例:1 W の音源
の点音源を考えます。 の位置での強さを出す。
では 分の になり、[2]。
例:面積で確かめる
半径 の球の表面積は 。
半径 なら です。ちょうど 4 倍になっている。
同じ を で割るか で割るか。それだけの違いから、 デシベルという段差が出てきます。
例:耳に入るエネルギー
耳の穴の断面積を 、つまり とします。
ふつうの会話の dB は なので、耳に入る仕事率は次のとおり。
1 時間ぶんためても 。 の砂粒を 持ち上げる程度です。
耳がどれだけ小さなエネルギーを拾っているかが分かります。
耳は比で感じる
強さが 倍になっても、 倍うるさいとは感じない。そこで基準との比を対数にした量を使います[1]。
。人がやっと聞きとれる強さです[1]。
例:デシベルに直す
さきほどの を計算します。
代表的な値を並べておきます[1]。
| 場面 | レベル | 強さ |
|---|---|---|
| 聞こえる限界 | dB | |
| ささやき声 | dB | |
| ふつうの会話 | dB | |
| 大きな音楽 | dB |
dB と dB では、強さが 倍違います。感じ方の差はもっと小さい。
距離が 2 倍で 6 下がる
強さが 4 分の 1 になるので、デシベルの変化は次のとおり。
横軸を距離の桁にとると、グラフは直線になります。 倍ごとに ずつ下がる直線[3]。
例:10 倍離れる
で dB の音は、 で dB、 で dB になる。
dB を切るのは意外に早い。工事現場の音が数百メートル先で気にならなくなるのは、この減り方によるものです。
音源を増やすと
同じ音源を 2 台にすると、強さは 2 倍。デシベルでは だけ上がる[1]。
台なら 上がる。 台でようやく です。
例:スピーカーを 4 台にする
台で dB だった場所に、同じスピーカーを 台置きます。
dB になる。台数を 4 倍にするのと、距離を半分にするのは同じ効き目。
音を大きくしたいとき、機械を増やすより近づくほうが早い。距離が効くのは 2 乗のため。
例:大きさの違う 2 つの音を足す
dB の音と dB の音を、同じ場所で重ねます。デシベルのまま足してはいけません。
いったん強さに戻す。 dB は 、 dB は 。
デシベルに直すと dB。 小さい音を足しても、 しか増えない。
うるさい場所で小さな音を足しても効かない。対策するなら、大きいほうから手をつけます。
例:台数を減らす
台の機械が動いている場所で、 台だけ止めたとします。
ほとんど変わらない。半分の 台まで止めて、ようやく 下がる。
台に減らせば 下がります。減らす効果は、割合で効いてくる。
3 デシベルという段差
dB は強さがちょうど 2 倍になる段差です[1]。
人が違いに気づける、いちばん小さい段差でもあります[1]。 や では、並べて比べないと分かりにくい。
だから機械を 2 台に増やしても、気づかれるかどうかの境目にしかならない。距離を詰めるほうが、はるかに大きく効きます。
距離の比から直接出す
倍や 倍でない距離でも、比さえ分かれば一気に出せます。
強さが なので、対数の中で 乗が前へ出て になる。 倍を入れれば 、 倍を入れれば と、さきほどの値に戻ります。
例:どこまで離れれば静かになるか
で dB の音源を、 dB まで下げたいとします。
。 ほど離れる必要があります。
下げるのに 倍の距離。デシベルが対数であることの重みが、ここに出ています。
例:中途半端な距離
で dB の音を、 で測ります。
dB ほど。 倍と 倍のあいだも、同じ式でつながっています。
自由音場という条件
で減るのは、まわりに何もない場所での話[2]。これを自由音場といいます。
反射するものがないので、距離が 2 倍になるたびに ずつ下がる
壁や天井で返ってきた音が加わり、離れてもあまり下がらない
コンサートホールでは、後ろの席でもそれほど小さくならない。直接届く音より、返ってきた音のほうが多いためです。
音の強さと振幅
強さは振幅の 2 乗に比例する。振幅を 2 倍にすれば、強さは 4 倍。
デシベルでは 上がる。距離を半分にしたときと同じ変化になる。
例:振幅を 10 倍にする
強さは 倍、レベルは 上がる。
dB の会話が dB になる。振幅で 倍というのは、それだけ大きな違いです。
点音源から の位置で dB でした。 の位置では何 dB になりますか。
- dB
- dB
- dB
台数のほうも確かめます。
同じスピーカー 台で dB の場所に、さらに 台を同じ位置に足しました。レベルはいくらになりますか。
- dB
- dB
- dB
強さが 倍になるので、 dB 上がって dB です。 dB はデシベルの値を 倍してしまった答えになります。デシベルは足し算で扱います。
検算のしかた
距離を変えた計算では、比だけを見れば答えが出ます。 倍で 、 倍で 。この 2 つを組み合わせれば、たいていの数はすぐに確かめられる。
から へなら、 倍近づいたので 。 から なら 倍なので です。
台数と距離を混ぜたときは、それぞれのデシベルを足します。 台に増やして 倍離れたなら、 と で差し引き 。
出た答えが代表値の表から大きく外れていたら、どこかで桁を落としています。 の音源で なら dB という値を、目安として持っておくとよい。
音は距離で薄まるだけで、消えてなくなるわけではありません。広がった面積ぶん配られている。それを比で読み替えたものがデシベルです。












距離が 4 倍なので、2 倍が 2 回。6+6=12 下がって 58 dB です。64 dB は 2 倍ぶんしか下げていない値になります。